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キス×バッテリー!  作者: 和無田 剛
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シーン03「ウォーターフロント・ラブアフェア(仮)」その1

 アリスがいなくなって三日目、充は状況に慣れつつあった。要は、以前に戻っただけ。

「あれが全部夢だった……なんて事は、ないんだよな」

 ベッドの下を覗いてみると、あからさまに怪しい小さな機械が置いてある。マフトによる結界展開装置だ。以前に戻った、と言っても全てなかったことにはならない。ただの小康状態、中休みである。

 それを確認して、何だか安心したような残念なような、複雑な気持ちになる。

 夕方までだらだらと過ごして自宅での勉強を放棄し、これは現国の勉強にもなるしと文庫本を読んでダメ人間ぶりを発揮している充に、

「みーくん、お風呂入っちゃってー」

 階下から母親が言う。

 はいはい、と風呂場へ向かう息子。

 脱衣所のカゴに脱いだ服を放り込み、浴室へ。

 ふう極楽極楽、とか言いながら湯船に浸かっていると、水面に異変が起こった。

 充の両足の間あたりから泡が。

「ん? ……ちがうぞ! 屁じゃねーぞ」

 ぶくぶくぶく……と泡は数と勢いを増し、そして。


 ざばあああぁぁっ!

 

 と、湯船から飛び出てきたのは水泳選手。

 ……ではなかった。水着姿の女子が、よっこいしょういちと言いながら湯船のふちをまたぐ。

「ふう」

 と水泳用のゴーグルを外す。これがあったせいで水泳選手のように見えたのだが、着ている水着はごくありふれた紺色のスクール水着であった。ゴーグルの代わりに銀縁の眼鏡をかけると、スク水メガネっ娘へとクラスチェンジが完了する。

 全体に起伏のないプロポーション。背が低く、中学生くらいにも見える。髪は水色のショートカット、白く小作りに整った顔には大きなコバルトブルーの瞳。

 眼鏡越しに、その瞳が浴槽の中で唖然としている充を捉える。

「イケダミツルだな? 僕と結婚しなさい。 ……あ、メガネくもっちゃった」

 池田家の浴室で仁王立ちしたスク水女子が、堂々と言い切った。

 突然求婚された充は、

「…………???」

 完全に言葉を失っていた。

 その様子に、眼鏡を外したスク水は小さく首をかしげる。

「どうした? こうした場面ではイエスかノーか、答えを返すべきだと思うぞ?

 ……そうか。こんな美少女からプロポーズされて感激のあまり言葉も出ない、というわけか」

 勝手に納得し、うんうんさもありなんとうなずく。

「では、誓いのくちづけを」

 身をかがめた彼女の唇が充の顔に近づく。

 ……は? なんですかこの状況。夢ですか夢なんですかいやでも最近は夢のような現実が引き続き立て込んでおりまして……


 ばん!


 と浴室のドアが勢いよく開かれた。

「ミツルさん!」

 セーラー服姿の黒髪美少女が立っていた。

 彼女の目の前には、お風呂の中でキスをしようとしているスク水女子と全裸の充。

「ア……アリス! いやあのこれは」

 言い訳をしようとして、そもそも現在の状況がまったく把握できておらず、いやそれよりもなんでアリスに言い訳しなければならないのかもわからないし、ていうかこのロリっ娘はいったい誰なんだと充の脳内はパニック状態に。

 幸いにも、最後の問いだけはすぐに答えが出た。

「ヨーコ! 何やってるの貴女は」

 水色ショートカットは小さく舌打ちし、

「見て分からないか? キスだ。結婚を前提とした誓いの口づけさ」

 堂々とアリスに向き直って言った。

 いやちょっと待て。

「そんな……。いつの間に」

 信じるなよ。

「わかったか。なら、そのまま黙って回れ右だ。野暮なことはするんじゃない」

 静かに優しい口調で、スク水は言う。

「……ミツルさん、貴方がそう望むのなら」

 アリスはすべてを受け入れたようだ……って、だから!

「ちょっと待てって! 俺まだ何もしゃべってねーし!」

 ちっちっち、とスク水は立てた一本指を左右に振る。

「愛に言葉はいらない、という使い古されたフレーズを知らないか?」

「だから! なんで今初めて会った相手と結婚しなきゃならんのだ! て言うかあんた誰だ。そもそも人んちの湯船から勝手に出てくるな! それからえーと」

「ミツル」

 水色頭は再び眼鏡をかけながら言う。

「落ち着け。少し頭を冷やしたらどうだ?」

 どうしてこの人はこんなに堂々としているんだ。

「……ヨーコ。やっぱり、貴女が勝手に押しかけてミツルさんの意思を無視して無茶なこと押し付けていただけなのね?」

 アリスが首の後ろに手をやりながら言った。

「見解の相違だな。見る者の主観によって現実など、いくらでも変化するものさ」

「そうやって誤魔化そうとしても……」

 フランベルジュの柄が見えた時点で充は叫んだ。

「ストップ! 俺んちで炎の剣は禁止! スク水、お前もとりあえず出ろ! 脱衣所にタオルあるからよく拭いて、リビングで待機! アリス、案内してやって」

「……あ、はい。わかりました」

 アリスは素直に指示を受け入れたが、

「ミツル。僕にはヨーコという名が」

「呼んで欲しかったら先に名乗れよ! いきなりあんな事しようとすんじゃねえ!」

 仕方ないな、と出て行くヨーコ。まったく何やっているのとアリスの声が聞こえてくる。

 どーしたの何かあった? という母親の呼びかけに、何でもありませんお母様、とアリスが答えている。

 なんかもう、一気にカオスだ。ていうか脱衣所から出てくれないと俺出れないし。


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