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B.K.B 4 life  作者: 石丸優一
23/61

trust

すべてが崩れた時、残るものはただ一つ。

俺は真っ白な天井を見つめる。なんだこれは…まったく体が動かない。俺は死んだのか。そうか…

まあ生きているにしろ、死んでいるにしろ俺達は最悪な二十一歳を迎えたわけだ。

 

ギャングスタクリップの連中とぶつかったあの夜…最後の辺りはまったく記憶にない。

 

 

…………………

 

「おらぁぁ!」

 

マークが先陣を切って突っ込む。

バットでクリップスをバタバタとなぎ倒し、道を切り開こうとしている。

それにジャックが続き、マークと共に仲間への突破口を開こうと奮戦した。

 

だがB.K.Bのホーミー達はあまりにも数が多いクリップスに阻まれ、なかなかマーク達に続く事ができない。

そのせいで逃げ遅れ、一人、また一人と仲間が倒されていくのが見える。

 

「ホーミー!マーク達に続け!」

 

俺が叫ぶ。だが喧騒にかき消されて俺の声は多くの仲間にまったく聞こえない。

 

誰かが俺の手を引いた。

 

ライダーだ。

 

「サム!早く逃げるぞ!このままじゃ全滅だ!…ぐあっ!」

 

ライダーが倒れる。後頭部をクリップスに殴られたのだ。

 

「ライダー!クソぉ!」

 

俺は泣き叫んだ。


「サム!急げ!お前は絶対殺られちゃダメだ!」

 

今度はジミーが俺の手を引っ張る。ライダーは倒れてぐったりと動かない。

近くでクリックとシャドウも倒されているのが見えた。なんてことだ…

 

マークとジャックはまだ数人のホーミー達と共に戦っている。

 

俺とジミーはなんとかその辺りまでたどり着いた。

 

パアン!

 

「ぐあっ!」

 

ジャックが腕を抑える。一発食らってしまったようだ。クリップスの奴等はすかさずジャックにバットを叩き込んで倒した。

 

「ドッグ!しっかりしろ!うぉぉ!」

 

マークがジャックが倒されているのを見て吠える。クリップスの奴等がマークの迫力に押されてひるんだ。

だがすぐに持ち直して再び襲いかかる。

 

三十人ほどいたホーミー達は、俺を入れても十人と残っていない。ほとんどやられてしまった。

いくらリーダーを倒したとはいえ、百五十人近くの敵にかなうはずも無かった。

 

「うっ!」

 

俺は頭に違和感を覚えた。そのまま視界がぼやける。

 

するとすぐに、隣りに倒れるジミーの姿と、マークが叫びながら駆け寄ってくる映像が見えた。

 

…………………

 

俺の記憶はそこまでだった。


「うぅ…」

 

俺はうめいた。

体の感覚がまったくない。

 

白い天井以外には何も見えず、一体俺達がどうなったのかも分からない。

 

「サムか…?うぅ…いてぇ…」

 

誰かの声…近くにいるようだ。

 

そうか。俺はベッドに仰向けになっているのか。

 

ということは…ここは病院か何かか?俺は生きていたのだ。

 

そう思った瞬間、体の感覚が戻った。

だが不運な事に、感じたのは激しい『痛み』だった。

 

「いてぇ…!うぅ…俺だよ。お前は…?」

 

「いてぇ…どうやら…これだけ無駄口が聞ければ俺達は大丈夫そうだな。

うぅ…頭打って俺の声を忘れたか?

…俺だ。マークだ」

 

「マークか!」

 

俺は体を起こそうとして激痛に襲われた。

 

「ぐあっ!」

 

「大丈夫か!?サム、俺も同じような状態だと思う…

体が…動かねぇんだ…いたた…」

 

「くっ…ここは?」

 

「多分病院だ」

 

マークも俺と同じように動けず、天井を見つめているのだろう。あるいは目を閉じているのか。それは分からない。

 

しばらくすると激しい痛みが少しやわらぎ、いつの間にか俺は眠った。


 

「ん…まだいてぇな…クソ…」

 

俺は目覚めた。どれくらい時が経ったのかは分からない。

 

「おい、マーク!いるか?」

 

「ん…?あぁ。どうした?」

 

俺は少し安心した。

姿は見えなくても、信頼できる仲間が近くにいる。この時のマークの存在は大きかった。

 

「体動くか、ニガー?」

 

「いんや。だが首から上は動くようになったぜ」

 

どうやらマークは多少周りを見渡せるようだ。

 

「じゃあ俺の事は見えてるのか?」

 

「あぁ。見える。部屋くらいなら見渡せる。やっぱここは病院みたいだぜ。

どうやら俺達助かったんだな…」

 

俺は不思議に思った。

記憶の映像では、最後まで立っていたのはマークと数人のホーミーだけ。

マークも記憶を失ったのならば、誰が俺達を助けたのだろうか。

 

最後まで立っていた他のホーミー達か?それともすぐに警官が駆けつけたのだろうか。

 

その時、足音がして誰かが病室に入ってきた。足音からして、おそらく二人。

 

「…誰だ、お前?」

 

マークには二人が見えているらしい。

 

「この部屋です。では私はこれで」

 

女の声だ。一つの足音が遠ざかる。もう一人を部屋に案内していた事をふまえると、看護婦だろう。


「サム…か?」

 

一人の男が俺をのぞき込む。

体はかなり細身だ。

高そうなスーツにブランド物のハット、そしてサングラス。胸ポケットからは綺麗なハンカチが見える。そして…首筋には『blood killa』の文字。

 

…!

 

だがよく見ると顔はランドとは違った。別人だ。それでも首筋のタトゥーからクリップスだとは分かる。

 

「誰だお前…確かに俺がサムだ」

 

俺が答えた。マークは黙っているようだ。

 

「はじめまして。私がランドだ」

 

「なに!?…!いってぇ…」

 

「おいおい、安静にしておきたまえ」

 

ランドと名乗った男は穏やかな声で俺に告げた。優しいようで、どこか威圧的な声だ。

 

「おい!お前がランドだって?俺達は確かにランドって奴をブチ殺したはずだぜ!」

 

横からマークが怒鳴っている。

確かにそうだ。ランドとbjは確かにクリックが撃ち殺したはず。

 

「おい、君。無礼だな。今、私は彼と話しているんだよ?少し黙っていてくれ」

 

奴はハットを脱いだ。頭に巻いた紺色のバンダナが見える。コイツがランドかどうかは置いといて、間違いなくギャングスタクリップの一味だと分かった。


「おい、今俺の相棒が言ったように俺達はランドを殺したはずだぜ?」

 

奴はふぅ、とため息をついた。懐から葉巻を取り出して、病室だというのに火をつけた。デュポン製の高そうなライターだ。葉巻の香りが鼻をつく。

 

「あのバカは…言わば私の代役だ。リーダーでもなんでもない。クレンショウブラッドの連中はあの男を私だと信じていたようだがね?まあ、まさか死ぬとは思わなかったが…とにかく、私は基本的にケガをするような場所には寄り付かないのでね。

あの男は今回、君達ブラッズを騙す為に使った捨て駒…とでも言っておこう」

 

「捨て駒…」

 

「そう。まあ細かい話はどうでもイイじゃないか。私は君に一つ試練を与えに来たんだ」

 

なんだコイツは。さっぱり話が読めない。

いきなりランドだと名乗り、今度は試練だと?

 

「何が言いたいんだてめぇ…いてて…」

 

再び体に激痛が走る。

 

「ほらほら、じっとしていたまえ。わざわざ生かしてあげた大事な体だぞ?もっと丁寧に扱いたまえ」

 

ニヤニヤと奴が話す言葉に俺は衝撃を受けた。


「ふざけ…ぐっ…!」

 

「君達はバカかね?さっきから事あるごとに無理に体を動かそうとして…」

 

奴は汚い物でも見るような目で俺を見ていた。完全に見下してやがる。ふざけやがって。

 

「いいか?君達が助かったのは偶然でもなんでもない。なぜなら病院まで連れてきてやったのは私達ギャングスタクリップなんだからね」

 

「なんだと!」

 

マークが横から叫んでいる。

奴はチラリとマークに目をやったがすぐに戻した。

 

「私は人が苦しむのを見るのが好きなんだよ。クレンショウブラッドには同士討ちで『仲間を殺す』という苦しみの試練を与えた。まあ、コンプトンを落としてビッグトライアングルを完成させるまでのほんの暇つぶしだがね」

 

この言葉で俺はコイツが確かに『ランド』である確信が持てた。クレンショウブラッドの同士討ちや、巨大な三角形を作って、その内側のエリアを支配する話が出たからだ。どうやらコイツは『捨て駒』と同じようにおしゃべりが好きらしい。

 

「そこで、君達にも試練を与える」

 

ランドは冷たく言い放った。


「すべてを失った者達が、どこまではい上がれるか…見ものだよ」

 

「すべてを…?」

 

俺はわけが分からずたずねた。

奴は葉巻を床に投げ捨てた。足で消しているようだ。

 

「そう、すべてだ。君達の力を見せてくれ。

あぁ、だが安心してくれ。私も君が一人では何もできないと思った。

それで最低限の仲間…E.T.だったかな?彼をこうして生かしてあげた」

 

マークを指差してランドが笑った。

E.T.という呼び名まで知っているとは、ギャングスタクリップの情報網はあなどれない。

 

「じゃあ他のE.T.やホーミー達は!?…ぐっ…!いてぇ…」

 

「さぁ?それは自分で確かめるとイイさ」

 

奴はハットを被り歩き出した。病室から出るようだ。

 

「君達が再び、私に立ちはだかる日を楽しみにしているよ。そこまで力をつけられるか分からないが…とにかく簡単に死なないでくれよ。

苦しんで苦しんで、そして私を楽しませてくれ。では失礼」

 

「待てよ!みんなは!…クソ!」

 

俺は叫んだが、足音は遠ざかっていった。

 

「サドの変態野郎め!気持ち悪いしゃべり方しやがって!」

 

マークがブチ切れているが、今はどうにもできない。

 

「とにかく早く動けるようにならないと…仲間が心配だ」

 

俺はマークに言った。


しかし、奴が言った「すべて」という単語が気になる。すべてを奪うとはどういう意味だろうか。

最低限の仲間を残したという言葉の意味も気になる。何が最低限なのか。何をする為の最低限なのか。

 

「マーク…アイツの言葉、信じるか?」

 

「ん?さぁなぁ…奴がランドかどうかもまだ分からない」

 

「いや、アイツはランドだ。間違いない。

紳士的なフリしてふざけてるが、奴は厳しい世界を生きてきたOGに間違いない。ヤバイくらいのオーラが出てたぜ」

 

捨て駒のランドも中々の目をしていたが、俺は本物のランドにそれ以上のものを感じていた。

 

奴は仲間を信頼するという事を知らない。

ランドにあるのは、仲間…いや、手下への絶対的な支配。そして、敵となる存在への徹底的なまでの憎悪。

そう思えてならなかった。

 

ただ殺すだけでは飽きたらず、苦しみ、もがきながら奴へとたどり着こうとする俺達の姿を見て、あざけ笑うのだろう。

 

「そうか…お前がそう言うなら間違いないな…

とにかく、俺達をどうしたいのかは知らねぇが、とどめを刺さなかった事を後悔させてやるぜ…」

 

マークの声は低く、怒りと悲しみに満ちたものだった。


 

何日くらい経った頃だろうか。よく覚えてはいないが俺もマークと同じように、どうにか首までは動かせるようになっていた。

 

そして俺とマークにとって願ってもない客がやってくる。

 

「よう。サム、マーク…また会えるなんて思ってもみなかったぜ」

 

車椅子ではあったが、一人のホーミーが俺とマークのベッドの間にやってきた。

 

「「ジミー!」」

 

同時に叫ぶ。

奴はどうやら同じようにこの病院で治療していたようだ。この部屋は二人部屋なので別の場所にいたのだろう。

 

「生きてたのか、ホーミー!」

 

俺はハグしてやりたい気分だったが、無理な話だ。

 

「あぁ、どうやらこうして動けるのは俺だけらしいな。みーんな寝たきりだったぜ。だらしねぇー!」

 

ジミーが動けない俺達をバカにするように笑った。

だが、それはどうでもイイ。奴は「みんな」と言った。

ということは他にも生きているホーミーがいるという事だろうか。

 

「他に誰か生きてるのか?」

 

マークが言った。

 

「あぁ。まだ動けないけどな…俺はようやく今日から車椅子で動けるようになった。

みんなより俺は丈夫だって事だな!」

 

ジミーがまた冗談を言った。


ようやくジミーによって俺達の置かれている状況が分かる。

 

ここは地元イーストL.A.の病院。

そして今、病院にいるのは、俺、マーク、ジミー、ジャック、ライダー、シャドウ、クリック、それと他に四人のホーミーらしい。 

 

それ以外の仲間達は一体どうなったのかも分からない。上手く逃げれたのかそれとも…。それにアジトに残してきた数人のホーミーもどうしているのだろうか。

 

「E.T.は全員無事だと…?一体ランドの言う『すべて』は何なんだ…」

 

状況が見えた事で、俺はさらに混乱した。なぜわざわざイレブントップを全員生かしたのか。

 

「ランド?奴が来たのか?」

 

ジミーが聞いてきた。

 

「あぁ。この間な。

俺達が殺ったのは偽者だったみたいだぜ。

『試練』を与える為に俺達を最低限だけ生かしたとか何とか…とにかくスカしたヤロウでよ!

気にくわねぇぜ!俺達を使ってゲームを楽しんでるって感じでよ!」

 

マークが吠えた。体は動かないが、俺達二人の体の痛みは徐々に無くなってきている。

 

「なんだそれ…ゲーム?フットボールのゲームか?そういや病院にいるのは十一人だな」

 

…!

 

ジミーの言葉に俺は鳥肌が立った。


「奴は…俺達の歴史のすべてを知った上で、振り出しに戻したんだ…」

 

ガタガタと震えて俺の歯がぶつかる。恐ろしかった。

 

「はぁ?」

 

ジミーが言った。

わけが分からないようだ。

 

「だから…俺達B.K.Bを結成当時の状態に戻すって事だよ!仲間の数がその証拠だ…」

 

奴等には俺達の情報はおろか、過去の経歴までもすべて調べあげる事ができるのだ。

 

最初から勝ち目などなかった。

すべての行動は見透かされ、メンバーの素性はすべて割れている。

 

俺の顔を割り出そうとマーカスやジャックを襲った事ですら、俺達に希望をもたらし、戦意を向上させるためだけのフェイクであったのかもしれない。

 

二重、三重どころの作戦ではない。

 

 

すべては何重にも張り巡らされたランドの計略。

 

 

奴がギャングという身でありながら、広い範囲の支配を望む器であることが分かった。

 

もはや奴をギャングにしておくのは惜しい。

マフィアのトップか、あるいは巨大なテロリスト集団のリーダーにでもなれるのではないか。俺にはそう思えてならなかった。


二か月後…

 

俺達は、クリックを除いて自力で動けるまでに回復した。

 

奴だけは後遺症が残り、下半身が動かなくなった。つまり一生車椅子での生活だ。

全員体中にダメージを受けていたが、クリックだけは酷かったらしい。みんなは涙した。

 

俺達は敵に生かされた身だ。悔しかったが、今は生きるしかない。

 

生きて生きて、奴等には俺達にとどめを刺さなかった事を後悔させてやる。

マークの言葉通りの野心を秘めて俺達は病院を後にする。

 

 

みんなとは退院前に何度も顔を合わせて話をしていた。

 

「まずはアジトに戻る」

 

それが一つだけ決めた事。

クリックをジャックが押し、みんなでアジトの近くへと戻った。

 

「な!?隠れろ!」

 

先頭を歩いていたマークがホーミー達に叫んだ。

木陰に身を隠して様子を伺う。

 

…!

 

俺達のアジトは壁一面紺色に塗り替えられ、道端には大勢のギャングスタクリップのメンバー。

 

俺のインパラやウィザードのシビックも奴等が使っていた。

家族や住民にまで被害は及んではいないようだが、完全にテリトリーを占領されてしまっていたのだ。


振り出し…

ギャングとして培ってきたものは、すべて奪われた。

 

アジト、車、仕事、十一人を残して…その他すべてのホーミー達。

ブツもシャドウの家にはもう無い。

それに、もし家に帰る所を奴等に見つかったら、家ごと燃やされるかもしれない。そう。俺達には帰る場所が無くなった。

 

俺は絶望に突き落とされた。

 

 

とにかく病院の近くまで引き返す。

駐車場に集まった。

みんなの顔はこれまで見た事ないほど暗い。

 

「さっきの様子じゃ…アジトに待たせていたホーミー達も、十一人以外で共に戦ったホーミー達も…」

 

「間違いないだろう…」

 

俺の言葉にシャドウが同調した。

みんな泣いた。

 

夜まで多くの仲間の命とすべての物を失った悲しみは止まらず、俺達は延々と嘆き続けた。

 

これが試練。生き場を失った十一人は死よりも絶大な苦しみを味わう。

 

「コンプトンへ行くしかないか…それ以外に道はない」

 

シャドウの言葉で俺達は立ち上がった。

 

近くにあったバンを一台盗み、十一人は狭苦しくも全員乗り込む。

 

「出発だ…」

 

ハンドルを握るジャックが言った。


 

コンプトン。

 

コンプトンブラッズのメンバー達は俺達を見ると驚きの表情で「生きてたのか!」と声を掛けてきた。

やはり俺達の大敗はここまで伝わっているようだ。

彼等にファンキーの居場所を教えてもらう。

 

ファンキーは少し前と同じように道脇に椅子を出して座っていた。

クロニックをふかしている。

 

俺達十一人は車を下りて、ファンキーを囲むように並んだ。

クリックにはもちろん車椅子を用意している。

 

「生きてたのか…」

 

ファンキーが静かに言った。

 

「あぁ、生かされたと言った方が正しいけどな」

 

俺が返す。ファンキーはクロニックをふかして、道に投げ捨てた。

 

「生かされた?敵が情けをかけたとでも言うのかよ?」

 

「いや、その逆だ。俺達を苦しめる為にわざわざ生かしたらしい。アジトは奪われた。仲間もこれだけだ…」

 

「なんで行かねぇ?」

 

ファンキーが聞いてきた。俺には意味がよく分からなかった。

 

「どこに?」

 

「なぜすぐ仕返しに行かねぇ?取り返しに行かねぇ?」

 

「いや、この状態じゃあ…すぐには…」

 

俺のその言葉にファンキーの顔が急変する。


「あん!?てめぇら!

敵に生かされたからと言って逃げて、ノコノコとここへやって来たのか!

やられたらやり返せ!態勢を立て直す必要なんざねぇんだよ!

力任せに突っ込んで、そして負けたら死ぬのが当然だ!」

 

ファンキーは吠えた。

みんな黙り込んでしまった。

 

「ここに置いてくれ、とでも言おうと思ってきたのか?」

 

「それは…」

 

「悪いが俺はお前らを見損なったぜ。とんでもねぇ腰抜けどもだな」

 

さらにファンキーは俺達を叱りつけるように言葉を放った。

この時ばかりはマークやジャックも反論する事ができず、しんとしてしまった。

 

「早くどこかへ行け。そして二度と顔を見せるな。

お前達腰抜けがどう生きようと俺には関係のない事だぜ」

 

ついに、この言葉が出た。それはコンプトンブラッズとの絶縁を意味する。

俺達は黙って車に戻った。

 

頼れる存在はすべて失った。

これで本当に振り出しなのかもしれない。

 

B.K.Bは完全に孤立した。これからは何をするにも自力でやっていく他ない。この…

 

 

 

 

 

わずかな仲間達と共に。

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