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夜⑥ 風呂とJK2人とコワモテ筋肉

前回登場した新キャラ


松笠剛平まつかさごうへい

茶髪をオールバックにしたゲス顔の男。童貞?


天上てんじょうミコト

金髪ロングの美人さん。巨乳。



 俺、小間竜騎とゲス顔の松笠剛平まつかさごうへいは、女湯を覗くために大浴場へと向かっていた。

 だが……


「なんだこのもやがかった壁は……」


 男湯と女湯に分かれているのは分かるのだが、女湯の入り口に謎の靄がかかっており、中の様子が全く見えないようになっていた。試しに靄に触れてみると、見た目の印象とは裏腹に鉄のような硬さを誇っており、中への侵入を阻むものとなっていた。


「クソ、なんでやんすか! 折角ここまで来たのに! 隠れて侵入しようと思ったのに!」


「どけ、俺の股間で破壊する」


 俺は爆睡を決め込んでいる股間の竜を両手で持つ。

 そして……


「ふぅん!!」


 竜を野球のバットのように、腰を使ってフルスイングさせ、靄の壁を殴りつける。


「……効果はなしか」


 異能や魔術を無効化できる伝説の竜であっても、靄の壁には効果がなかった。


「目の前に……天上てんじょうさんのおっぱいがあるのに……でやんす」


 打ちひしがれる松笠。まぁ確かにミコトの全裸は目に焼き付けておきたいところだが、俺の竜でも破壊できないとなると望みは薄いな。


「おい松笠、お前の能力じゃこいつは破壊できないのか?」


「おれの能力は破壊向きじゃないでやんす」


 藁にもすがる思いで松笠に聞いてみたが、どうやら無理みたいだ。こいつは諦めるしかないな。

 なんて思っていると……


「クレアが言ってたんだけどぉ、ここの大浴場マジ広いらしいよぉ」


「……そうなんだ。楽しみ」


 俺たちが通って来た廊下から、制服を着た女子が2人歩いてきた。ギャルのような口調をした栗色の髪をロングにした女子と、もう片方は黒紫色の髪をショートにした寡黙な女子だ。どちらもかなりレベルが高い。今クレアの話をしていたが、もしかして同級生だったりするのか? 類は友を呼ぶ、ならば可愛い子の友達もまた可愛い子というわけか。


「なぁお前ら。ちょっといいか?」


「え、なに……うわ、あんたは小間竜騎!」


「……小間竜騎」


 声をかけただけなのに、なんだかエライ警戒されていた。


「どうしたんだよ? そんな驚いてよ」


「どうしたってあんたのこと知らないやつのほうが……きゃぁっ!!?」


 栗髪のギャルはこっちを向いた途端、何かに驚いた。


「なんだよ……後ろになんかあるのか?」


「あんたさぁ! なんで下履いてないわけぇ!?」


「だってよ松笠。なんか言われてんぞ」


「いやどう考えても小間っちのことでやんす!」


 どうやら俺のことらしい。


「なにをそんな騒いでんだよ。確かに下は履いてないけどよ、大事なところは竜になってるから問題ないだろ? そら、ぶらぶらぶーらぶら」


 俺は腰に手を当て、股間の竜を左右にぶらぶらさせる。


「きゃぁ! もう! なんか絵面的にマズいのよぉ!」


 栗髪のギャルが顔を真っ赤にさせて叫んでいた。なんか……可愛いな。ここのやつらは俺のこの姿を見ても、ブチ切れるかスルーするかだったからな。そうだよな。これが普通の反応だよな。

 俺は可愛い女の子の正常な反応に少し興奮を覚えた。


「これは……新たな扉を開いてしまったようだな」


「ギャオオオオッ!!」


「うお! なに急に目ぇ覚ましてんだよ!?」


 俺が興奮していると、股間の竜が突如、釣れたての大魚のように暴れ始めた。


「くそ暴れんじゃねぇよ!」


「きゃぁ! こっちにそれ向けないで!」


 俺が股間の竜を両手で抑えつけていると……


「……いい加減にしなさい」


 ドゴォ! ……と、俺の左こめかみ辺りから、凄まじい衝撃音が聞こえてきた。 衝撃音の数秒後、ようやく状況が分かってきた。黒紫ショートの女が、俺の左こめかみに向けてハイキックを放っていた。

 しかし、その蹴りが俺に命中することはなかった。何故なら……


「残念だったな、俺の竜にその程度の攻撃は通用しない」


「……私の蹴りをガードした?」


 俺の駄竜が目覚めたことにより、女の蹴りをオートガードした。駄竜はついさっきまで暴れていたが、ちゃんとやることはやってくれるようでほっとした。

 それにしても今の蹴り、相当な速度と威力だった。食らったらタダじゃ済まなかっただろう。何者だこの女。


「さて。色々ハプニングがあって遠回りになってしまったが、お前らに聞きたいことがあるんだ」


「……全部あなたが起こしたことじゃない?」


 それは言わない約束だ。


「てかなんなのもう! 早く言ってよぉ」


「女湯に侵入したいんだが、この靄の壁なんとかしてくれないか?」


「するわけないでしょ! あほなのぉ!? 行こう、好実このみ!」


「……そうだね、汐里しおり。……あんな奴ら、ちからさえ戻れば……」


 そう言うと2人は、靄の壁をすり抜け、女湯へ入っていった。どうやらこの壁は、異性を弾くように作られているらしい。ちなみに、栗色の髪のギャルは汐里しおり、黒紫のショートカットが好実このみというらしい。


「小間っち。あんなストレートに言ってどうするでやんすか!?」


「あ、松笠。まだいたんだ。あいつらが来てから全然喋ってなかったよな?」


「き、気のせいでやんすよ!!」


 女子が現れた瞬間に無言になった松笠。どうやら、松笠童貞説は真実なのかもしれない。


「それにしても……」


「どうしたでやんすか? 小間っち」


「いや、なんでもない。とりあえず、俺らも風呂入ろうぜ」


「お、おう。そうでやんすな」


 俺は、さっき好実このみとかいう女が去り際に言っていた言葉が気になっていた。好実の言う「ちから」が何を指すかは分からないが、仮に前世の何かしらの力のことなのだとすれば、やつが元魔王か元勇者である可能性は十分にある。やつを警戒しておく必要があるな。



--------------------



「はーこりゃまたでっけぇなぁ」


「普通に行ったら、いくらするでやんすかねぇ」


 俺と松笠は大浴場に入ると、思わず声をあげた。こりゃまた、桁違いの広さだな。広さの割に利用している者はほとんどいなかったが。


「小間っち! 覗きに使えそうなものはどこにもないでやんす!」


 当たり前だが、男湯と女湯の間には立派な壁があり、「シャンプー貸して~」「しょうがねぇなー、ほら投げるぞー」……みたいなやり取りができる余地など残ってはいなかった。

 つまり、やぶれかぶれで特攻をかけて女湯を覗くことなど不可能だった。


「まぁ、入り口にあんな靄の壁がある時点でセキュリティは万全だ。もう諦めろ」


「そんな~、悔しすぎるでやんす!」


「ドンマイ」


 打ちひしがれる松笠。お前そのリアクション好きだな。

 どうでもいいが、松笠のポコチンは皮を被っており、非常に小ぶりだった。小学生の頃の俺くらいのサイズだった。


「おい貴様ら、静かにしろ。うるさくてかなわん」


 俺と松笠が話していると、風呂の方から低めの声で注意された。

 声がした方向を見ると、短い黒髪で、コワモテの男が風呂に入っていた。風呂に入っているため上半身しか見えないが、相当鍛えられた体をしていた。筋骨隆々の肉体に加え、鋭い眼光でこちらを睨みつけるその姿は、まるでヤ〇ザそのものだった。


「す、すいませんでやんす!」


 松笠は案の定ビビり倒していた。本当に相手によって態度をコロコロ変えるやつだな。

 でもそう考えると、松笠が俺に馴れ馴れしく話しかけてこられたのは、俺をナメているからだろうか。だとしたら、少し癪だな。


「……その股間、お前が小間竜騎か」


 コワモテ筋肉が俺にそう言った。皆それで俺のこと覚えてるんですね。まぁ仕方ないけど。


「そうだけど。あんたは?」


「俺は万丈龍之介ばんじょうりゅうのすけ。小間、お前はこのバトルロイヤルについてどう思う?」


 どう思う……か。俺は既に女神から、このバトルロイヤルが開かれた理由を聞いてしまっているので、正直それ以上の感想は出てこないが、まぁなんとなく答えておくことにしよう。


「どうって……まさか死んでなお、こんなことに巻き込まれるとは思ってなかった。しかも股間から竜生えてくるし。股間から竜が生えてくる事件に巻き込まれる、これが本当の竜巻たつまき……なんつってな」


「……そうか」


 万丈ばんじょうは、期待していた答えが返ってこなかったからか、俺たちに興味をなくして風呂を出て行ってしまった。いや、竜巻についてなんでもいいから触れてほしかった。スルーって一番傷付くぜ。


「いやぁ小間っち、さっきの人、メチャクチャ怖かったでやんすねー。筋肉すげぇし、身長も190近くあるんじゃないでやんすか?」


「確かに。あいつがどんな能力を持っているかは知らないが、勝ち残っていけば、いずれ戦うことになるかもな」


「うわ、絶対ごめんでやんす! そういえば小間っち」


「なんだよ」


「さっきの竜巻ってどういう意味でやんすか?」


「うるせぇよ」


 やっぱこいつはあまり好きになれんな。

 こうして、俺と松笠は30分ほど大浴場を堪能し、女湯も覗けずに、大浴場を後にしたのだった。


お読みいただきありがとうございます。

次回、例の男が目覚めたときのお話です。

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