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暇を持て余した神々の遊び

今回で最終話、女神と邪神のお話です。


 小間竜騎ら、総勢54人によるバトルロイヤルの決着から5年。

 迷える魂たちが、再び神の間に導かれた。


「こうして神の試練を実施するのは5年ぶりですね……」


 美しい白銀の髪に青い瞳、美の象徴と表すに相応しい容姿をした女神は、どこか懐かしむようにそう言った。

 同時に、女神は神の間へやって来た人間たちを数える。


「また54人……用意した異能の数と同じですね。まさか……」


「センパイ! おひさっす!」


 嫌悪感丸出しの顔で、女神は声の方向へと顔を向ける。

 そこにいたのはゴスロリ巨乳少女の邪神。

 元女神だった女だが、魔王を生み出したり、娯楽の為に独断で面白そうと判断した人間を片っ端から事故死させたり、最悪の人格破綻者を異世界転生させたりとやりたい放題だったため、女神から邪神へと転身した女。

 5年前のバトルロイヤルの人選も、全て邪神が行ったものだった。


「お久しぶりって、まだ5年しか経ってませんよ」


「まーそうなんすけどね。退屈な時間ってのは、たった数年でも長く感じるもんなんすよ」


 悠久の時の中、不変のまま存在し続ける神たちにとって、数年程度の時間は最早時間として認識されていない。とはいえ、中には邪神のようなせっかちな神もいるにはいるのだが。


「というか、邪神さん。今回の人選もまた……」


「そうっす。私が独断と偏見で選んだ面白そうな人たち、54人っす! センパイ、また5年前みたいに賭けやりましょうよ賭け。今回は負けないっすよ!」


「貴方も飽きないですね邪神さん。54人も集めて誰が異世界転生するか賭けるなんて。確か5年前は……」


「私はレイトに、センパイは小間竜騎に賭けましたよね。センパイ、小間にレイトを倒すように持ち掛けてましたもんね。でも、今回はそういうの無しっすよ」


 闘志を燃やす邪神だが、逆に女神は呆れた表情を浮かべる。


「まだやるとは言っていないんですがね。それに5年前優勝したのは砂肝さんです。賭けはどちらも失敗したじゃないですか」


「いやあれは私の負けっす。5年前は()()()()()()()()誰か賭けてたじゃないすかー。優勝したのは砂肝っすけど、あいつが敗退者をバンバン生き返らせて異世界転生して、その中に小間もいたんで、あれは私の負けなんすよ」


「別にどっちでもよかったんですけどね、私は」


「いいえ、あれは私の負けっす! てかセンパイ、砂肝が小間を生き返らせるって言った時、めっちゃ嬉しそうな顔してたじゃないすか! あんな勝ち誇った顔されて黙ってらんないっす! なんで今回こそリベンジっす。あーでも、今回はちゃんと優勝者を賭けましょうね」


 邪神の謎の圧に押され、一言も言葉を発せずにいる女神。

 女神が黙っているのをいい事に、邪神は強引に話を進める。


「じゃあ決定って事で! さて、誰に賭けますか? ちなみに今回はアメリカ人がほとんどなんすよ」


「前は日本人がほとんどでしたからね」


「そうなんすよ~。前回に負けず劣らずのいい人材が集まってますよ~。なんせ、あのレイトや小間に匹敵する悪意の持ち主が3人もいますからね~。やー楽しみっすね!」


「また面倒な事になりましたね」


 重い溜息をつく女神。

 その様子を見て、邪神は何かを思い出し、口にする。


「そういえば今、異世界と人間界ってどうなってるんすか? 最近は邪神の仕事が少なかったせいで知らなくて」


「今向こうでは、『不死鳥の魔女』と呼ばれし者が『黒い竜』を従えて大暴れしてる最中ですよ。しかも黒い竜の方は、あのサタンの生まれ変わりを名乗っているとかなんとか……」


「はえーサタンの生まれ変わりっすか、ようやく現れたんすね。黒い竜……あ、それって邪竜王とか言う奴じゃないすか? 確か5年前にもいた気がすんすよねー」


「さぁどうでしたかね。いつから現れたのかは知らないですね。後で調べて教えますよ」


「あざっす。で、それに対抗してる勢力はいないんすか?」


「今は竜騎士とその仲間たち、そして人間界の勢力が対抗してはいますが、やや劣勢ですね」


「竜騎士……あぁ彼らすか」


「はい、彼らです。5年前より人数は少し減ってしまいましたがね」


 5年前、異世界へ旅立っていったプレイヤーを思い出す女神だが、特に思う事はない様子。

 無感情のまま、女神の口は淡々と事実だけを述べていた。


「さて、じゃあそろそろ始めますかね。神の試練と言う名のコマ遊びを」


「なーんだ、センパイもやる気だったんじゃないすかー」


「ここ最近、私も暇を持て余していましてね。では5年前と同じように、1回戦は様子見で2回戦に勝ち進んだプレイヤーの中から賭けの対象を決めましょうか。私はバトルロイヤルの説明に行ってきます」


「了解っす。いってらっすー」


 邪神の前から、すっと女神の姿が消える。

 54人のプレイヤーの目前に女神が現れたのを確認する邪神。


「んまぁでも、1回戦を見るまでもなく賭けの対象はある程度決まってるんすよねー」


 不敵な笑みを浮かべながら邪神は独り言を呟く。


「レイトに匹敵する悪意を持つ3人……まぁ手堅くいくならここは外せないっすよねー。あ、それと……」


 邪神は別空間から神の間を眺め、1人の男に目を向ける。


百虎島びゃっこじま次郎じろう……なんかアイツに似てるんすよねー」


 邪神の脳裏に、目つきの悪い黒髪の男の姿が浮かぶ。

 海藤と同じ底なしの悪意を持ちながら、異世界へ転生した股間から竜を生やした男。

 気持ち悪い男だったが、ある意味一番楽しませてくれた男であるのも事実。


「今回はあいつに賭けてみるすかねー……。なんとなく今回のジョーカーになりそうだし、あいつ」


 邪神が独り言を言っていると、神の間のプレイヤーたちが順番に異能のカードを引いているのが目に見えた。


「懐かしい光景っすねー。5年前を思い出すっす」


 54人のプレイヤーたちが順番にカードを引いていき、次は百虎島びゃっこじま次郎じろうの番。

 次郎がカードを引く。

 すると直後、次郎の臀部が黒い光に包まれていった。


「うおおおあああっ!!? ケツが黒い虎の顔にぃ!!?」


 次郎の叫びに、邪神は大笑いする。

 予想的中。やはり次郎は小間竜騎とどこか似ている。引いた異能も、恐らくジョーカーのものだろう。

 臀部を黒い虎に変えた男の姿を見て、邪神は言った。


「いい暇つぶしになりそうっすね……」


 その邪神の笑みは、まるで純真無垢な子供のようだった。




今回で完結です!

お読みいただきありがとうございました!

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