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明日も日は昇る

皆楽しそうで何よりです。


「……そんな事が」


 俺、小間竜騎は万丈から語られた驚愕の真実に、動揺を隠せなかった。


「まさか、ちょ……」


「いや、重要なのはそこじゃないだろ……」


 俺が言いかけたところで、万丈に爆速で遮られる。

 え、ちょっと。この筋肉勇者、いくらなんでも俺の話聞かなすぎじゃない?


「俺まだ何も言ってないんだけど……」


「どうせお前の事だから『超強い美少女エロメイドを異世界に連れていく、なんて願いも叶えられるのか』……みたいな事を言うつもりだったのだろう?」


 コイツ……できるな。

 万丈の言う通り、俺の頭は美少女エロメイドで一杯だった。

 短い時間で随分俺の事を理解しているご様子。

 これが勇者の力か。

 まぁ冗談は置いておいて。


「まさかキル……あー、砂肝の奴が俺たちを生き返らせるとはな。しかも異世界に」


「汐里……砂肝が私たちを……」


 若干腑に落ちないと言った様子でクレアが呟く。

 そうか、コイツは砂肝に幻術をかけられていたせいで、砂肝と鳥皮好実を昔からの友人だと錯覚していたんだっけ。バトルロイヤル中にその幻術が解かれることは無かったが、恐らく敗退した事で幻術が無効化され、今ようやく真実に気が付いたのだろう。

 紅クレアに、砂肝汐里と鳥皮好実なんて友人はいなかったと。


「で、バンジョルノ先生。肝心の砂肝はどこにいるんだ? てか、他に何人生き返ってるんだ?」


「誰だそのバンジョルノって……。あぁ、砂肝ならそろそろ……」


 万丈が言いかけた直後。


「私ならここですわぁ~竜騎様ぁ~!!!」


 空間系魔術とやらを使ったんだろうか。

 俺たちの数メートル上方から、一気に5人の女が姿を現した。

 その中の一人、元魔王だか元魔女、キルこと砂肝汐里が俺に抱き着いてきた。


「わぁっ!?」


 その様子を見たクレアが、子犬みたいな驚き声をあげた。


「離せよババァ」


「そんな酷いですわ竜騎様! でも好き! 好きですわ~!」


「うるせぇ、おすわり」


「WAON!」


 電子マネーの犬っころのような鳴き声と共に、素早いモーションで土下座をする砂肝。

 いや、おすわりって言ったんだけど……そう思ったが、ギャル風女子高生の土下座もまぁ悪くないなと思い、とりま放置する事に。

 それよりも……俺は砂肝が連れてきた女たちに目を向ける。


「ミコト、鳥皮、桃木……随分と生き返ったもんだな」


「お久しぶりです竜騎君、こうして再会できてよかったです」


「……まさか、貴方とまた会う事になるなんて……」


「こかんちゃんひさしぶり~」


 金髪巨乳美女、黄金の不死鳥を従えし、天上てんじょうミコト。

 黒紫ショートカット、クールビューティーにして万丈の前世の幼馴染、鳥皮好実(前世はアリサ)。

 ロリ系美少女にして未来から来た(?)サイボーグ、桃木瞑亜ももきめあ

 どれもバトルロイヤルを3回戦まで勝ち抜いてきたプレイヤーたちである。

 しかしこうして見ると、マジで顔面偏差値高いなこいつら。それぞれタイプの違う美女、美少女って感じだ。

 ……ただ一人を除いては。


「あらダァリィン~。あたしにはノータッチでいくのかしらぁん、ヴふん」


「で、出部栖でぶすマキナ……」


 脂肪でコーティングされた肉をブルブルと揺らし、やたらとねちっこい話し方をする女。

 たしか実際は高校生だった気がするが、この中で一番おばはんっぽい外見をしている。

 まぁつまり、その名の通りデブスと呼ぶに相応しい外見をしている女だ。


「お前も生き返ってたのか……おい砂肝。これどういう人選?」


 未だに土下座をかましている砂肝にそう聞いた。


「はいぃ! 主に私が迷惑をかけた人たちと、あとは竜騎様が比較的仲良くされていたと思われるお友達を生き返らせました! はぃ!」


「デブスと俺は仲良くないぞ」


「ヴふん。ひどいじゃないダァリン。一夜を共にした仲じゃな~い」


「い、いちや!? 小間、どういう事なのか説明してよ!」


 何故か顔を真っ赤にして俺に詰め寄るクレア。

 いやどうと言われても。


「ただセッ〇スしただけだ」


「そ、そんな……。小間はデブスさんみたいな人が好きだったなんて……」


 凄まじい誤解と共に落胆するクレア。

 誤解を解こうかと思ったが、なんか疲れたからやめた。


「ていうかさ~……」


 間延びした喋り方で桃木が中断する。


「生き返ったのはいいんだけど、わたし、この女と一緒に異世界で生きていくなんて無理なんだけど~。こいつ、人間界の宿敵そのものだよ?」


 桃木はそう言うと、土下座形態の砂肝を指差し、威圧的にそう言った。

 砂肝は土下座形態のまま話を続ける。


「……私は取り返しのつかない事をした。それは分かってるわぁ。謝って許されるレベルを遥かに超えてる話、だから桃木さん。貴方には私を見ていて欲しい……。一生かけて、いえ、例え死んで生まれ変わってもずっと償っていくから」


「……何があったのあんた、本当にさ~……」


 以前とはまるで別人の砂肝に動揺を隠せない桃木。

 本来の砂肝は、私利私欲だけを行動理念とし、目的の為なら自分以外の全てを人形として利用する悪魔のような女だ。

 宿敵である悪女の変わり果てた姿に、桃木は心中複雑だろう。

 そんな重い空気の中、鳥皮が口を開く。


「……私からも謝らせて、桃木さん。彼女は私の半身……私の闇そのものなの。責任は私にもある」


「いや、とりかわちゃんに謝られても……」


 どうしたらいいか分からず、視線があちこちに泳ぐ桃木。

 しばしの沈黙の後、再度口を開く。


「ま~今更砂肝一人死刑にしたところでどうにかなる状況じゃないし~、それだったら世界を元に戻す為に尽力してもらおうかな。そっちの方が、あんたにとっても罰になるだろうしね~」


 死刑って……さらっと物騒なことを言うなこいつ。

 だが想像以上に現実的な考えだな桃木は。もっと感情的になってもおかしくはないと思うが。


「……えぇ。そのつもりだわぁ。身を粉にして、永遠に償っていくわ……」


「うん。……てかいつまで土下座してるつもりなの、あんた。嫌がらせ?」


 和解とはとても言えないが、取り敢えず一触即発だけは避けられた様子の砂肝と桃木。

 ……というか、空気重いな。しばし沈黙が流れる。


「ヴふん。それじゃダァリン、あっちの木陰であたしとイチャイチャしましょぉん。ヴふん」


 この空気をどう変えようかと考えていると、デブスが空気を読まずにそんな提案をしてきた。

 コイツスゲェな。体も太いし、心も図太い。


「い、イチャイチャ!? 駄目! 小間は私のだから!」


「ヴふん。それは違うわクレアちゃん。あたしとダァリンは永遠の愛で結ばれてるの。あなたは及びじゃないわよん」


「いえ、竜騎様は私のご主人様ですわ! 踏んでください竜騎様ぁ!!」


 何故か対抗してきたクレア、それに続くデブスと砂肝。

 これあれか。もしかしてハーレムってやつか?

 なんか想像していたのとは違うというか、不思議と然程嬉しくないな。

 なんというか、疲れるだけだ。きっと多分メンツの問題なんだろう。

 クレアが一番まともという時点で、このハーレムは終末もいいところだ。


「……カイン。貴方はいいの?」


「何がだアリサ」


「……貴方も今の内に告白しておいた方がいい」


「なっ!? 何の事だアリサ……俺は」


「……私の目は誤魔化せない。幼馴染だし、分かる」


 俺が歪なハーレム状態に辟易していると、鳥皮と万丈のそんなやり取りが耳に入った。

 万丈が告白……え、もしかしてあいつも俺の事好きなの?

 なんて冗談は置いておいて、告白って事は、あいつ好きな子いんの?

 なんだこのクソ詰め込みラブコメ展開。


「そうだな……。ここを逃したら一生後悔する気がする」


 万丈がまるで恋愛バラエティに出てくる男のような台詞を口にし、威風堂々と歩きだす。

 万丈は俺たちの横を素通りし、ある女性の前で立ち止まった。

 さぁ、選ばれるのは誰だ!?


「……天上ミコトさん」


「え? は、はい……」


 と、止まったぁーーーーーー!

 選ばれたのは天上ミコトだぁーーーーーー!


「神の間で貴方を一目見た時から、ずっと好きでした。流れるような美しい髪、非の打ちどころの無い完璧に整った顔立ち、雪のように白い肌、上品な佇まいに言葉遣い。僕は貴方を一目見た時に確信した。本当の女神は、貴方だったんだ……と。貴方の儚さ、可憐さは僕の凍てつく心を……溶かしてくれた。そして、雪解けと共に現れたのは……恋、だった……」


「……」


 うぉ……クソきめぇ……。

 ヘドロ染みた愛のポエムを延々と吐き続ける万丈に思わずドン引きする我々一同。アイツ、こんなキャラだったのか?

 先ほどとは違う意味で重い空気が流れる中、ふと俺はどうでもいい事を思い出した。

 それは、万丈の前でミコトの話をすると、必ず過剰に反応していた事。

 あぁそういう事か。何故、大した接点も無い万丈がミコトの名前にそこまで反応するのか気になっていたが、まさかミコトの事が好きだったとはな。本当、予想外だわ。


「あ、あの……」


 困惑した様子のミコト。

 まぁそうだよな。190センチの極道風ガチムチ勇者にヘビー級の愛のポエムを垂れ流しにされたら、言葉に詰まるのも無理はない……。

 しばらく黙り込むミコトだったが、ようやく重たい口を開いた。


「ごめんなさい……」


「……」


 まぁそうだよね。流石にほとんど接点が無いのにあんな格爆弾投下されたら、誰だってそうなるよね(笑)

 しかし、少し考えた割に随分とシンプルな断り方だな。ミコトの事だから、極力相手を傷付けないような言葉を選んでいるのだと思ってたが……なんて呑気に構えていると、ミコトがとんでもない一言を繰り出した。


「私、竜騎君の事が好きなので、万丈さんの気持ちには応えられません……」


「……はぇー」


 思わず、小さな穴から空気が抜けるような声を出してしまう俺。

 なんか、凄いよね色々。思わず感心した。(錯乱中)

 俺が呆然としていると、ミコトがたたたっと可愛らしく俺の下に走って来た。

 そして、俺の腕に抱き着いてきた。


「竜騎君、もう遠慮しません! 私も貴方の事が好きです!」


 真っ白な頬を赤く染めながら、ミコトは可愛らしい声でそんな事を言い出した。

 な、なんつー爆弾を投下してくれたんだお前は……。つかミコトが俺の事を好き? そんな素振りあったか? 万丈と付き合いたくないから適当に言ってるだけじゃなくて?

 とか思ったが、腕に当たるおっぱいの感触が最高だったので、全てがどうでもよくなった。


「ミコトさんまでっ! わ、私も!」


「ヴふん!」


「竜騎様ぁ!」


 それに続いてクレア、デブス、砂肝までもが俺に抱き着いてくる。

 えぇ、俺トト〇じゃないんすけど……。そんなに抱き着かれると重いんだが。特にデブス。お前はマジで降りろ。

 とまぁ色々思う事はあるが、取り敢えず面倒になったので、血統書付きの猫を愛でるダンディーな男のような顔つきで、一人一人の頭を撫でていく俺。あっへは、はーれむさいこー。(脳死)

 なんて風に煩悩に憑りつかれていた直後だった。

 俺の股間が巨大マグロレベルに膨れ上がり、そして爆発した。


「わぁっ!!?」


 爆発に吹き飛ばされる女性陣。

 そして……


「な、なんでまたこれが……」


 俺の大事なところから伝説の竜が生えてきた。


「あ、そうだ。竜騎様……と、皆。ちょっと聞いてくれるかしらぁ?」


 けろっとした様子で立ち上がり、全員に声を掛ける砂肝。


「バトルロイヤル中に使ってたみんなの異能だけど、私の独断でそのままにさせて貰ったから。前と同じように使えるはずよぉ」


 な、なんて事をしてくれたんだこの女は。

 俺がこの股間から解放される為にどれだけ……


「いや、もういいか」


 正直あのバトルロイヤルを経て、この状態にも随分と慣れたしな。

 それに、この竜が出てきたって事は……


「いるんだろ、龍彦」


「(ったはは! また会ったな竜騎ぃ!)」


 俺の脳内に、伝説の竜と化した親友、愛染龍彦の声が流れる。

 全く、ここまで来ると最早腐れ縁だな。


「(住む世界は変わっちまったけど、またこっちで一緒にバカやろうぜ! ったはは!)」


「はっ。そうだな」


 本当、底抜けに明るい奴だなお前は。

 龍彦、お前が伝説の竜として俺の前に出てきてくれて本当に良かった。

 お前がいなかったら、俺は今頃……


「ねぇ。誰と喋ってるの?」


 龍彦と話していると、クレアがきょとんとした顔で俺にそう訊ねてきた。子猫みたいで可愛いな。


「なんでもねぇよ、ただの独り言だ」


「……自分の股間に向かって?」


 確かに。傍から見たら自分の股間に話しかけてる頭の可笑しい奴に見えてしまうな。

 あとでちゃんと紹介しよ。


「……ねぇ、あれ何?」


「え?」


 突如、鳥皮が空を指差した。

 俺たちは鳥皮が指差す方へ目を向ける。そこには……


『こちらZ1。付近にA魔力反応を感知。これより追跡する』


『こちらX1。およそ100メートル先に人影を発見。人間の生き残りと思われる』


『こちらY1。A魔力を持つ者を発見。なんだ……あのバケモノは?』


 飛行しながら接近してきたのは、数メートルほどの大きさのロボット3体。

 その手にはマシンガンのような武器が握られている。


「あ、飛行型パワードスーツだ~」


 のほほんとした声でそう言った桃木。

 桃木がそう言うって事は、あれは数百年後の人間界の兵器。つまりあいつらは人間界サイドの勢力と言う事になる。ところで、バケモノって一体誰の事なんですかね。


『こちらZ1。股間から竜が生えた奇妙な人型クリーチャーを発見。繰り返す。股間から竜が生えた奇妙な人型クリーチャーを発見! これよりZ1、X1、Y1で対処する!』


 はぁやっぱり俺の事だよな。

 てかそんな事繰り返すな、恥ずかしい。


『あの竜、まさかあいつが邪竜王なのか?』


『いやだが、邪竜王は黒い竜だという噂を聞いたぞ』


『クソ、七つの大罪に六大魔獣に加えてさらに別勢力だと! 本当、どうなってるんだこの世界は!?』


 邪竜王だの、七つの大罪だの、六大魔獣なんてものは知らないが、どうやら俺のせいで人間たちに敵勢力と勘違いされた模様。仕方が無い、ここは話し合いで……


「おいアンタら、ちょっと話したい事が……」


『おいアイツ喋ったぞ! 魔獣じゃないのか!?』


『だからってあれが人間なワケないだろ!! 構うな撃て!』


「いやそこは構えよ」


 そんな俺のツッコミも虚しく、3体のパワードスーツはマシンガンを構え、俺に向けて発砲してきた。

 だが、銃口から飛び出してきたのは銃弾ではなく、青白く発光したレーザービームだった。


「はぁもう勘弁してくれ」


 だが、俺の股間の竜は全ての攻撃をオートガードで無効化する。

 刹那の間に俺目掛けて発射されたレーザービームを、難なく弾く股間の竜。

 弾かれた瞬間、レーザービームは霧散して消えた。


『弾かれた!? バカな!』


 今ので俺を仕留められると踏んでいたのか、パワードスーツ越しだが焦っているのが分かる。


「全然話聞かないなあいつら。話し合いは無理そうだ」


「どうしますか竜騎様」


「仕方ねぇ。まずはあのガラクタから操縦者を引きずり出す。話はそっからだ」


 俺は首をゴキゴキと鳴らす。それと同時に皆が戦闘態勢に入る。

 はぁ、バトルロイヤルが終わったと思ったら、結局すぐ戦いか。

 最悪の異世界転生デビューとなってしまったが、仕方無い。腹を括るとしよう。


『人の姿をしたバケモノが! ハチの巣にしてやる!』


 パワードスーツの一人がそんな事を言い出した。

 ご期待に沿えず申し訳ないが、生憎ともう死んでやるつもりはない。

 今度こそ、何があっても生き抜いてやる。


「僕は死にましぇん!」


「ギャオオオオオオオッ!!」


 股間の竜の咆哮と共に、俺たちの異世界ライフは幕を開けたのだった。



お読みいただきありがとうございました。

本編はこれで終了になります。

あとは、番外編というか後日談を2~3話やったら終わりにしたいと思います。

だらだらとすみません! 最後までよろしくお願い致します!



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