仕事探しは
「ったく...ペット探しに5時間もかかるなんて」
ペット探しの依頼をやり終え、ギルドに報告を済ませた時には、日も落ちかけ辺りを僅かに街灯が照らしていた。なんとか夜になるまでに、達成できたとロイドは安堵していた。いくら街灯があるとはいえ、路地裏等に入られてしまえば、見つける事は不可能であったろう。
報酬を受け取り上機嫌な彼は、王都に来て以来常宿にしている朝夕2食付きの宿「アルシェ」に向かった。
「ただいまです、女将さん」
戸を開け、中に居たこの宿の主人に声を掛ける。
「あら、お帰りなさい。お食事、すぐにされますか?」
彼女は、妙齢の、病で旦那を亡くした未亡人であった。小さな宿ではあるのだが、彼女はこの宿を1人で切り盛りしており、苦労もあるだろうにそんな姿を一切見せない彼女には、客や近所の男連中から密かな人気があった。
「はい。お願いします!」
ロイドが決して安くないこの宿を常宿にしたのも、さもありなん。哀しいかな、彼の村にはそういう色香を醸し出す女性は居なかったので、免疫というものが無かったのである。
「ふふ、分かりました。すぐにご用意しますね。」
そういって彼女は厨房に下がっていた。そんな彼女を目で追いつつ、彼は財布の中を確認した。
今日こなした依頼の報酬分銀貨5枚もあわせ、しめて銀貨25枚と銅貨5枚。
この宿が、食事付きで銀貨7枚であることを考えれば、今日の収支は銀貨2枚の赤字である。
明日もおそらく、ギルドの掲示板にはペット探しが2、3枚貼られているだけであろう。ペット達も、冒険者の食いぶちを作るために脱走しているのではないかと疑いたくなるペット探しの依頼率である。
このままでは、本当にまずいと思った彼は、これからどうするのか真剣に考え出したのであった。
「夢を追う?それとも夢を諦め転職する...?」
節約の為に安宿に泊まろうとは微塵も考えないロイドであった。
冒険者ロイド残り所持金、銀貨18枚銅貨5枚。
三人称辛い...辛くない?