悪党の血が騒ぐ
ギリギリ1日でブクマ1増えました1日1ブクマで一年後には365ブクマや!
「よしっ! 開いた!」
「よくやった! へへへっ。お邪魔しますよ~っと……」
「なにしてるの?」
《えっ!?》
おかしな体型の二人組だった。
上半身は筋肉で膨れあがっているのに、足は細い。
二人とも髪の毛の色は緑色でヘルメットヘアー。
分厚い瞼、耳、唇。臭いは臭いし、胡散臭い。
「なんだ。獣族か……」
「……大丈夫なの?」
「学がないなぁお前は。心配するな。獣族は半獣族に比べて力も頭も弱い」
「……」
へぇー、そうなのか? ってことは俺よりもツヴァイの方が優秀で、下手すれば喧嘩したら負けるのかな?
「魔力もない。臆病……つまりこれだわな」
男の一人が自分のこめかみを指差してクルクル回した。
このジェスチャーはこの世界にもあるらしい。
「俺たち『新成ゴブリン族』に勝てるものは一つもない! つーわけでどっかいけよ。 俺たちはこれからお楽しみなんだよ。シッシッ! ……おや?」
どうみても弱点であろう足にインロー(相手の内腿を蹴るローキック)を放つと男の足は外側にグニャリと曲がった。
「にいちゃ……それ……足の形変になってな……うわっ!」
もう一人の方には足刀蹴り……膝の上を正面から踏みつけるように蹴った。
右足の爪先が膝につきそうなぐらい折れ曲がった。
「おやすみ」
叫ばれる前に俺のでかい手のひらで二人の顔を掴んでそのまま地面に叩きつけて気絶させた。
「物置小屋につれていこう」
「……んんんっ!?」
「大きな声だしちゃあだめだよ?」
仲のいいやつらだ。同時に目を覚ましやがった。
「???」
まぁパニックだよなぁ。いきなり獣族に襲われて『素っ裸にされて全身をロープで縛られている』のだから。
「んーー!」
「ああ? 足? すごくいい薬草があるんだよ。それを塗ってあげたんだ。しばらくは痛みは感じないよ……ほらっ!」
「!?」
「!!」
「おらっ! ほらっ! ねっ!? 感じないでしょ!? すごくない!? ねぇ?」
俺は頭がいかれた奴のフリをして只でさえ重症の足を何度も踏みつけてやった。
返り血を顔面で浴びる感覚が懐かしかった。
「ああこりゃひどい。薬草の効果が切れたら地獄だねぇ」
「た……たべないでくださいぃぃ。俺たちはちょっと出来心で……ほら、こんな山奥に女の子が一人で住んでたら危ないよって注意しに……」
「そんな噂どこで訊いたの?」
「ホルピィで! いやぁでもあなたのような強い獣族がいるなんて知らなかったなぁ! うん! あなたがいれば安心だ……うひぃ!」
鼻に一発食らわせた。男の鼻の穴からドボドボと鼻血が流れ落ちる。
「文字数が長いよ……余計な感想や形容詞はカットしなよ……」
「……ごべんばさい」
「いいよいいよ。俺も悪かった。仲良くやろうよ」
「気をつけて帰ってねー!」「……」
我ながら鬼だと思う。あれから俺はひたすら朝まで『世間話』をした。
大怪我をしている自分達の前で世間話をされるという非日常感は一生もののトラウマを奴等に与えただろう。
『あいつにだけは二度と近寄りたくない』
俺はそう思わせるのが上手いんだ。
大量の薬草を口に咥えさせられた男たちは仲良く肩を組んでピョコピョコしながら山を下りていった。
『山の上の小屋にいる一人暮らしの少女』の噂は奴等によって怪談話に塗り替えられるだろう。
二度とここに来ることはあるまい。
「んん……小屋の掃除をするかぁ」
朝まで説教したら疲れた。
「……」
「……おはようございます」
「おはよう……ございます」
全身黒ローブの眼鏡をかけた女とすれ違った。
髪型はロングヘアー。いかにも真面目な騙しやすいタイプ……とりあえず美人だった。
顔を返り血で濡らした俺のことをどう思ったろう? やはり感が鈍っている。
女の気配に気がつかないとは。
まあいいや。たまにいる冒険者ってやつだろう。
この山を越えて新しい大陸へ。
二度と会うことはあるまい。
「アビー君を我が学園に入学させるわけにはいきません!」
女とはすぐに家であった。女はホルピィの学校の教師で、入学前の説明会に来たのだった。
ルドリーシャめ、もうとっくに話を進めていたのだな?
「なぜですか!?」
「アビー君に問題があるからです! うちの学園は非暴力と平和主義がモットーなんです!」
「そんな! アビーはいいこです! 虫も殺せない気弱な子なんです!」
「……」
ルドリーシャ……どうやら学校に行くって話は無しになりそうだな……ごめん。
言霊というものがあるなら書籍化したいなと言い、もうこれ以上日本に災害は来るなと言いましょう。