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B.K.B 4 life  作者: 石丸優一
28/61

T.R.G n A.B.Z

アジアンの誇り。奴等だけの戦い。

その時B.K.Bは何を思う。

それからも、俺達は売春の仕事だけを頼りに細々と暮らしていた。

だが電気も車も服もある。

そして何より仲間がいる。

 

辛いと思う事ばかりでは無かった。

 

 

この日はロブを含めて、三人のT.R.Gが俺達のアジトに遊びにきていた。

B.K.Bは全員そろっている。

 

「よう、OG-B!なかなかイイ感じのアジトじゃねぇか!

俺はお前達が穴でも掘って暮らしてるのかと思ってたぜ!」

 

ビールを片手にロブが冗談を言う。

ありがたい事に、酒は奴等が買ってきてくれていた。

 

あまり贅沢ばかりもしていられない俺達にとって、それは大きな事だ。

 

「穴か~。それよりハッパありがとう~」

 

クリックが車椅子の上で煙をくゆらせる。

 

そう。ロブ達は数本、クロニックをくれたのだ。何てイイ奴等だろう。

 

当然、クリックは機嫌がイイわけだ。

 

「なんだか色々持ってきてくれてありがとう。何かイイ事でもあったのか?」

 

俺がビールを一口飲んでたずねた。

 

「あぁ、気にするな。初めてたずねる時ぐらい土産を、と思ってな」

 

俺達にはよく理解できない概念だったが、とにかくもらえるものはもらう事にした。


「ロブ、ここだけの話なんだが…ヤクの仕入れはどうしてるんだ?」

 

みんな酔って陽気になっている中、俺は極めて冷静に奴にたずねた。

 

「なんだ?ブツを流してないのか?B.K.Bはどうやって生活してるんだよ?」

 

「売春とケチな盗みだけさ」

 

俺は呆れたように放った。

ロブが笑う。

 

「そうか。まだ日が浅いから無理もないな。でも俺達の仕入れ先を教えるのは食えない話だぜ、B。

仲間ではあっても兄弟分じゃないからな」

 

俺は心の中で舌打ちをした。

なかなかガードが硬い。

 

だが、ロブはすぐにこう言った。

 

「サム、今から言うのはここだけの話だぜ。

酔っ払ってつい口がすべっちまって言うけどよ…?…港…だ。

密輸船が水曜と金曜の夜に一隻ずつ入る。メキシコ国籍の青い船だ。

その内、T.R.Gの仕入れ先は金曜の船…水曜の客は個人の密売商、ソイツから横取りしろ」

 

ロブはニヤリと笑った。

俺はこの時ほどコイツに感謝した事はない。

 

「ありがとう、『ニガー』」

 

俺はロブにハグをする。

奴は最後に「売りは俺達とは必ず別の場所を使え」と言うと、どんちゃん騒ぎの中へと戻っていった。


 

「よう。イイ話を聞けたぜ。今夜の仕事は休みだ」

 

T.R.Gが帰ると俺はホーミーを集めて言った。

 

「なんだよ?仕事を休んでまで話す内容か?」

 

シャドウがきいてくる。

あまり酔っ払ってはいないようだ。

 

他のホーミー達の数人はわいわいと騒ぎながら「なんだなんだ」と俺をはやし立てている。

 

そんな中ジャックが言った。

 

「ブツの話だな、サム?」

 

奴は当然酒を飲んではいない。

もしかしたら俺とロブの話を聞いていたのかもしれなかった。

 

「マジかよ!ついに~!」

 

クリックが叫んだ。

顔いっぱいに笑みがこぼれている。

 

「あぁそうだ。みんな、ロブに感謝しろよ」

 

「で?場所は?」

 

マークが瓶ビールを飲んで言った。

見た感じほろ酔い気分のようだ。

 

「港だ。水曜の夜に密輸船が入るらしい。

そのブツを取り扱ってるのは個人の密売商らしいんだが、ソイツをブチのめして俺達がそのブツを代わって仕入れる事ができる」

 

「なるほどな。そりゃ面白い。やってやろうぜ」

 

ジャックが指を鳴らしながら言った。


「奴がブツを受け取ったところを横取りしてびびらせてやろうぜ」

 

水曜の夜。

俺達はバン一台で港に乗りつけた。

許可証とやらは他のトラックからとりあえず盗んだのだが、あっさりと警備員はゲートを開けてくれたのだ。

俺達は手薄な警備に驚かされた。

 

今回はクリックとライダー、ホーミーの二人が留守番だ。

 

「そりゃイイがよ、マーク。まずは港のどこで取り引きがされてるのか、どの船がそうなのかを探さないとな」

 

シャドウが冷静に言う。

港は予想以上に広く、夜は夜でも何時に船が来るのかも分からない。

だが船は予想以上に早く見つかった。

 

青いメキシコ国籍の船が一隻しかいなかったのだ。

小さな船だった。

 

二人の作業員がクレーンでコンテナ入りの荷を下ろしている。

そのたくさんの荷物の中にブツが混じっているはずだ。

 

「あとは密売商のヤロウが現れて取り引きが始まるのを見届けて、追跡するだけだな」

 

「あぁ。港で騒ぐと仕入れができなくなる危険性があるからな。奴の帰り道でやるぞ」

 

ジャックが言ったので、俺はそう返した。


俺達はかなりの時間待った。

 

バンの中が息苦しくなってきたので、空気の入れ替えの為にシャドウがドアを一つ開ける。もちろん船からは見えない方のドアだ。

 

「よう。全然来ないな。ロブに騙されたか?」

 

マークがつまらなそうに言った。

どこに隠し持っていたのか、大きな板チョコを食べている。

 

その時だった。

 

「お客さんだぜ!」

 

ジミーが指差す。

一台のフルスモークのキャデラックが船の近くに停車して、中から一人のチビな男が出てきたのだ。

小太りでいかにもイイ暮らしをしてそうな男だ。ラフなスポーツジャージを着ているように見える。

うす暗くて、顔までは見えなかった。

 

ソイツは作業員のウチの一人からボロボロの麻袋を受け取るなり、当たり前のように札束をいくつか手渡す。

そしてトランクに袋を放り込むと、作業員には目もくれずにキャデラックに乗り込んで発進した。

 

「アイツが密売商だか分からないが、そんな雰囲気はあるな。つけるか?」

 

マークが聞いてきたので俺は静かに頷いた。


距離を開きすぎず狭めすぎず、俺達はキャデラックを尾行する。

港から出ると、ソイツは海岸沿いに車を走らせた。

 

「おい、このまま行くとA.B.Zのテリトリーに入っちまうぜ」

 

ハンドルを握るマークが言った。

 

「そうだな。人通りも少ないし、そろそろやるか」

 

俺の言葉でマークはオンボロシェビーをキャデラックの前に寄せて停車させた。

バンダナで口を覆い、勢いよくホーミー達が飛び出す。

 

「おらぁ!窓を開けろ!」

 

ジャックがバットを片手に運転席を拳で叩く。

ドアが開き、中から両手をを上げたチビの男が出てきた。

アジアンだった。

 

「な…なんなんだ!いきなり!」

 

ソイツを車から出して地面に突っ伏させる。

俺がトランクを開けると、ジミーが麻袋を手に取った。

 

「…!!こりゃウィードじゃねぇぞ!コカインだぜ!」

 

ジミーが叫ぶ。

クロニックに比べると、少々さばくのが面倒だが仕方ない。

 

「おい、お前。悪いがこのブツの仕入れは俺達が引き継がせてもらうぜ」

 

シャドウが言い、みんなで男を袋叩きにする。 

おそらく死んでしまっただろう。

 

…奴を海に投げ込み、キャデラックを奪って俺達は逃走した。


アジトについた。

クリックが車椅子で待ち焦がれていたかのように飛び出してくる。

 

「よう~ハッパは手に入ったか~!お?なんだこのキャデラック~」

 

「まぁ、落ち着けよ」

 

最初にバンからおりた俺が言った。

みんな車を止めアジトに入る。

麻袋をテーブルにドンと置いた。

 

「まず、密売商が扱ってたのはクロニックじゃねぇ…クスリだ。

ウィザードの言葉を思い出せ、ホーミー。

コイツは使い方によっちゃ天国にも地獄にも変わるブツだ。みんな扱いには充分注意しろよ」

 

俺は久し振りに取り扱うドラッグを目の前にしてホーミー達に言った。

 

昔、ヤクをさばいていた時は地元を汚染する危険性を考えて主力がクロニックだったので、ドラッグは補助的に少量しか扱っていなかった。

今回は地元ではないし、ドラッグのみをさばいても俺達に影響は少ないだろう。

 

「クロニックは無いのか~…」

 

クリックは落ち込んでしまったようだ。

 

「おいおい!クロニックが手に入ってたとしても、お前の物じゃねぇだろ」

 

ジャックが横からクリックの頭を軽く小突いた。


 

当然キャデラックはさっさと個人経営のショップに安値で売り飛ばした。

ブツは売春に使っているビーチの路地裏でさばく。

 

そんなに売上はよく無かったが、十一人にとってはさらにイイ暮らしができるようになったのは間違いない。

 

仕入れ先のメキシカンの作業員は別に客が入れ替わろうと知った事ではないらしく、今までと変わらず俺達にドラッグを流してくれた。

これはシャドウには予想済みだったらしい。

 

そんなある日、シャドウがアジトに情報を持って帰ってきた。様子が尋常ではない。

 

「サム!やべぇぞ!ロブが俺達に教えた密売商、実は…ブツの一部をA.B.Zに流してた奴らしいんだ!

奴等は『T.R.Gが殺った』と思い込んでやがる!このままじゃアイツらぶつかるぞ!」

 

「なに!?」

 

俺は持っていたビール瓶を床に落とした。

鈍い音がしてガラスが散らばる。

 

「何でロブは俺達に言わないんだ!」

 

俺はガラスを無視して立ち上がった。ディッキーズの上着を羽織る。

 

「それが…T.R.Gの奴等は『B.K.Bとは関係ない』って言って聞かないんだ」

 

「そんなわけねぇだろ!行くぞ!全員集めろ!」

 

俺はシャドウに指示を出すと一足先にボロスクーターでT.R.Gのテリトリーに向かった。


バン!

 

奴等の溜まり場である部屋のドアを開ける。

中ではT.R.Gのメンバー数人がテーブルを囲んでドミノをしていた。

 

「ん?おいおいB.K.B、ノックぐらいしてくれよな。プッシーとお取り込み中だったらどうするつもりだよ?」

 

一人が俺に向かって言った。

奴等からどっと笑いが起こる。

 

「そんなことよりお前達、B.K.BのせいでA.B.Zと揉めてるんだろ!?どうして言ってくれないんだよ!力になるぜ」

 

「は?」

 

奴等はわけが分からないという顔をした。

 

「だから…!!」

 

「何言ってるんだ、OG-B?奴等との揉め事は今に始まった事じゃねぇだろ?

それにB.K.Bが関わっての揉め事なんか俺達は聞いてないぜ?」

 

また一人のメンバーが言う。

ということはシャドウの情報が間違っているのだろうか。

 

「まあ座れよ。一緒にドミノやろうぜ。1ドル勝負だ」

 

俺は納得いかないままソファに座らされる。

 

その後、二十分ほどした頃にB.K.Bのメンバーとロブが部屋に入ってきた。


「よう、サム。どうやら勘違いしてるみたいだな」

 

ロブがソファにドカッと座り、テーブルに足を乗せた。ドミノが散らばる。

ホーミー達は部屋の入口付近にずらりと並んだ。

 

「今、入ってくる前にこのB.K.Bのホーミー達に聞いたぜ?

別に俺達は、A.B.Zと揉める事なんかいちいち気にしてない。それにお前達のせいだなんて思ってもない」

 

「それでもやっぱり俺達に流した情報が奴等と揉めるきっかけにはなったんだろ?」

 

「もしそうだとしても俺が勝手にしゃべっただけの事だ。なーに、B.K.Bが気にする事じゃないさ」

 

ロブが言うとT.R.Gの連中も「お前達には別に関係ないぜ」と言い出した。

 

「さぁさぁ、帰った帰った!別に全面抗争になるような事じゃねぇだろ?」

 

ロブは手で俺達を追い払うような仕草をした。

やはりコイツらの考え方はよく分からない。自分が教えた情報だからといってなぜすべて自分で背負い込むのだろうか。

俺達は手助けをしたいと志願しているのに。

 

「おい、本人が『気にするな』って言ってるんだからいいじゃねぇか。帰ろうぜみんな」

 

ジャックが言ったので、俺も仕方なく引いた。


 

「確かに腑に落ちないが…もう気にするなよ、サム」

 

アジトに戻ると、ライダーが俺に言った。

みんなも気にしていないようだ。

 

「さ、飲もうぜ~」

 

クリックが車椅子でクルクルとターンして言った。

そのままいつものように乾杯して眠る。

 

…だがこの二日後、問題が起きた。

 

その日俺は、ジミーがどこかで拾ってきていたテレビに電気をつなぎ、アンテナを立ててぼんやりと画面を見ていた。

この時アジトにいたのはクリック、ジミー、マーク、俺だ。

 

『…今朝早くにロングビーチでアジアンギャングが銃で撃たれ二人死亡、四人が怪我を負いました。

被害を受けたのはT.R.Gと名乗るギャングの構成員で、敵対しているギャングとの何らかのトラブルがあったのではないかと見て、警察が捜査にあたっています。次のニュースです…』

 

…!!

 

四人は目を見合わせた。

 

「おい、こりゃマズいな。やっぱりB.K.Bが殺った売人のブツはA.B.Zにとっちゃ大事なもんだったみたいだぜ」

 

マークが言う。

 

「こりゃ大変だぜ!サム!早くみんなを集めようぜー!」

 

ジミーがトラブルに興奮して、はしゃぎながら言った。


四人でT.R.Gのテリトリーへと向かう。

 

全員に集合をかけたが、結局他のメンバーには売春とヤクの販売の仕事を任せたのだ。仕事を休みすぎてもいけない。

 

ヤクを手に入れてからというもの、この道を何回往復しているか分からない。

 

「向かうのはイイが…どうするんだよ?」

 

運転を任されたマークが言う。

 

「どうって…もちろん奴等に加勢させてくれるように頼むさ。仲間のピンチをほっとけるかよ?それに原因は俺達B.K.Bなんだからな。A.B.ZとT.R.Gがこうなった以上、奴等だって『no』とは言えないぜ」

 

「どうだか」

 

マークは鼻で笑った。

 

シェビーバンがT.R.Gのタグの前を通過する。

 

「ん…?」

 

テリトリー内に入り、アジトまではまだしばらく距離のある場所でT.R.Gのメンバーを発見した。

路肩に停めた車の近くで話しているようだ。ロブのアコードもある。

奴等は十人ほどいて、ロブも当然いた。

 

マークがバンを停めると奴等もこちらに気付き、ロブが一人で近付いてくる。

 

「サム、何回言わせるんだ?今すぐ帰るんだ」

 

俺が耳を疑うと同時にマークの「ほらな」と言う声が聞こえた。


「何言ってるんだ!?俺達は仲間じゃねぇか!手を貸したいんだよ」

 

「これは俺達とアイツらA.B.Zの問題だぜ。確かに最初に警察やA.B.Zから助けてくれた事には感謝してる。だがこれ以上は俺達自身で乗り切るべきなんだよ。たとえ、ぶつかるきっかけがB.K.Bにあったとしてもな」

 

ロブはクルリと後ろを向き頭の灰色のバンダナを巻き直すと、仲間の方へ戻っていった。

マークが車を出す。

 

「アジアンてのはよ、変なプライドや義理を重んじる人種なんだぜ。

重要な事は自分等だけでやりたいタチなのさ。まあ俺達みたいに『仲間とは助け合い、利用できる奴は利用する』人間にとっちゃわけわかんねぇ話だよな」

 

マークがつぶやいた。

 

プライド…

 

俺達はすべてを捨ててロングビーチに逃げてきた。

その先で出会った人間に俺達が失っているものを教えられた気がした。

 

「マーク、ジミー、クリック…」

 

「あん?」

「なんだ?」

「どうした~?」

 

三人が俺を見る。

 

「できるだけ早く地元へ戻って、B.K.Bの誇りを取り戻そうぜ…」

 

当然だ、と言うようにハンドサインが返ってきたのだった。


 

「…と、そういうわけだ。俺達の出番は無さそうだぜ」

 

仕事を終えてみんな帰ってきたところで、俺は話を切り出した。

 

「それはイイがよ。いずれはB.K.Bが売人を殺った事は必ず奴等に知れる。その対処を考えないとな」

 

シャドウが言った。

 

「何で知れるんだよ?売人は消したし、T.R.GもA.B.Zにタレ込んだりしないはずだぜ?」

 

ジャックが確信をついた。

ホーミー達も頷く。

 

「俺達の客だよ。そこからビーチでB.K.Bがヤクを流してる情報は客づたいに必ず伝わる。

今までA.B.Zが囲ってた客も少なからずこっちに流れるだろ?

 

奴等がバカじゃない限り『B.K.Bは俺達が今まで流してたヤクを売ってる』と気付くだろうな。

俺達の商売の開始時期もブツも当然合致するわけだしよ」

 

すごい。

その一言だった。ウィザードやガイがいない今、シャドウの知識は俺達にとって大きな助けとなる。

 

「それじゃ…どうしたらイイんだ」

 

「おいおい、頼りない言葉だな、B」

 

シャドウが呆れたような声を出した。


「だが今のB.K.Bに立ち向かえるほどの戦力はないぜ、シャドウ?」

 

「あぁ、そんなこと分かりきってる。奴等の矛先が全部こっちに向いたら終わりだ。

じゃあどうするかだが…

T.R.Gには悪いが、彼等を利用させてもらう」

 

シャドウは冷たく言った。

だが俺にはイマイチ意味が分からず、少し苛立って言う。

 

「T.R.Gをどう利用するんだよ」

 

「アジアンの誇りとやらを利用するのさ。『A.B.Zは、すでにB.K.Bが売人を殺った事に気付いてる』と嘘を吹き込む。

そうすりゃ奴等は『B.K.Bに被害が出る前に』と、自分達のプライドをかけてA.B.Zにぶつかっていくはずだ。

するとA.B.Zは当然やり返して抗争が激化する。

最後にはA.B.Zにとっちゃ売人を殺った奴なんてどうでもよくなってB.K.Bは無傷のままだ」

 

俺はシャドウに掴みかかった。

奴の襟を持って壁際に押しつける。

 

「よくそんなこと言えるな!ヤクを回してくれたロブ達にもっと感謝しろよ!」

 

俺は手を放して座った。

シャドウも軽く咳払いをして俺の隣りに座る。

アジトはしんとしてしまった。


「よう」

 

しんとした中、ライダーが遠慮がちに言った。

みんなは黒のタンクトップを着たライダーを見た。

 

「サムが言うように『T.R.Gは仲間だから抗争の時は手助けする。B.K.Bがヤクを奪ったのがきっかけならなおさらだ』ってのも分かる。

シャドウが言うようにT.R.Gをハメるのも気がひける。

だがな。抗争をあおろうが、あおるまいが奴等の衝突は昔から続いてるんだぜ?」

 

「何が言いてぇ」

 

テーブルに足を乗せたジャックがきいた。

上着を脱いで体中のタトゥーがあらわになっている。

 

「B.K.Bを一番に考えるはずのリーダーが、何でT.R.Gの事ばっか考えてるんだ?」

 

…!!

 

「ホーミー…昔、俺が売春の仕事をやるのを渋った時、やりたくなくても、汚れた事でもやるのがギャングスタだという事を教えてくれたじゃねぇか。

違うか?地元のホーミーの為なら他の仲間だろうと関係ないだろ」

 

俺はハッとした。

周りを見る。

みんな俺を見つめて答えを待っている。

 

「…分かった…。奴等をハメて抗争を見届けよう。B.K.Bの為に」

 

ホーミーの事を一番に考えた答えを出した。

 

 

俺はOG-B。

ブラッズギャング『B.K.B』のリーダーだ。

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