シーン03「ウォーターフロント・ラブアフェア(仮)」その4
翌朝。
「やっぱりか。 ……まあ、読んでくれている人も皆そう思っていたよな……」
池田家の玄関には、二人のセーラー服異世界軍人。
「ミツル。メタな発言はリアリティを損なう恐れがあるから控えろ」
水色ショートカットのメガネっ娘がびしっと指を突きつけて言う。
元々リアリティなんぞなかろう、と充は思いつつ素直にうなずいておく。
ああ、今日から衣替えか。二人は半袖のセーラー服であった。上半身が白メインになったことでかなり軽快感が演出されている。充も半袖シャツの夏服を着用する。二人に会わなければ多分忘れてた。
「お早う御座います、本日より二名で護衛します」
そう言うアリスが若干引きつった表情のように見えたのは気のせいか。
あらあら両手に花じゃないの、でも優柔不断はダメよと母親が言うのを無視して充は家を出る。
相変わらずアリスは周囲に警戒と殺意を振りまき、ヨーコは対照的にのんびりと歩く。
特に危険な事もなく学校に到着し、じゃあ後で、とヨーコは別れる。
「……後で、か。まあそういう事だよな」
わたしも寄るところがありますので、とアリスもどこかへ行ってしまう。
残った充は一人で教室に入る。
何人かがアリスは今日は来るのかと聞いてくるので、もう来るよ、と答えてやる。多分あともう一人追加もあるだろうけどな。
教室のドアがガラガラと開けられ、ひと組の机と椅子を抱えたアリスが入ってきた。
充の前の席の男子に、少し前へずれていただけますか、と無表情に言う。言われた彼は慌てて従う。その前の何人かも前に追いやられる。
「ちょっと、何やってんだよ。迷惑だろうが」
慌てて止めようとするが、本部の指示でヨーコの席をセッティングしています、と冷静に言いながら空いたスペースに机をセットする。
なんか、俺このままクラスで浮いてしまいそうな予感が……。
やがて時間になり、担任の浜田教諭が教室に入ってくる。
「あー、先週に続いてまた転校生を紹介するぞ。 水樹さん、こっちへ来て自己紹介して」
浜田センセーの言葉に従い、ヨーコは堂々とした態度で教壇へあがる。チョークを手に、黒板へ自分の(偽)名を書き、
「水樹ヨーコです。趣味は読書とカラオケ、火野さんとはイトコなので、一緒に池田くんの護衛をします。みんな、よろしくねっ!」
妙に明るい口調で嘘を並べた。
後半微妙な内容も混ざっていたが、既にアリスのことを受け入れているクラスメイトたちにとっては、もうひとり増えたところで変わりはないし、意外に社交的な性格らしいとむしろ歓迎ムードであった。
それに、ヨーコもアリスとは別ベクトルの美少女なのである。多分、クラスの男子の中にはあわよくばと目論んでいる者もいるのではないか。まあ、一度話してみれば無理とわかるだろうが。
こうして護衛が二人になった。これからも増えるんだろうかという一抹の不安を胸に、充は教室の窓から外を眺めた。六月に入ったのに今年はまるで雨が降らないな。
授業が始まると、ヨーコは意外に真面目に聞いているようだった。転校初日にも関わらず教科書も全て揃っているようだし、一限目は充が割と得意な(と言っても試験成績はギリギリ平均点の)古文だったので、分からないなら教えてやろうかと思っていたのだが、そんな必要もなさそうだった。
その後の地理と英語は充の方が教えて欲しいくらい……いや授業以外に勉強したいという意味ではないが。




