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キス×バッテリー!  作者: 和無田 剛
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シーン01「炎の転校生(かわいい)」その8

 その翌日。

「みーくん、起きなさい! 早く!」

 充は自宅のベッドで登校前の惰眠を貪っているのを母親に叩き起された。

 時計を見るとまだ六時前。

「なんだよ、まだ早いじゃんか……それと、その呼び方やめろって言ってんだろ」

 いいから早く顔洗って身ぎれいにしなさいと力づくで布団をはぎ取り、息子をせき立てる。

「なんだ、なんだよ! 今日なんか早く行かなきゃなんない用事あったっけ?」

 母親は、ぬひーん、と含み笑いを漏らし、

「やるじゃないの、みーくん。さすがパパの子だわ。あんな綺麗な子といつの間にお近づきになってたのぉ?」

 その言葉に、充は玄関へ走る。

 池田家の玄関に、直立不動で立つ、濃紺セーラーの超絶美少女。

「お早う御座います、ミツルさん。護衛の必要上、本日より登校時と下校時に同行させていただきます」

 はあ……。そうですか。

「みーくん! ほら早く着替えて! そんな格好で彼女さんの前に出るんじゃないの! 男には見栄ってものが重要なんだからね!」

 何言ってんだこの母親。

「お母様、失礼ですが……見栄が重要、とはどういった意味合いでしょうか?」

 何で食いついてんだよ。

「いいから、アリスもうちょっと待っててくれよ。急いで着替えてくるから……でも、こんな時間に行っても早すぎるんじゃないか?」

 どれだけゆっくり行っても一時間以上早いぞ。

「おや、学校という組織は朝が遅いのですね。これはしたり」

 棒読みする彼女に、アリスちゃんていうの? かわいいお名前ねー、と母親が彼女の腕をつかむ。

「時間あるなら、朝ごはん食べていったら? 大したものはないけど」

 これだからおばさんは。強引だなあ。アリスも迷惑に……

「よろしいのですか? では遠慮なく」 

 さっとローファーを脱いであがりこむ。

「どうぞどうぞ、汚いところですけど」

 ダイニングへ入っていった女二人。もうどうにでもなれと充は着替えるために自室へ戻る。

 「アリスちゃんは、朝はパン? ごはんがいい?」

 母親はどちらでもかかってこいとばかりに言う。池田家は母親がパン派で、充と、現在北海道に単身赴任中の父親が米飯派なので、どちらも用意があるのだ。

 コンロの上のフライパンが音を立ててベーコンエッグの香りが漂ってくる。

「どちらでも構いません。贅沢は敵です」

 食卓の椅子に背筋をまっすぐに伸ばして座る軍人美少女。

「あはは、戦時中みたいなこと言うのね。アリスちゃん」

 母親は脳天気に言うが、考えてみればスピンなんとかはプリンなんとかと戦争……してるのか? 昨日の話の内容からするとそういうわけでもなかったようだが。

「ねえねえ、いつから付き合ってるの二人は」

 母親の言葉に味噌汁を盛大に吹き出す充。

 なにやってんのみーくんは本当にコドモねえ、とテーブルを拭く母。

「昨日からです。お母様」

「いや、ちょっと待って! アリス多分付き合うって意味が分かってない!」

「いいえ、わかっています。付き合う、とは他者と交友関係を構築する、あるいはどこかへ同行するという意味です。一般的な動詞は、ちゃんと翻訳されていますので」

 うーんなかなかやるわね、と唸る母親。

「ア……アリスはさ、まだ外国から帰ってきたばかりで、あまり日本語とか、ちゃんとわかってないっていうか。常識が不足してるっていうか」

 とりあえず不自然なところがあっても言い抜けられるように言っておく。

 ふうん。そうなんだ、じゃあまだなのねと母親はつまらなさそうにする。何が、とは聞かない絶対に。多分地雷だその辺の話題は。


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