表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
B.K.B 4 life  作者: 石丸優一
8/61

Eleven Top

B.K.Bを支え続ける十一本の柱。

隣町のクリップスとの雌雄を決する、若きベテラン達。

決戦当日の昼過ぎ。ハスラーも含め、メンバー全員がアジトに集まっていた。

アジトと言っても部屋の中ではなく、外だ。もちろん敷地内ではあるが。

メンバーが三十人を超えた今、全員が中に入るのは無理だろう。

 

「ハスラーはもちろん戦闘には参加しない。初めての『攻め』の戦いだ。決行は夜!ウォーリアー!気合いを入れてかかるぞ!」

 

マークがウォーリアー全員に向けて叫んでいる。

 

マークの言葉をよそに、俺は大ギャングとなったB.K.Bへ、ハスラーの増員を考えていた。

あと三人は欲しいところだ。

ブツの仕入れの量、買う客を増やす手立ても考えなくてはいけない。

 

しかし、まずは隣町のクリップスを打ち倒し、俺達のテリトリーを広げる事で一つの道は確実に開ける。

なぜなら今までクリップスからブツを買っていた奴等が新たな客となるからだ。

 

ハスラーはすぐに増やす事ができる。

どうにも答えが思いつかないのは、仕入れの問題だけだ。

 

レイクから回してもらえる量は増やせないとウィザードが言っていた。


新たな別の取引き先を探さなければいけない。

そこで俺に一つの考えが浮かぶ。

 

ウィザードは今までマリファナ以外にも、武器やドラッグを仕入れてきた。

その取引き相手を、メモをなくした俺は知らない。

 

武器やドラッグを回してくれている仕入れ先を辿って行けば、何か新しい道が見えるかもしれない。

 

俺はこの話を、クリップスとの抗争にピリオドを打った後にウィザードに相談しようと心に刻んだ。

 

「じゃあ夜まで解散だ!また夜に会おうホーミー達!」

 

マークがそう言ってみんなへの激励を終える。

いつの間にかマークはウォーリアー達のまとめ役のような存在になっていた。

 

確かにマークならガタイもイイし、もちろんケンカもかなり強い。

みんなを力強く引っ張って行ってくれるに違いない。

 

ウォーリアーをまとめるリーダーを作るのもイイかもしれない。

だが、俺達は基本的には初期メンバー十一人を仲間として同等に見ていたし、新入り達を部下として見てもいない。

仮にも俺がクレイの血を継ぐ弟としてリーダーと呼ばれ、初期メンバーだけはE.T.と呼ばれて新入り達から尊敬されてはいるが、みんな同じ仲間なのだ。

上下関係など無いに等しかった。


 

みんながバラバラと散らばり始めると、ふいにシャドウが俺に話しかけてきた。

 

「サム、実は一つお願いがあるんだ。ウォーリアー全員の意見なんだが、なかなかみんなはお前に伝えづらいらしい」

 

「どうしたんだ、ニガー?」

 

「…戦闘にお前も参加して欲しい。ハスラーとしてでもウォーリアーとしてでもない。

リーダーとしてみんなの士気を上げて欲しいんだ。戦わなくてもイイ。お前がいるだけでみんな心強いんだよ」

 

俺は驚いた。

確かにシャドウの言う事も分かるが、俺がのこのこ出て行って殺られてしまっては、せっかく俺をハスラーに選んだウィザードの計らいが水の泡だ。

 

俺はしばらくシャドウを見つめたまま黙り込んだ。

タバコに火をつけて空を仰ぐ。

 

「サム、夜までに答えを出してくれ」

 

俺が悩んでいるのを察したシャドウは、そう言うとアジトの部屋の中に入っていった。

 

「さて…どうするかな…」

 

 

タバコを地面に落とし、俺はそのままモーテルへと向かう。

久しぶりに母ちゃんと会う為だ。

家はまだ建て直していないので、母ちゃんはまだモーテルで生活しているのだった。


俺がモーテルに着くと、母ちゃんは部屋でテレビを見ていた。

よかった。たまたま仕事には出ていないようだ。

 

「あら、サム!おかえり!」

 

『おかえり』……そう…いつでも母ちゃんのいる場所が俺にとっての『おかえり』の場所なのだ。

例え家でなくても母ちゃんさえいれば『ただいま』と言える。

 

今となってはたった二人きりの家族。

しかし俺はギャングのリーダーだ。

当然親が喜ぶようなものではない。

 

母ちゃんは近所の噂などで俺が何をしているのかを知っているはずなのに、ギャングの話には一切触れない。

家が燃えたのも、クレイが死んだ事だって、元を辿れば俺のせいだ。

だが母ちゃんは怒らない。

責めもしない。

 

それどころか俺への心配や、愛情ばかりをくれる。

 

「ただいま」

 

「家もそろそろ建て直してあげられそうよ。ママは仕事を張り切って頑張ってるからね!」

 

まただ。俺が燃やしたも同然の家を建て直す為に頑張る強さ。

なんだろうかこの気持ちは。

逆に寂しい。

いっそのこと、「あんたのせいで家がなくなって、そのおかげで仕事をしすぎて疲れてる」とでも言って欲しいのに。


しばらく母ちゃんと話していると空が暗くなってきた。

アジトに戻らなくては。

 

「そろそろいくよ」

 

「あらそう?サムは忙しいのね。気をつけてね…」

 

母ちゃんは俺を抱き締めるとキスをしてくれた。

なかなか放してくれない。

 

「行かなきゃ」

 

「OK。サム、いってらっしゃい」

 

別れ際、母ちゃんは俺が見えなくなるまで手を振っていた。

 

 

アジトに到着した。

まだウォーリアーは出発していないようだ。

車がガレージに何台か停まっている。

 

 

いつの間にかシャドウが目の前にいた。

敷地内の誰もいない所にシャドウと二人で歩く。

 

「サム、答えは?」

 

「まだ分からない」

 

俺の頭の中に心配そうな母ちゃんの顔が浮かんだ。

 

次にウィザードの呆れた顔。

 

最後にマーク達が雄叫びを上げながらクリップスに突っ込んでいく姿が浮かんだ。

 

「相手の人数は残り二十五人から三十人だ。俺達のウォーリアーとほぼ互角。あと一押し、決定打が欲しい」

 

シャドウは急にそんな話を始めた。

今のままでは勝てるか分からないということか。

 

 

 

 

 

 

 

「分かった。行こう」

 

俺は母ちゃんの顔を頭から消した。


俺はウィザードにバレないように途中の道でウォーリアーから拾ってもらった。

ウォーリアーの出発前に一人で歩いてアジトを離れたのだ。

 

 

しかし…

 

 

 

 

 

車内にはジャックとコリー、スノウマン、シャドウ、俺、そしてウィザードがいた。

 

ほかの奴等は別のバンに乗っている。

今回は五台で向かっていた。

 

「サム、やっぱりそんな事だと思ったぜ」

 

まさかウィザードの呆れた顔をこんなに早く見ようとは思わなかった。

奴は俺が戦闘に行くのをなぜか見越していたのだ。

おそらく俺がアジトにいなかったせいだな、と思った。

 

シャドウは「あーぁ…」と言ったような微妙な表情だ。

 

しかしウィザードがついて来ても俺が行く事に変わりはないので、ウォーリアーの士気に支障は生じないはずだ。

 

「さっさとクリップスをブチ殺して、騒ごうぜ!」

 

助手席で足を前に高々とダッシュボードに乗せているジャックが言う。

 

「テリトリーを広げるのは明日以降だな。まずは奴等を根絶やしだよ」

 

運転しているコリーが生き生きと言った。


 

隣町についた。

グルグルと町を流しながら奴等を探す。

 

「さーて、可愛いクリップスはどこかな?早くでておいで」

 

スノウマンがバンダナを口に結びながら言った。

全員赤いバンダナで口を覆う。

 

一時間ほどウロウロしたが、なかなか見つからない。

みんな苛立ち始めた。

 

「なんでいねぇんだよ!?」

 

当然ジャックがはじめに爆発する。

 

ピリリリ…

 

俺のポケベルだ。

ガイからだった。

 

『サム、ヤバイ。アジトに戻れ』

 

「ん?どういう事だ?」

 

「どうした、ニガー?」

 

ウィザードが俺の様子に気付いたようだった。

 

「ガイが俺達にアジトに戻れってよ。何かあったのか…」

 

すぐに俺のポケベルがまた鳴った。

今度はライダーからだ。

 

『アジトが攻撃されてる。三人じゃ、もたない』

 

「なに!?」

 

今アジトにはジミー、ガイ、ライダーだけだ。

かなりまずい。

 

また前と同じようにクリップスの偵察員に出し抜かれたという事だ。

アジトの場所も割れている。

 

「コリー!アジトに引き返せ!」

 

俺は叫んだ。


みんなに理由を話す。

コリーは急いでアジトへ戻り始める。

 

だがここで大きなミスがあった。

 

他の四台は最後尾にいた俺達の帰還に気付かなかったのだ。

当然ポケベルは、電話がない為にこちらからは使えない。

 

マークやクリックとはぐれてしまった事になる。

 

 

 

 

車から覗くと、アジト前には早くも警察やギャラリーが大勢集まっていた。

 

クリップスは何人か捕まっているようだ。

 

おそらく監視を強化していた警察が俺達の町での発砲には敏感になっていたからだろう。

 

残りのクリップスの奴等とB.K.Bの三人は見当たらない。

上手く逃げたようだ。

おそらくアジトはほとんど無傷だが、警察の捜査が入った今、もう使えない。

備品もすべて押収されるだろう。

 

「この場は離れよう」

 

俺がそう言って、とりあえずコリーは車を出した。

 

途中でライダーから再び連絡が入る。

 

『今、俺の家だ』

 

すぐにライダーの家へと進路を向けた。


 

ライダーの家の前についた。

 

「すまない…守りきれなかった」

 

ライダーが謝る。

ジミーとガイも無事にライダーの家にいた。

 

「仕方ないさ。みんな生きてるだけマシだろう」

 

スノウマンがライダーの肩を優しく掴んで言った。

残りの仲間も頷いている。

 

「マーク達は?」

 

ガイが言った。当然の質問だ。

 

「俺のポケベルに連絡を受けたから、戻ったのはこの車だけなんだ。

急いで戻ってきたし、一番後ろにいたから他の奴等は気付いてない」

 

するとガイが慌ててこう言った。

 

「じゃあ…俺達のアジトを攻撃した後、戻って行ったクリップスと鉢合わせになるぞ!」

 

俺は戦慄した。

 

「コリー!また戻るぞ!」

 

俺が叫ぶと同時にライダーがバイクにまたがっている。

 

「サム、全員で行こう。心配だから先に行くぜ」

 

ガイとジミーもうなずいた。

さすがに慎重派のガイも動いた。

ガイは俺達の車に乗り、ジミーはライダーの後ろにまたがった。

 

ライダーのカワサキは先に発進し、あっという間に見えなくなる。

 

「さあ急ごう。飛ばすぞ」

 

コリーがそう言った。


 

隣町の入口あたりは、すでに騒がしかった。

やはりもうB.K.Bとクリップスはぶつかっているようだ。

 

「クソ…今日はなんてついてねぇんだ!

サム!クリップスは皆殺しだぜ!絶対にな!」

 

ジャックがイライラと怒鳴った。

 

騒ぎの中心へと近付く。

入口の大通りから、少しそれた裏路地だ。

 

どうやら撃ち合いは少なく、ほとんどの連中が殴り合っている。

 

クリップスは俺達のアジトを襲った後なので弾はあまり残っていないのだろう。

こちらもE.T.以外のウォーリアーはほとんど銃を持っていない。

急激なメンバー数の増加で、ウィザードの武器の仕入れが少し遅れているからだった。

 

「おらぁ!」

 

マークの怒号が聞こえる。

奴はバタバタと敵をなぎ倒しているが、敵も立ち上がっては再び向かって行っている。


 

パアン!パアン!

 

クリックが発砲しているようだ。

クリップスが二、三人倒れている。

 

だが、それはB.K.Bも同じで、まだ弾が残っているクリップスから撃たれたらしく、赤い服を来た仲間達が何人か倒れている。

 

奮闘しているライダーやジミーの姿も見えた。


「コリー!車を寄せろ!ドライブバイしてやろうぜ」

 

ジャックがコリーに叫ぶ。

ドライブバイとは、車を横付けして車内から発砲する事だ。

 

「任せて!全員窓を開けて銃を構えろ!

一回突っ切って、それから引き返して寄せるよ!!」

 

コリーはクリップスを何人か車ではね飛ばしながら、一度みんなの前を通り過ぎた。

 

俺達の到着にB.K.Bのメンバー達の大歓声が聞こえる。

 

すぐにUターンして車が当たらなかった奴等の横でスピードを落とす。

 

「撃て!」

 

パアン!パアン!パアン!

 

クリップス達が弾を浴びて後ろに吹き飛ぶ。

 

「よし!早めに引き上げるぞ!マーク!お前らも早く車を出せ!

警察が来る前に撃たれた仲間を車に乗せるんだ!」

 

俺が大声で叫んだ。

みんなは言われた通り、引き上げの準備を始める。

 

生き残っていた六、七人前後のクリップス達は劣勢となり、逃げ出した。

 

運良くパトカーは来ない。

多くが俺達のアジトの処理に回っているせいだろう。

対応がかなり遅れているようだ。

 

大きな抗争が一夜に二度も起きる事など、誰も予想できなかっただろう。


 

俺達は次の日、地元の公園セントラルパークに集まった。

アジトには戻れないのでここに集まったのだ。

 

 

全員が泣いていた。

 

撃たれた仲間は十人。

そのうち八人は死んでいた。

殴られて死んだ仲間も一人。

 

昨日は全員を車に乗せてきたので、そのままケガ人は病院へ送った。

そして先程、昨日の抗争で死んだ人数が医者から知らされたのだった。

 

隣町のクリップスとの抗争は事実上終結した。残るは小競り合いだけだろう。

だが、得たものは少なく、失ったものが大きすぎた。

九人の仲間の命、アジト…

一夜にして消え去った。

 

B.K.Bのメンバーはこの時、入院している仲間を含めて二十二人。その内、この場にいる二十人の誰もが気力を無くしていた。

 

「みんな…つらいだろう…でもB.K.Bは、まだ終わらない。ここからまたよみがえる。

なぁ?みんな…」

 

俺はリーダーとしてみんなを元気づけようと、涙を拭いながらつぶやいた。

 

「サム…無理しなくてイイんだぜ…」

 

ライダーが泣きながら抱き締めてくれる。

 

俺はついに我慢できずに泣き叫んでしまった。

B.K.Bは俺の第二の家族だ。俺は仲間をこんなにたくさん、しかも同時に失った事が本当に辛かった。


こんなに泣いたのは、俺が親父を殺した時にクレイと二人で泣いた時以来だ。

 

だが、そうやって俺が泣いているのを見て、逆にB.K.Bのメンバー達は正気に戻り始めたようだった。

 

「見ろ!俺達のリーダーは仲間の死をここまで悲しむ!普通、トップってのは、クールで感情を表に出さない!

こんな多感なリーダー見た事あるか!?最高なホーミーじゃねぇか!俺は死ぬまでサムについていくぜ!」

 

涙で汚れたヒドい顔でマークがガハハと笑った。

 

次第に「俺も俺も」とE.T.からは同調の声が上がっているのが聞こえてきた。

 

クリックが叫ぶ。

 

「どんなに悲しくても、イレブン・トップは誰一人としてB.K.Bを降りない!どうするんだ新入り達よ~!?」

 

すると新入り達も口々に叫び出す。

 

「B.K.B 4 life!」

「サム!あんたこそリーダーだ」

「まだ終わらねぇ!」

 

俺はさらに涙が溢れてきた。

 

 

「この、マザーファッカーどもがぁ…っ!」

 

俺は涙を流しながらも精一杯笑顔で叫んだ。

 

 

全員、見れたものではない汚いツラだった。


この時、俺にもついにニックネームが付く事になる。

 

『OG-B』

 

Bはbloodの頭文字らしい。意味を考えると、俺がOGかどうかは疑わしかった。

だが俺の仲間を想う気持ちが、コイツらにとってはOGに匹敵する強さだという思いがあったのかもしれない。

そのニックネームを断るのは野暮だと思い、俺は喜んでその名を名乗る事にした。

 

 

 

 

… 

 

 

 

 

死んだ仲間達の葬儀はもちろん同じ日に行われているので、すべての場所に行くのは不可能だった。

それでその日は逝った仲間への弔いと、B.K.Bのさらなる結束の強化の意味を込めて、そのままセントラルパークで宴会をすることになった。

もちろん公園なので野外だ。

 

死んだメンバーの写真を全員分用意して、停めてある車に張り付ける。

 

そして俺は仲間をその場に残して、買い出しに別の車で行くことにした。

シャドウとウィザードも一緒だ。

 

 

「昨日は大変だったが…こうしてE.T.は全員生きてる。まだB.K.Bは死なないぜ」

 

シャドウが言った。

確かにあれだけの抗争でE.T.が全員無事なのは奇跡的だ。


「E.T.の十一人はB.K.Bの土台だ。誰か一人でも欠ければ大きく揺らぐ。そうならないように気をつけようぜ」

 

運転しているウィザードが言った。

ここでふいに俺はウィザードにきかなければならない問題を思い出した。

 

「そういえばウィザード。話は変わるが、武器やドラッグの仕入れ先にも連れて行ってくれないか?ドコなんだ?」

 

「いきなりだな。まぁイイ。

…レイクのマリファナと同じように、武器はコンプトンブラッズのファンキーから時々流してもらってる。ドラッグの仕入れ先は…行かなくてもイイと思う」

 

ウィザードはそう答えた。

シャドウはもちろん初耳の話なので会話の内容に興味があるらしく、黙って聞いている。

 

「なぜだ?」

 

俺が静かにたずねた。

 

「ドラッグは滅多に仕入れないからな。高くてあんまり買えないんだ」

 

「そうか…相手は誰だ?」

 

少し時間があいた後、ウィザードはつぶやくように言った。

 

「…マフィアだ」


 

俺達がビールを買って公園に戻ると、早速宴会が始まった。

 

「B.K.Bに!そして死んでいった誇り高きホーミー達に!」

 

全員が復唱する。

みんな楽しんではいるが、いつものように騒いではいない。

 

死んだ仲間への弔いもあるので、みんなあまりハメを外さないように心掛けているようだ。

 

古いラジカセをスノウマンが持ってきていて、そこから死んだ奴等が大好きだった曲が次々に流れてくる。

 

ジミーがB-walkを踏んでいる。

よく見ると足で「R.I.P.」の文字を書いていた。

何とも器用な奴だ。こんな事をする奴は初めて見た。

みんなからは拍手が起こっている。

 

B-walkとはblood-walkというブラッズ独特のステップだ。本来は、殺したクリップスの血で文字を描きながら踏む。ある意味ダンスのように見える儀式だ。

 

クリップスは逆にブラッズを殺した時にC-walkと呼ばれるステップを踏む。

このステップはストリートギャングの象徴で、もし敵対するチームに目撃された場合は、ステップを踏んでいるのがたとえ一般人だとしても殺される可能性がかなり高い。

 

そのおかげで地域によってはこのステップを禁止している所もある。

俺達の地元はC-walk絶対禁止区域に指定されていた。

もちろん俺達がブラッズだからだ。俺達の地元でC-walkを踏む奴は絶対に許せない。


ジミーのウォークを見ながら俺はウィザードの取引き相手の事を考えていた。

 

マフィア。未知の世界だ。

 

ブツの取引きには場所の指定があり、必ず一人で行かなければならないらしい。

 

単純なギャングとは違い、頭がかなりキレる連中だ。

抗争を嫌い、誰かを殺す時はシンプルに殺しだけを行う。

 

緻密、周到、迅速で的確。

裏の仕事のプロといったイメージ。

 

金の取り回しが得意で、警察とも上手く付き合う。

 

組織図はきちんと統率されている。

…といったところだろうか。

 

とにかく次のドラッグの仕入れには二人で行くように取り計らってくれるらしい。

 

ウィザードには、どうやってマフィアと知り合ったのか、きかなければならない。

 

 

あっと言う間に夜は更け、みんなは解散する。

俺はウィザードの部屋に泊めてもらい、マフィアの話を聞くことにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ