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蟻道冷人(ぎどうれいと)の目覚め

前回登場した新キャラ


汐里しおり

栗色の髪をしたギャル口調な女子。小間こまの股間に驚く。


好実このみ

黒紫の髪をショートにした寡黙な女子。小間こまにハイキックを放つ。


万丈龍之介ばんじょうりゅうのすけ

短い黒髪で筋骨隆々なコワモテな男。小間こまと少し話して風呂からあがった。



「xxxxxさん。あなたは死んだのです」


 雪原のような真っ白な空間で目を覚ますと、目の前の妖精のような美しい女がそう言った。

 

 死んだってオレが?

 辺りを見渡すと、オレと妖精のような女以外にも何人かいた。あいつらもオレと同じように死んだ者で、オレより先にここに来ていたってことか?

 

 それにさっきの女が言っていた名前。xxxxx……それがオレの名前だというのか?


 駄目だ……なにも思い出せない。オレは何者なのか? 何故死んだのか?

 

 だが、ひとつ引っかかる。真っ白でだだっ広く、景色も存在せず、遠近感が狂いそうになるこの場所。

 オレは……以前ここに来たことがある。


 その瞬間だった。


 バチィッ!!


「っ!! あがぁ!!」


 雷に打たれたかのような痛みが全身に走る。それと同時に、脳みそが真っ二つに割れるかのような痛みも襲ってくる。

 そして、誰かの記憶が凄まじい勢いで頭に流れ込んできた。


「……ぐっ!」


 いや、誰かではない。

 これは、オレの……蟻道冷人ぎどうれいとの記憶だ。


「だ、大丈夫ですか?」


 妖精のような女は心配そうにオレの顔を覗き込んだ。


「……あぁ。なんでもない。一人にしてくれ」


「は、はい」


 オレは全てを思い出した。かつて人間界で何人も人を殺したこと。その後異世界に転生し、人間界にいた頃とは比べものにならないくらいの生き物を殺し、魔王になったこと。その数年後に勇者さま御一行と戦い、勇者に封印される直前に自分に転生魔法を使ったこと。


「……どうやら上手くいったみてェだな」


 オレは周りに気が付かれないように魔眼まがんを使い、自分の姿を確認する。

 この魔眼まがんには、見えないものの本質を見る力がある。その魔眼まがんにかかれば、鏡なしで自分の姿を確認することも容易だ。

 

 ……なるほど。転生には成功したらしいが、まさか()()()姿()になるとはな。それに妖精のような女……いや、女神が言っていたxxxxxという名前。今のオレは蟻道冷人ではなく、xxxxxという人間に生まれ変わったらしい。

 

 だが、魔眼まがんが使えたところをみるに、どうやら違う人間に生まれ変わっても、前世の力はある程度使えるらしい。まぁ完全にはほど遠いがな。前世の力が徐々に戻っていくのか、それとも完全には戻らないのか、それは追々探っていくことにしよう。

 

 そしてこの真っ白な空間。ここは神の間……とか呼ばれていた場所だ。かつて人間界で死んだ後、異世界に行くために試練を課せられた場所だ。ここに来たということは、また前回のような試練が始まるのか?

 だがオレが前回来たときは、オレと女神以外に人はいなかった。どうやら前回とは少し状況が異なるらしい。


 オレは魔眼まがんを使い、辺りを見渡す。すると予想外の人物を発見した。ソイツは異世界にいた頃の知り合いだが、オレと同じように別人の姿に生まれ変わっていた。魔眼まがんを使って()()を見なければ、コイツの正体には気が付かなかっただろう。


 しかし、オマエもここに来てたとはな。

 

 オレは、かつて自分が魔王であったことは伏せてその人物に話しかけた。だがその人物はすぐに、オレがかつての魔王であることに気が付いた。どうやらコイツも記憶を取り戻していたらしい。


 この調子だと、他にも異世界からこの神の間に来ているヤツがいるかもしれないな。



--------------------



 しばらく待つこと、数十分。神の間には、オレが来た時と同じように人がどんどん増え続けていた。

 ざっと見ただけでも50人以上いる。こんなに死に損ないを集めて、一体何をおっ始めるつもりなんだか。


「オレは……死んだのか?」


「はい。小間竜騎こまりゅうきさん。あなたは死にました」


「うおビックリした! アンタいつからそこにいたんだよ! てか誰!?」


「わたしは女神です。よろしくお願い致します」


 また来やがった。これで54人目。少し乱れた黒髪が特徴の、高校生くらいの男だ。

 しかしあの小間って野郎、実にいい目をしている。何もかもに捨て鉢になったかのような、ドブの汚水を腐らせたかのような、そんな汚ェ目をしている。ひょっとしたら、オレと同類かもしれないな。


 小間という男はしばらく、女神と会話を続けていた。


「で、迷えるオレたちはどうすればいいんだよ」


「はい。今から皆さまには異世界転生の権利をかけて戦っていただきます」


「え?」


「異世界に転生できるのは、戦いを勝ち抜いた者のみ! さぁ、バトルロイヤルの始まりです!」


 異世界転生の権利をかけたバトルロイヤル……高らかに叫んだ女神の言葉を聞いて、オレは体がふつふつと沸騰していくような感覚を味わった。

 なるほどなぁ……それが、今回の神の間の試練ってわけか。

 最後の一人になるまで殺し合い……なんて美しい響きだろうか。


 だが、どんな形式で戦っていくのかは、まだ分からない。少しの間だけ様子見ってことで、その間は生まれ変わった新しい姿、xxxxxとして振る舞い、大人しくしているとしよう。


 そして時が来たら、片っ端から殺して殺しまくってやる。


 前世の殺戮ショーの……続きといこうじゃねェか。


お読みいただきありがとうございます。

次回、夜のフェーズがきっと終わります。

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