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キス×バッテリー!  作者: 和無田 剛
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シーン03「ウォーターフロント・ラブアフェア(仮)」その5

 そして四限目は体育。

 男子は校庭で走ったり棒を飛び超えたりさせられ、女子は体育館でバレーボールの授業である。ここは順当に体育館の描写をするべきだろう。

「……あの球を使う競技なのね。予測はつく?」

 アリスがカゴに入ったボールを見て言う。先週のこの時間は体力測定で、アリスは体操服がないので見学していた。

 C組の女子は全部で二十四人。ちょうど六人ずつ四グループになるので試合形式で行なう事になった。南高の女子は一年生から体育でバレーを行なうので、皆それなりにできる。

「ふむ。シュワイメンド・ワーゲルの変則と思えば良いんじゃないか。ボール回しに回数制限があるくらいで、あとは大体同じと見た」

 転校生同士でイトコ同士(嘘)という事で二人は同じグループにされた。

 二人ともちゃんと学校指定の体操服(ショートパンツと半袖Tシャツ)を着ている。

「……なるほど。そのようね」

 二人ずつに分かれてのボールを使った練習が始まった。異世界娘二人はペアになってその中に混じる。

 ばあん、ばあん、という音に皆の注目が集まる。

 ヨーコが打つ鋭い球をアリスはレシーブで正確に返す。その球をまたヨーコが打ち、またアリスが返す……という反復運動が続く。打つ方も返す方も、何度やっても正確な軌道でボールが往復する。


 ちょっと……うますぎじゃない?

 何あの二人、天才かっ。

 美少女ふたりが流す汗……高まるぅー!


 勝手な感想が飛び交う中、二人は練習を終える。

「あの……火野さん水樹さん、うまいのね。前の学校でやってたの?」

 一緒のグループの残り四人が声をかけてくる。

「学校? いいえ。軍のトレーニングを兼ねたレクリエーションで」

「え? 軍……ああ。例の設定ね」

「設定?」

 訝しげに眉を寄せるアリスの肩をヨーコがたたく。

「スラングだ」

「え?」

「いわゆる若者言葉……それまでになかった新しい造語、あるいは新しい使い方の言葉だ。君の異世界での経験は彼女たちにとっては信じられないこと。それを『うっそー、やだあ、マジでー』というのと同じ感覚で今は『設定』というのだ」

 一分の隙もない真面目な表情で大嘘をつくヨーコ。そうなの、と素直に信じるアリス。周囲の皆は生暖かい目で見守る。

 意外とちょろイン属性……?


「……あの二人、あなどれないわね」

「そうね。本気でいきましょう」

 二人を少し離れたところから見つめる女生徒ふたり。

「あのレシーブ、相当練習してる。前衛の時はわたしに全部ボールを集めて。可能な限りバックアタックも積極的に行くわ」

 そう言った、背の高い彼女は千原ゆかり。彼女はバレー部のレギュラーであり、身長とジャンプ力を兼ね備えたスパイクはレフト、センター、ライトどこからでも鋭い軌道で相手コートに打ち込まれる。

「オッケー。どんなにレシーブがズレてもかならず最高のトスをあげてみせる!」

 そう答えた、中背の彼女は高端みづき。バレー部では正セッターにして副キャプテン。次期キャプテンも内定している。

『バレー部レギュラーのメンツにかけて、負けるわけにはいかないわ!』

 ふたりは見事にそろったタイミングで同時に言った。

 授業とはいえ、ある程度の遊び心を持って楽しんでやってもらおうという体育教師の方針により、試合は六チームのトーナメント形式で行われた。

 結果、バレー部レギュラー二人を抱えるAチームと、異世界軍人二人の所属するEチームが決勝戦まで進んだ。Aチームは順当な結果であり、なぜこの二人が一緒のチームにいるのかと何度か他のチームの生徒が苦情の声をあげた。ちなみにチーム分けは、厳正なあみだくじの結果である。

 Eチームは、どんな球でも拾うアリスと、低身長ながら驚異的なジャンプ力でバシバシとスパイクを決めるヨーコの活躍によって、二試合ともストレート勝ちしてきた。

 そして、決勝戦。

「わかってるな、アリス。僕らは戦闘のプロだ。どんな勝負であっても負けるわけにはいかない」

「ええ。当然よ」

 なんか悪い方向に盛り上がっている二人。

 残りの四人もそれぞれに、ここまで来たらバレー部に勝つぞー! などと盛り上がっている。何しろ、アリスとヨーコの実力はバレー部員二人に勝るとも劣らないのである。

 試合前、ネットを挟みコートの両側に分かれて整列する。

「よろしくね。転校生だからって、手加減はしないわ」

「望むところです」

「わたしより小さいのに、すごいね。でも、この試合はバレー部が勝つから」

「おてやわらかにね。バレー部さん?」

 二対二でそれぞれに相手を牽制しあう。

 ピッとホイッスルが鳴り、試合開始。残りの四チームはすでに試合を終えているのでコートを囲んでギャラリーになる。

 Aチームのサーブから試合が始まった。 

 後衛のアリスが危なげなくセッターにボールをあげる。レフトに上がったトスをヨーコがスパイク。Eチームの女子が飛びついて拾う。かなり乱れた球を素早くセッターの高端が落下点へ入り、きれいな軌道でレフトへトスをあげる。斜め後ろから来た難しいボールを千原は完璧なタイミングで相手コートへ叩きつけた。

 Aチームの一点先制。その後、主力の二人だけでなく他の四人もそれぞれに奮闘して、息もつかせぬ好試合が展開された。

 体育の授業でこんなに盛り上がって良いのかというくらいに白熱した試合である。

 一進一退でフルセットまでもつれ、授業終了の時間になってしまった。

「先生! このままじゃ終われません! 延長を」

 バレー部副主将の高端が訴える。その気持ちはコートに立つ残りの十一人だけでなく、周りで応援していた生徒たちも同様であった。

 そして、まだ女子はやってんのかと見に来た男子たちも同様であった。

 もっとも、彼らの場合は女子の、特にアリスとヨーコの体操服姿を見たいというのが主な理由であったが。

 最終五セット目も、もつれにもつれて得点は一四対一四、そして今、ヨーコのバックアタックにより一五点目がEチームに入った。サーブ権が移り、ローテーションがひとつ進む。

 ここからが、勝負だ。

 体育館にいる全員がそう思った。

 今のローテーションで、Aチームの前衛に身長の高い千原が来た。彼女のブロックは警戒が必要である。ここまで何度もポイントを持っていかれている。そうなったらデュース、あちらにサーブ権も移ってしまう。

「ここで、決めよう。僕はお腹がすいた。早く行かないと学食が混む」

 ヨーコが額の汗をぬぐいながら言う。

「そうね。これ以上長引いても不利になりそうだし」

 アリスは他のメンバーの様子を見て言う。かなり疲れているのがよくわかる。

「じゃあ、ビルダンゲBベーで、行くわよ」

「ああ。了解だ」

 頷きあう異世界美少女二人。

 Eチームのサーブ、Aチームは難なくレシーブ。セッターから早いトス。レフトからのクイック攻撃だ。

 コート前方へ来た球をアリスはギリギリ片手で拾う。

 そのボールの行方も見ずに、コート左側からヨーコはスタートを切った。全身をバネにして飛び上がる。アリスのあげた、ネット際のボールをそのまま叩きつける。まさか二球で返ってくると思っていなかった相手のブロックは間に合わない。

 レフトから対角線上に打ち込まれたスパイクが試合を決めた。

 ピーッ、とホイッスル。試合終了、アリス達Eチームの優勝だ。

 わああっ、と周囲から歓声があがる。いつの間にかC組の生徒だけでなく体育館の外まで溢れるくらいのギャラリーが集まっていた。もうとっくに昼休みなのである。

「いい試合だった。ありがとう。まさか授業でここまで本気になれるとはね」

「こちらこそ、有難う御座いました」

「サイッコーのスパイクだったわ。去年転校してきてくれてたらバレー部に勧誘したのに」

「ごめーん、僕らはいそがしいのだ」

 両チーム、握手。なんか妙に感動的な感じになっているが、これから着替えるとなるともう昼休みはほとんど残っていない。

 この後、ヨーコが空腹のあまり五時限目の授業をサボタージュして学校を抜け出すという事件があったりしたのだが、それは割愛して放課後。


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