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キス×バッテリー!  作者: 和無田 剛
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シーン02「ウサギは寂しいと死んじゃうんだよ(嘘)」その2

 とりあえず早足で歩き出す。護衛対象に一人歩きはさせられまい。

「あ! ふれあい動物ひろばだってよ! アリスは動物とか好き?」

 見つけた立て看板に話題をそらそうとする。

「いえ、特には……」

 どうでもいい、という顔でついてくる。

 古びてはいるがメンテナンスの行き届いた小さな小屋に、鳥やうさぎ、亀などが飼育されている。職員はおらず、充たちの他には動物とふれあおうという人もいないようだ。

「……ミツルさん、この小動物は何ですか」

 うさぎ小屋の前で立ち止まったアリスが言う。

「うさぎ、居ないの? スピンに」

「スピーゲルウェルドです。居ませんね、こんな形状の小動物は」

 じっと、うさぎの鼻の動きを見つめている。

「あ、こっちでうさぎのエサ売ってるよ。エサやりできるんだ」

 うさぎのエサ百円、という手書きの看板と無人の販売所。ペレットといううさぎ用の餌が袋に入って置いてある。

「! フッタラング、トランケン?」

「え?」

「……いえ、失礼しました。食事を、あたえても良いのですか? この小動物に?」

 明らかに表情が明るくなっている。

 なんだ、好きなんじゃないか。充は硬貨を餌の横の箱に入れ、ペレットの袋を渡してやる。

「ありがとうございます。ここから、入れるのでしょうか」

 金網の下の方に小さな扉があり、そのすぐ下に餌箱らしきプラスチックの箱がある。カラカラと餌をいれてやると、真っ白いうさぎがぴょんと跳ねて近づき、カリカリと食べ始めた。

 しゃがみこみ、その様子を熱心に観察しているアリス。

 ……やっぱり、普通の女の子の面もあるんだな。それにしても……

 完璧な美少女であるが故に、実に絵になっている。いつもは乱暴にバサっと払う髪を今は耳にかけていたりして、しかもごく自然に微笑を浮かべていたりするではないか。

 一応、写真撮っとこうかな。

 スマホを取り出そうとした充の動きに、アリスが目を上げる。それまで優しかった目が、急激に鋭く細められる。

「い、いや! 別に変な意味じゃなく。今日の記念に一枚と思っただけで……」

 無意味に言い訳を始める充の腕を掴み、自分の後ろへやる。

「……うかつだったわ。まさかわたし達より先に来ていたなんて」

 そう言った彼女の視線の先には、小学生くらいの少女がひとり。

 セミロングの髪に可愛らしいカチューシャ、水色のワンピースに、真っ赤なエナメルの靴を履いている。

「アリス! あの子が?」

 一見、普通の子供だ。そう言えば、さっきの遊具の所で見かけた気がする。

「明らかに、こちらの世界の人間のマフト量として不自然です。 ……情けない。本部から教えてもらうまで気づかないなんて」

 どうやら、スピーゲルウェルドの軍本部がモニターしてくれていたらしい。

 少女は、何を考えているのかわからない表情……なんだか、目の焦点が合っていない。

 顔の筋肉のどこかがイカれているような、そんな表情で、

 言った。

「おどりましょう?」

 問い返すヒマもなく、少女はその場でクルクルと回り始めた。コマのように真っ赤な靴を中心にして、水色のワンピースの裾が傘のように広がる。

「ミツルさん、わたしの後ろに。決して前に出ないように!」

 アリスは炎の剣、フランベルジュを取り出して構える。

 刀身の炎がひときわ大きく燃え上がる。彼女はそのまま、剣を一閃した。

 炎が火の玉になって回り続ける少女へ飛ぶ。しかし、水色のコマは簡単にそれを弾き飛ばしてしまった。

 間髪入れずにアリスは回る少女との間合いを一気に詰めた。フランベルジュの一撃。

 少女は回り続けながら、すうっと後ろに下がってその攻撃を避けた。すかさず剣を持ち替え、突きを繰り出す。すると今度は、回転少女は空へと舞い上がった。コマがタコになってしまったかのように。

「ちょこまかと!」

 再び剣から火の玉を飛ばす。しかしそれは空飛ぶコマになっている少女には当たらず、その近くに浮かんだまま動きを止めた。

 次の瞬間、アリスの姿が消えた。

 そしてその姿は、空に浮かぶ火の玉の中から現れた。

「なんだ、瞬間移動とかできんのかよ!」

 アリスは空中で回り続けるコマより高く跳躍し、真上から剣を突き下ろした。

 回転の中心部の少女に打撃を加えたらしい。水色のコマは動きを止め、ふわっと地上へ落ちてくる。

 炎の剣を持ったまま、華麗に着地を決めるアリス。

 すげーな、無敵じゃん。充は思いながら駆け寄る。

「アリス! 怪我はない?」

 姿勢よく立った彼女は全くの無傷のようだ。考えてみれば少女は回ってただけでなんの攻撃もしてきていなかった。

「問題ありません。ミツルさんも、大丈夫ですか」

「ああ。だいじょう……」

 言いかける充は、自分の両足に違和感を感じて立ち止まった。 ……いや、立ち止まろうとした。しかし、足はそのまま動きを止めるどころか走るように左右交互に動き、そして……

 アリスに攻撃した。


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