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昼③ ある日森の中スライムさんに出会った

Soy milk


 バトルロイヤル2回戦「チームで協力 モンスターハントバトル」が始まった。


 3人1チームの計9チームの内、チーム6に振り分けられた俺とくれないクレア、天上てんじょうミコトは、スタート地点として転送された森の水辺で、ご機嫌な様子で跳ね回る水の塊に遭遇した。


「なんだあれ。おっぱい?」


「違うわよバカ! スライムよスライム! ゲームとかでよく出てくるでしょ!」


 クレアに一喝される俺。あースライムね。RPGとかでよく見かけるあれか。

 そのスライムとやらをよく見ると、頭上に(頭と呼んでいいのか分からないが)緑色のライフバーと「スライム:Lv1」という文字が表示されていた。やはりというか、こいつが今回倒すべきモンスターってことか。

 まじまじと見ていると、跳ね回っていたスライムがこちらの視線に気が付いたらしく、くりくりとしたファンシーな目でこちらを見つめてきた。


「なんかゲームとかアニメで見るよりキモいな。やっぱマスコットっぽいキャラは実写化に向いてねーよな」


「何言ってんのよ! めっっっちゃ可愛いじゃない!」


 うぉビックリした。なんだ急に。


「スライムちゃーん♡ おいでおいで~」


 屈んだ姿勢になり、手を広げてスライムを呼び寄せるクレア。それを見たスライムは、ぽよんぽよんと飛び跳ねながらクレアの元に向かい、ぽよーんっと聞こえてきそうなゆるい跳躍で、クレアに飛び込んできた。


「きゃ~~~~!! かっわい~~♡」


 クレアは飛び込んできたスライムをぎゅっと抱きしめた。

 なんだこれは。俺に向けるゴキブリを見かけた時のような視線とは正反対だ。その姿はさながら、子犬を可愛がる少女の姿そのものだった。なんか腹立つな。でもそうか。こいつも俺と初めて会ったときは人当たりのいい美少女って感じだったからな。普段はきっと、可愛いものが好きな普通の女の子なんだろう。


「全く……。どこが可愛いんだよ。こんな水餅みたいなやつ」


「そのお餅みたいな感触が可愛いんじゃない! ぷにぷにだよ! ぷにぷに!」


 俺の悪態にも突っかかることのないクレア。普段だったら絶対に罵倒で返してくるくせに。

 よっぽどスライムが気に入ったんだろうな。


「もう、連れて帰りた~~い! ぎゅ~~~~!!」


 スライムが可愛すぎて仕方ないのか、クレアが抱きしめる力を強くした。

 だがその直後、悲劇は起こった。


「ピギエエアアアアッ!!!!!」(スライムの断末魔)


パァンッ!!!!


ビチャビチャッ!!


「……」


 あれだけ騒いでいたのに、一気に静まり返るクレア。

 擬音ぎおん祭りだったので、何が起きたのかざっくり説明すると……

 テンション上がったクレアが抱きしめる力を強くしたため、スライムはその圧力に耐え切れず、水風船が割れたかのように弾け飛び、そして地面に飛び散った……といった感じだ。


「……ぐすん」


 少し涙目になるクレア。

 うん……なんか、どう声を掛けていいか分からないな。


「……竜騎君、竜騎君」


 その様子を見て、ミコトが小声で俺に話しかけてきた。


「なんだ?」


「クレアちゃん。落ち込んじゃってるみたいなので、慰めてあげてください」


「俺が? ミコトがやった方がいいんじゃね?」


「言いにくいですが……クレアちゃんは、竜騎君にあまりいい印象を持っていません。ここで気の利いた一言を言って、イメージアップを狙いましょう。これからチームで戦うので仲良くしておいた方がいいと思いますよ」


「……なるほどな」


 ミコトの言うことはもっともだ。これから一緒にチームで戦っていくのに、口を開けば喧嘩だなんて、あまり良い状態とは言えない。ここはミコトの言う通りにしてみよう。

 俺は涙目でだんまりとうつむくクレアの傍に行き、肩をぽんぽんと叩く。

 それに気が付いたクレアは、普段と打って変わった弱弱よわよわしい表情で振り向いた。

 

 そして、俺はクレアに向けて慰めの言葉をかけた。


「キュイキュイ~~~(スライムの声真似 音域:キモめのアルト)」


「ナメてんのか死ねぇぇっ!!!!!!」


「キュイ~~~ッッッ!!!!!!!」


 クレアに股間の竜を掴まれ、背負い投げで湖に投げ飛ばされた俺。

 俺の精一杯の気遣いは虚しく、湖の底に沈んでいったのだった。


お読みいただきありがとうございます。

次回から狩りは勢いを増していきます。

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