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昼⑦ 同類

これまで登場した異能 その2


白崎祥吾しらさきしょうご

異能:ブラッド惨劇ハザード

   異能で作られた赤黒い煙を浴びせた人間をゾンビ化させる。

   ゾンビ化した者は超人的な身体能力を得る代わりに知性が下がる。

   また、ゾンビ化させた者を操ることもできる。ただし、知性が下がっているので簡単な命令しか実行できない。


レックス

異能:強奪スナッチ

   肩から出す黒い腕で触れた相手の異能を奪い、それを使用できる。

   ただし、奪った異能をストックできるのは一つまで。

   ①異能のストックがある状態で、別の相手に強奪スナッチを行うと、

    異能のストックが上書きされ、前に奪った異能は元の持ち主に戻る。

   ②異能のストックがある状態で、強奪スナッチの使用者が死ぬと、

    奪った能力は元の持ち主に戻る。

   上記①、②の際、元の持ち主が既に死んでいた場合は、異能は消えてなくなる。


終始おわりはじめ

異能:ペンは剣よりも強し(別称:デスソード)

   異能で作られた特殊なペンで死の呪文を書き、対象の生物に死を与えるという能力。死因は異能の 使用者に委ねられ、状況的に不可能な死であっても実現することが可能。(何もない空間でいきなり車に轢かれるなど)

   ただし、デスソードの使用者が死んだり、呪文の対象者が死ぬ前に、記した死の呪文が消された場合、死は無効になる。

   また、デスソードで記された死は未然に防ぐことができる。(何もない空間でいきなり車に轢かれる、という死を与えられても、轢かれる前に車を破壊して死を回避する、など)



 バトルロイヤル2回戦、モンスターハント。


 緑が生い茂る草原にて、チーム3とチーム9の戦いが始まろうとしていた。


「ククッ。やる気満々じゃねえかテメエら」


「イリス様!」


「邪魔すんじゃねーぞエリス。こいつらは俺の獲物だ」


「……分かりました」


 加勢しようとするエリスだったが、イリスに止められてしまう。どうやらチーム9を相手に一人で戦うつもりらしい。


「僕たち相手に一人でやるつもり? 随分と舐められたもんだね」


「エリス! そこのメガネ坊ちゃんを怖がらせないように守っとけ」


「了解しました」


 イリスの言葉を聞いたエリスは、チーム9から見えなくなるように眼鏡の青年、西園寺孝明さいおんじたかあきの前に出る。


「さぁて。やるか」


 コキコキと首を鳴らすイリス。3対1だというのに、その表情には焦りがまるで見られない。


おわり! レックス! 少し離れてろ!」


 チーム9の白崎はそう叫ぶと、どこから取り出したのか分からないガラス瓶をイリスに向かって投げつけた。


「あ? なんだこりゃ」


 イリスは投げられたガラス瓶を左手で軽く弾く。だが、その僅かな衝撃でガラス瓶は粉々に割れてしまった。そして割れたガラス瓶から、赤黒い煙のようなものが発生した。


「『ブラッド惨劇ハザード』。人でいられる最後の瞬間を噛みしめるといい」


 『ブラッド惨劇ハザード

 チーム5の土井をゾンビに変えた白崎の異能。どうやらイリスが割ったガラス瓶から発生した赤黒い煙が、人間をゾンビ化させる力の正体らしい。すっかり赤黒い煙に包まれてしまうイリス。これではゾンビ化は免れない。だが……


「なるほどねぇ。そういや、闇属性魔術にこれと似たようなのがあったな」


「バカな……。貴様、何故ゾンビ化しない!?」


 平然としているイリスを見て、明らかに動揺を見せる白崎。


「テメエに言っても理解できないだろうが、闇属性の魔術とか、それに似た能力は俺には通用しねぇよ」


 そう言った直後、イリスの周りに烈風が発生し、赤黒い煙を吹き飛ばしてしまった。


「クソ!」


「問題ねーよ白崎! ゾンビ化しなくても煙幕としちゃ十分役に立ったぜ!」


 赤黒い煙を利用し、いつの間にかイリスの後ろに回り込んだレックス。そしてレックスの右肩から、2メートル程の大きさの黒い腕が飛び出し、イリスの体を貫いた。


「イリス様!」


「心配いらねーよエリス。ノーダメージだ」


 イリスの身を案じるエリスだったが、イリスの言う通り、黒い腕に貫かれた箇所も特に外傷などは見当たらない。


「ハハ! 本当にノーダメージだったらいいな!」


「あ? これは……」


「気付いたか! お前の能力はもう俺のモノだ!」


 『強奪スナッチ

 レックスが所有する異能で、チーム5の唐沢から異能を奪った力。先ほど不発に終わってしまった『ブラッド惨劇ハザード』とは違い、イリスの異能を奪うことに成功したレックス。


「白崎の『ブラッド惨劇ハザード』を吹き飛ばしたところを見るに……。イリス! お前の能力は大気を操る類の能力だ! オーソドックスだが、かなり使い勝手がいい! これでお前は……」


 異能を強奪したことでかなり上機嫌なレックスだったが、何かに気が付いて硬直するレックス。


()()()()()()()()()()? お前、さっきどうやって風を発生させた?」


「ククッ。さぁな」


「2人共。時間稼ぎありがとう。もう書き終わったよ」


 動揺するレックスを余所に、淡々とそう告げるおわり


「ぐぉっ!?」


 その瞬間、イリスの体が業火に包まれた。


 『ペンは剣よりも強し』

 終始おわりはじめが所有する異能。おわりは勝手にこの能力を『デスソード』と呼んでいる。

 能力で作られた特殊なペンで死の呪文を書くと、対象の生物を死に至らしめることができる力。対象の死因はおわりに委ねられ、あらゆる死因で殺すことができる。


「人の死因は様々だけど、葬送の手段としては日本では主に火葬が用いられる。素敵な話だと思わない? 一生遊んで暮らせるほどの大金を持つ大富豪であっても、地べたを這いずり回る底辺の貧乏人でも、火葬されるときは皆燃えて無くなるんだよ。この瞬間だけはどんな人生を歩んできた人間であっても平等だ」


 おわりは何かを思い出したのか、真っ白な頬を赤く染めながら興奮していた。死の魅力に憑りつかれた少年の姿はまさに異常そのものだったが、反面、美しい天使の様にも映っていた。


「だから僕はこのデスソードで殺すとき、必ず死因は焼死って決めてるんだよねぇ。ふふふ」


 終は不気味に笑いながら、デスソードで焼き尽くしたイリスの姿を確認しようと振り返る。

 だが……


「デスソードねぇ。呪術に似た異能か。死因まで操れるのは初めて見たが、まぁちょっと熱かったぜ」


 死を司る天使の力を、悪魔は平然と踏みにじる。


「そんな、なんで……」


 異能が通用しないことに狼狽える終だったが、イリスの姿にある違和感を覚えた。


「水……? いつの間に」


 そう、平然としているイリスの体が水浸しだったのだ。

 いやそれだけではない。先ほどまで雲一つない快晴だった青空が、いつのまにか灰色の雲に覆われており、イリスたちがいる箇所に局所的に雨が降っていたのだ。


「雨だと……まさか、それで鎮火させたのか?」


「見りゃ分かんだろ。もっとも、俺を殺すまでこの火は燃え続けるみたいだからな。こうして永続的に体を濡らす羽目になった訳だが」


「あ、ありえない!!」


 そう叫んだのは終ではなく、イリスの異能を奪ったレックスだった。


「お前の異能じゃ風も雨も生み出すことはできない! いやそもそも! 俺に異能を奪われたのに、お前はなんで力を使えるんだ!」


 動揺を隠せないレックスに反して、イリスは退屈そうにあくびをしながら答える。


「まーあれだ。テメェに言っても伝わらねえと思うが、こいつは異能じゃねえ。魔術だ。魔術は俺がこの神の間に来る前から使えた力だ。テメエの異能を奪う能力は確かに強力だが、魔術を奪うことはできないみてえだな」


「魔術……だと。ふざけやがって!」


 言葉にならない怒りを剥き出しにするレックス。


「ふざけてんのはテメエらだろ。プレイヤー狩りするっつーからどれほどのモンかと思えば、御粗末もいいとこだな。退屈すぎて眠くなってきたぜ」


「……次元が違う」


 自分の異能がイリスに効かなかったことで、これまでずっと意気消沈していた白崎が落胆した様子でそう言った。


「……そうみたいだね。ここはひとまず逃げ……」


「逃がすわけねーだろボケ」


 終がそう言いかけたところで、イリスは一瞬で終たちとの距離を詰める。

 そして……


 バサッ!!


 ……と、何か翼のようなものが羽ばたく音が聞こえた頃には、既に手遅れだった。

 イリスの背中から展開された数メートルほどの黒い翼。レックスと白崎は、接近したイリスに反応することすらできず、体を真っ二つに切断された。


「レックス……白崎……」


「絶望してるところワリィが、次はテメエの番だぜ」


 イリスは黒い翼の先端を終に向けてそう言った。


「大して興味ねぇけど一応聞いておいてやる。最後に何か言い残すことはあるか?」


「君は僕と同じ……同類だ」


 圧倒的な力の矛先を向けられても、終は絶望などしていなかった。むしろ逆。圧倒的な力で「死」を跳ね返して見せたイリスに、崇拝に近い感情を抱いていた。


「すごいよイリス! まるで()()()()()()()みたいだ! 確かに僕と同類ではあるけど、僕なんかとは桁違いの怪物だ! イリス! 君は今まで何人殺したの!? 僕はまだ片手で数えられるレベルだけど、もっと殺せば、僕も君みたいに……!」


 そう言いかけたところで、終の体は細切れになった。

 イリスの黒い翼から放たれた、無数の斬撃によって。


「くだらねー質問だな。そんなのいちいち覚えてねえよ」


 イリスは退屈そうにそう言った。


 終始おわりはじめ、レックス、白崎祥吾しらさきしょうごの体は青白い霧となって消えていった。

 それはまるで、風に吹かれ飛ばされる灰の様だった。


「お疲れ様です。イリス様」


 イリスの後方で戦いを見守っていたエリスがそう言った。


「あぁ。まぁ雑魚過ぎて全然疲れてねーけどな」


 けらけらと笑うイリス。


「さてと。雑魚の相手も飽きたし、そろそろ本腰入れて探すとしようぜ。なぁエリス」


「探す……とは、モンスターをですか?」


「おいおい、つまんねえギャグ飛ばしてんじゃねえぞ」


 イリスは首をコキコキと鳴らす。


()()のクソヤローをだよ。俺を楽しませられるのはアイツだけだからな」


 イリスは不敵な笑みを浮かべながら、そう言ったのだった。




バトルロワイヤル2回戦『チームで協力! モンスターハントバトル!』


残り3時間45分

脱落チーム:チーム5(土井恭平どいきょうへい山下やましたトミカ、唐沢和也からさわかずや

        チーム9(白崎祥吾しらさきしょうご、レックス、終始おわりはじめ



お読みいただきありがとうございます。

次回、さらに強力なモンスターが……?

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