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夏休みなので聖剣作りました。

作者: 式十

 カーテンの隙間から暑苦しい光が射してくる。冷却機が出す駆動音はただでさえうるさいのに、それに負けないぐらいの声で蝉が喚く。学校ではそろそろ夏休みが始まった頃なのだろうか。

 「補習を受けろ」と自称担任がやってきたのは一時間前。それをムラマサで追い返したのが数十分前の出来事だ。おのれ人間共、アタシを何だと思っていやがる。アタシはこの町の平和を守る聖剣を生み出す予定の希少なヴァンパイアだぞ?ちんちくりんな見た目でも今年で60歳だぞ?もっと差し入れにカステラのひとつやふたつ持ってきてくれても……

 煤けたハンカチを噛みながら愚痴っていると、インターホンが鳴った。

 すぐさま日除け用のマントを羽織り、仕事部屋を飛び出す。

「あ、ドラちゃん。おっひさー」

「……ドライネル=ヴァンプ。ライネって呼びなさいよ、ニト……て言うかドラちゃんって何よ、アタシはポンコツロボットじゃないのよ?」

「いーじゃん。奴のネームバリューを悪用出来て」

「よくないわ!!」

 玄関には、日光並みに鬱陶しいオーラを放つ少女……仁ノ宮(ニノミヤ)トウ、略してニトが立っていた。

 人間のくせにやたらとアタシにつきまとう、人間とは思えないぐらいの馬鹿力がある、おまけにやたら料理が美味しいし可愛いなど謎だらけの彼女だが、今日は更にとんでもない謎の袋を携えてやってきた。

「……その袋、何が入ってるの?見た所物凄い魔力が宿ってるみたいだけど……」

 そう……ニトの持つ袋から、赤い波動が放たれていたのだ。しかし彼女にそれは見えない。見えるのは魔力探知の力を持つヴァンパイアだけだ。

 ニトは途端にガッチガチに固まり、玉の様な汗をボタボタ溢した。しかし袋を奪おうとすると、彼女は恐ろしいまでの素早さで避けてしまう。

「え、ちょっとそれ何なのよ!?まさか四次元袋なの!?」

「いや、違うんですよ……えっとですね……森にあった聖なる剣を抜いたら盛大に壊れちゃってですね……?」

 彼女の口から出たとんでもない言葉に、今度はアタシが固まった。

 ……あのニトが、森の聖剣を壊しただって?

「だ、だだだだだだからね!!ンナァ、夏休みの自由研究に……」

「貴方、人間にしては最高よ!!上出来だわ!!」

「ふぁい!?」

 アタシは思わずニトに抱きついた。

 森の聖剣は憎きアタシの父(享年1万200歳、死因は餅を喉に詰まらせた事による窒息死)が作ったモノだ。それが壊れたという事は、とうとうアタシの作品が!!正真正銘の主役になる!!

「ニト、アタシと一緒に新しい聖剣を作りなさい!!これは命令よ!!」

「えっ……あっ、うん!!わっ私もね、夏休みの自由研究で聖剣作ろうとしてたからちょうど良かった……って何やってんだゴルァー!!」

 動揺しているニトから袋を奪い取り、中身を全てペットボトル用のゴミ箱にぶちまけた。どうせあいつの聖剣だし、ゴミ箱に入れたって特に問題ないだろう。実際材質もプラスチックだし。

「そんなんじゃダメダメ。アタシは聖剣に革命を起こすんだから、古いのは必要ないっ!!」

「そんなアート界の気鋭の新人みたいな事言われてもー!!」





 「たのしい聖剣クッキング」

 2年A組 14番 仁ノ宮 トウ

 <材料>

 なんかよくわからない欠片…いっぱい

 チョコレート…ちょっとだけ

 バニラエッセンス…ほんの少し

 生クリーム…たっぷり

 呪いの鉄血…大さじ2杯

 ピジョンブラッド…2粒


 作り方

1.材料を全部混ぜる。

2.それなりに高そうな型に入れる。

3.冷やして3日ぐらい誰かに鍛えてもらう。

4.なんかもこもこしたバケモノが出てくるから片っ端から潰す。

5.完成。


<結果>

 新しい聖剣には強い召喚獣もついてきたみたいです。町に魔物が入ってくると、どす黒い幽霊みたいなのが出てきて一瞬にして灰にしました。正直私の思ってたのと全く違う聖剣になったけど、結果オーライだと思います。ちなみに剣の型に入れたハズなのに、見た目はただのペットボトルになっていました。


 <最後に>

 私の自由研究に偉そうな口で協力してくれたドラちゃんは学校に行かなくていい権利が欲しいみたいなので、どうか宜しくお願いします。あと、私も頑張ったので数学の単位を下さい。



 これを読んだあなたにまともな思考があらん事を。

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