シーン03「ウォーターフロント・ラブアフェア(仮)」その7
歓迎会は終了、会計を済ませて店外へ出る。
「まだ全然明るいな。じゃあ、帰ろっか」
充はスマホで時間を見てから言う。ええとアリスはうなずく。
「アリスー、ごめんこのあと護衛任せてもいい?」
数人の生徒に囲まれていたヨーコが言う。
「はあ? 何言ってるの貴女、任務をなんだと思って」
アリスは血相を変える。だぁってぇ……、とヨーコは口を尖らせてすねたふりをする。
「みんながもうちょっと遊んでいこ、って言うんだもん」
彼女の後ろで何人かが遠巻きにこちらを見ている。
「貴女ねえ……」
額に青筋を浮かべかけたアリスを充が取りなす。
「ま、まあいいじゃないか。せっかく誘ってもらったみたいだし」
「ミツルさん、もっと危機感を」
「まあまあ」
すす、とヨーコが近寄ってアリスに耳打ちする。実はな……
「……本部でも以前から可能性を論議してきたことなんだが、学校、特にこのクラスの中にプリングパトゥースの手の者が紛れ込んでいるかも知れない」
「……え?」
ああ、と重々しくヨーコはうなずいて他の生徒の様子をうかがい、更に声をひそめる。
「県立南高校に、ここ半年間で転校生は僕ら以外には居ない。だからまさかとは思うが……ひょっとしたら他人になりすます能力を持つ者がいたり、洗脳によって協力者に仕立てられている生徒がいるかもしれない。その場合、積極的にこちらに接触してくる人間が怪しい……あとは、言わなくても分かるだろう?」
と、思わせぶりな流し目をくれるヨーコ。そうね、その通りだわと何度もうなずいているアリス。充は、何となく怪しいと思いつつも黙っていた。
「じゃーねー。あとはよろしくー。 ……ねえ、そのケーキ食べ放題のお店ってどこなのー?」
和気あいあいと、女生徒数人とともに去っていく水色アタマ。
「まあ、いいことだ。みんなと仲良くするのは」
充のつぶやきにアリスが眉を寄せる。
「あーいやその。つまり、居るかもしれないって事は、居ないかもしれないって事だろ? 居ないなら安心して普通に友達づきあいすればいいんだし」
わたし達は任務で、と言いかけるアリスをなだめる。
「まあまあ、それはヨーコもわかってると思うよ? ……じゃあな中村。また明日!」
おうじゃーな、と手を振る中村とその他のクラスメイトたちに別れを告げて帰路に着く。
その後は何事もなく自宅へ……と、思っていたのは甘かった。




