シーン03「ウォーターフロント・ラブアフェア(仮)」その10
「シュワっとはじけるーっ! ……ってミツル、炭酸は出てくる時に鼻がツンとするからやめろ!」
半袖セーラー服のメガネ女子が、目の前に立っていた。
「いやん、おろしたての制服が濡れちゃったぁ」
妙なしなを作ってから、さて、とヨーコは眼鏡をくいっとあげる。
「今回は、なかなか大掛かりじゃないかプリングパトゥースの諸君。いいのかな、こっちの世界でこんなに予算使ってしまって。高度結界をかなり広範囲に張った上にでっかい人形操って、それとそこの西部劇のオバサンも空間移転なんて……」
「おやおや。これはこれは、連合軍作戦司令部のトップがこんな現場まで……そちらも人材不足なのですかな? だから我々の仲間をさらったり」
ふん、とヨーコはわかりやすく軽蔑の表情を浮かべた。
「すべて、ネガティヴだ。まず、今の僕は作戦司令部から暫定設置の特殊任務班へ異動している。また、連合軍は人材不足ではない。この任務の重要性を認め、もっとも優秀な人材……つまりこの僕を配置したに過ぎない。それから三つ目の戯言は……まあ、反論するまでもない言いがかりだな」
「ああもう! 何をゴチャゴチャと! そこの貧乳、アンタさっきなんつった?」
馬上で吠えるジャック。
「何だ、年増。言っておくが僕は脱いだらすごいぞ」
嘘つけ、と充は心中つぶやく。一応味方だから黙っといてやるが。
「この……合法ロリが!」
「ふん、褒め言葉として受け取っておこう」
ほめてねーわ! ジャックさんは投げ縄を振り回す。
それを見てもヨーコは顔色一つ変えずに、あろう事かよそ見をした。
「ミツル。ここで少々、マフトに関しての補足講義だ」
「何言ってんだ、こんな時に!」
充の言葉にも耳を貸さず、ヨーコは続ける。
「マフトを操るプロフェッショナル、中でも戦闘に特化したのが僕たち軍人だ」
言いながら、緑の投げ縄を軽々と避ける。
「それには属性があってな……アリスは火。そして僕はお察しのとおり、水だ。周りにその物質があればマフトの錬成もしやすくなるし、力も増す。もしここが水の中だったら、僕はほぼ無敵だ」
なめんじゃないよ! 馬上のカウガールは怒りの表情でツルを飛ばす。
「そこのオバサンは植物……なるほど豆の木か。そしてそこの少女……いや少年か? まあどっちでもいいが多分、風なんじゃないか?」
ユウがなんでわかったの、と目を丸くする。
「この結界内を途中からモニターしていたんだ。銃の弾道修正を行なっていた気がしたのでな。やはりそうか」
うんうん、と満足そうにうなずく。
ゴライアスが振り下ろした斧を、ユウが充の手をひいて避ける。
「さて諸君、ひとつこちらの世界の事を教えてやろう。この国には四季といって四つの季節があるが、それ以外にも、ちょうど今この時期に訪れるものがある……それが、スープだ」
ヨーコの言葉に、その場の全員が固まる。異世界人たちは初耳の情報に戸惑って。
「……一応、ツッコんだ方がいい、のか? 梅雨……だよな」
恐る恐る充が言うと、
「え……? 同じ意味じゃ、ないのか? ラーメンスープ、めんつゆ……」
「いや……なんというか」
あまりにも寒すぎて、いたたまれなくなった。
「…………!」
どうやらガチボケだったらしく、ヨーコは珍しく赤面した。
「ぬぁあああぁぁっ!」
スパアアァァァン!
「痛っ! 何でいきなり、どこからともなく取り出したハリセンで殴られなきゃならんのだ!」
オーディオドラマ並みに説明くさいセリフで不満を訴える充。ふん、とヨーコは鼻を鳴らし、
「照れ隠しだ!」
高らかに宣言した水色頭は、バサーっと制服を脱ぎ去った。その下に着ていたのは、やはりと言うかなんと言うかスク水である。




