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B.K.B 4 life  作者: 石丸優一
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クリップス。

すべてを青ざめさせる者達。

ビショップのメンバーがまた元の位置に歩いていった。

するといつの間にかイライラも体の震えも無くなっていた俺に、今度はブラックホールが近付いてきて話し掛けてきた。

 

「B…マフィアクリップが見当たらなかったんだけど」

 

「あぁ。彼等は自分の道を貫くそうだ。加勢は期待できない」

 

当初、ブラックホールはコンプトンでの説得についてくる予定だったが、結局はウォーリアー達と共に武器集めを行なっていたのでコンプトン・マフィア・クリップがどうなったのかを知らないのだ。

 

「そうなのか?残念だね。デリックやスパイダーは元気そうだったかい?」

 

「スパイダーは元気そのものだったぜ!なんせ俺に向けて弾を撃ち込んできやがったからな!」

 

これはもちろん俺の横にいるシャドウのセリフ。急に横から割り込んできたのだ。

今となっては笑い話らしく、本人は大笑いしている。

 

「マジかよ!大丈夫なのか?」

 

「もちろんだ。外れたからな」

 

「よかったなぁ。それで、デリックは?彼も元気か?」

 

再びブラックホールがきいてきた。

 

「デリックは…少し前に死んだんだ。惜しい男を亡くした」

 

俺はうつむいて、地面を見ながらそう言った。


「マジかよ…」

 

ブラックホールが悲しそうな表情になった。今にも泣き出しそうだ。

奴はデリックとはスポーツの共通の話題もあったりして、特に仲良くしていたのだから無理もない。

 

「勇敢で見事な最期だったらしいぜ。マフィアクリップの連中の誇りだろうよ」

 

シャドウが言った。

死に様には良いも悪いもないし、死んでしまったら一緒だとスパイダーは言っていた。

だが、仲間を守って死んだデリックの事をマフィアクリップの連中はずっと忘れないだろう。

 

「あぁ。きっとそうに違いない」

 

俺もシャドウに同調した。

 

 

その時、ブラックホールからの返答よりも先に近くから怒号が聞こえてきた。

 

「ふざけんな!てめぇだけはブッ殺してやる!」

 

「そっちこそくたばりやがれ!」

 

俺達がそちらを向くと同時にガイが走り寄ってきた。

 

「B!早速問題みたいだぜ。リーダーの出番だ」

 

ギャング達はごちゃごちゃに並んでいると思っていたが、よく見ると始めからブラッズとクリップスでキレイに左右に分かれていたようだ。

俺は怒鳴り合っている奴等を止めるべく、そこへ向かった。


「やめろ!」

 

俺がまず奴等の間に割って入った。

B.K.Bのホーミー達も全員ぞろぞろと俺の後ろに続き、ブラッズとクリップスの間に俺達数十人での壁を作った。

だがそれでも本人達は罵声をあびせあっている。

どうやら言い争いになっているセットはブラッド、クリップ共に一つのセットらしい。

 

「サム、バウンティハンターとケリーパークの連中みたいだ」

 

シャドウが瞬時に二つのギャングセットを言い当てた。

本当に助かる。

 

バウンティハンターはワッツ地区の武闘派ブラッズギャング、ケリーパーク・クリップはコンプトンに昔からある古いセットだ。

N.W.AのEazy-EやMc.Renの出身セットでもあるため、このセットがあったからこそウェストコーストヒップホップや西海岸のローライダーカルチャーが世に広まったともいえる。

 

「バウンティハンター?どうして…」

 

俺に一つの疑問が生まれた。

ワッツ地区はコンプトン市ではなく、ロサンゼルス市なのだ。

コンプトンの南西…すぐ隣なのだが、ワッツのセットがなぜここにいるのか分からなかった。


とにかく俺が仲裁に入る。

 

「静まれ!いい加減にしろよ、お前達!」

 

なかなかこの場は収まらなかった。

他のホーミー達も静まるように呼び掛けていたが効果がない。

周りのブラッズやクリップスからも野次が飛んで、バウンティハンターとケリーパーク・クリップをはやし立ててるのだ。

 

「貴様らぁ!セット同志でちんけな言い争いがしたいんなら帰りやがれ!」

 

一際大きな声が響き渡った。

マークだ。額に血管の青筋を浮かばせて叫んでいる。

 

「サウスセントラルのギャングスタクリップを叩かなきゃならねぇ大事な時に、ごちゃごちゃ小せぇ問題を持ち込んでくるんじゃねぇよ!アスホール共が!」

 

すると嘘のように罵声は消えた。

だが今度はあちらこちらから口々に「ありゃ誰だ?」という声が上がっている。

 

「おい。何があった?」

 

俺はそんな周りの声を無視して近くにいたケリーパーク・クリップのメンバーに言い争いの理由をたずねた。

マークが言うように本当に帰ってもらっても困る。ささいな問題でも理由くらいは知っておきたかった。


「どうしたも何も、つっかかってきたのはバウンティハンターだぜ。俺達は何にもしちゃいない」

 

一番俺の近くにいたクリップスがこたえる。

黒いチェックシャツを着た男だった。

 

「そうなのか?」

 

俺がそう言うと同時に、ブラッズサイドから怒りの声が上がった。

 

「嘘つくんじゃねぇ!」

 

「きたねえぞ、ケリー・マザーファッキン・パーク・クリップ!」

 

俺にはどちらが嘘をついているかなんて判断もできない。

そこでこう言った。

 

「どっちが仕掛けたなんてどうだってイイ!

重要なのは今から共に戦う『同志』と手を取り合うって事だろ!」

 

俺はみんなに聞こえるように、できる限り大きな声を出した。

 

「ケンカなんか後からいくらでもできるんだ!まずはサウスセントラルにいる共通の敵を倒す事だけを考えろ!助け合え!

戦いの最中でもお前達はいがみ合うつもりか!」

 

クリップス側から「チッ」という誰かの舌打ちが聞こえたが、それ以上は誰も何も言わなかった。

結局言い争いの理由は分からなかったが、これでイイんだと俺は自分に言い聞かせる。

 

クリップス…元々は敵なので、やはり俺達と同じブラッズよりまとめるのは大変なようだ。

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