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B.K.B 4 life  作者: 石丸優一
19/61

california war

カリフォルニア。

俺達はここに生まれた。

そして、俺達はここで死ぬ。

クレンショウブラッドのラット、コンプトンブラッズのレイクへの連絡を回す。

どちらのチームも俺達への協力を誓った。

 

レイクは数人のホーミー達とB.K.Bのアジトへ駆け付けてくれた。

 

「よう、ブラザー達。どこぞのクリップスと決着をつけるんだってな?」

 

「あぁ。よく来てくれた、レイク」

 

俺はレイクにハグをした。

B.K.Bのみんなは武装し、真っ赤なバンダナで口を覆い、車を十数台用意して彼等を迎えた。

 

レイクが連れて来てくれたコンプトンブラッズのOG達は全部で五人。

とても大人数だとは言えなかったが、俺達は勇気あるコンプトンブラッズの戦士達に感謝した。

 

「サウスセントラルでクレンショウブラッドの連中も合流して加勢してくれる事になってるんだ」

 

俺がレイクに言った。

 

「クレンショウブラッド…名前は聞いた事あるが、どんな連中かは分からないな。だが、サム達に協力してくれるってんならイイ奴等なんだろうな」

 

レイクが笑った。

俺はうなずき、みんなに合図を出す。

 

「出発だ!」


クレンショウブラッドの連中ともギャングスタクリップのテリトリーに着く前に問題なく合流できた。

クレンショウブラッドは、ラットを筆頭に四十人ほどのウォーリアー達が来てくれていた。

だが、合流した後にちょっとした問題が発生した。

 

「おい、なんだ?コンプトンブラッズのOG達も来てるのかよ?」

 

ラットがレイク達を睨み付ける。やはりコンプトンブラッズはどこでも有名なようだ。

 

「サム、言ったはずだぜ。B.K.Bは特別だが…俺はサウスセントラル以外のブラッズと馴れ合うつもりはねぇ」

 

「あ?なんだとこのヤロウ!B.K.Bのブラザー達を思う気持ちに変わりはねぇだろ!」

 

レイクがラットに掴みかかろうとした。

必死でB.K.Bのホーミー達が止めにかかる。

 

「ラット!レイク!やめろ!

ラット…話をしてなくてすまない…

頼む、コンプトンブラッズとも力を合わせて俺達を助けてくれないか?」

 

小さく舌打ちをしてラットは了承した。

レイクもイラついたままではあったがラットに詰め寄るのをやめた。


俺達の乗る車の集団がサウスセントラルのギャングスタクリップのテリトリー付近に到着した。

 

今回使っているのはバンやトラック、セダンタイプの車ばかりで、とにかく人数を積めるだけ積んでいた。

時刻は夜になったばかりで、サウスセントラルは静まり返っている。

 

「おかしいな…ギャングが見当たらない」

 

先頭のバンのハンドルを握るシャドウが言った。俺は同じ車の後ろに乗っている。

もちろんシャドウが奴等の居所を知っているので先頭を走っているのだ。

 

この抗争、B.K.Bはハスラーすらもほぼ全員を動員するという異例の事態だった。

地元のアジトには十人も残っていない。

 

 

なんだか嫌な予感がする。以前、隣町のクリップスとの抗争の時にも『敵がいない』という事態に陥ったからだ。

 

だが、しばらく走っていると四、五人だが、クリップスの連中を発見した。道端に座り込んでクロニックをふかしながら話している。

俺達が車を停めると、奴等はこちらに気付いて身構えた。

 

「やっちまえ!」

 

すべての車から俺達の仲間が飛び出し、銃を使う事もなく、あっと言う間に奴等を倒す。

こっちは百人近い人数だ。奴等は成す術が無かった。


だがとどめは刺さない。

奴等にアジトの場所を割らせるのだ。

そう。俺達が奴等にやられたように、今度は俺達が奴等を痛めつけ、吐かせる番だ。

 

「わ、分かった…言うよ…」

 

ボコボコになった顔で、ついに一人のクリップスが折れた。

他の奴が騒ぎ出す。

 

「おい!お前裏切るのか!絶対に…ぐぁ!」

 

ソイツは途中で倒れた。スノウマンが顔を蹴り上げたのだ。相変わらず冷酷非道な奴だ。

それを見たクリップスの奴等に戦慄の表情が浮かぶ。

 

「あ…アジトの場所を教える…俺達のリーダーもそこにいるはずだ。名前はランドだ…クソっ!」

 

ついにソイツは吐いた。

さらに細かい場所を聞き出す。

 

「もう…イイだろ…?」

 

「あぁ。上出来だ」

 

俺が答えた。ホーミー達は再び車に乗り込む。

だが…

 

「おい!やめろ!…やめてくれ!」

 

パアン!パアン!パアン!パアン!

 

スノウマンは違った。

 

「おい!ドッグ…やりすぎだぜ…」

 

「皆殺しだ。そうだろ?さぁ行こうぜ、サム」

 

車はアジトを目指した。


 

ついに到着した。

そこは、今は使われていない工場のような場所だった。

周りは林で囲まれていて、かなり広い。ギャングスタクリップのような大ギャングでも、この広さなら問題なく全員が中に集合できるだろう。

 

俺達は正面の大きな扉の前に車を停めた。

 

「ついにこの時が来た。みんな、俺達にケンカを売った事を後悔させてやろうぜ」

 

みんなを見回す。ホーミー達は力強く頷いた。

 

「ラット、レイク。俺達のケンカに手を貸してくれた事、感謝してる。みんな無事に生きて帰ろう」

 

「サム!水くさいぜ!俺達コンプトンブラッズはいつだってお前達の味方だ!」

 

レイクは笑った。

 

「俺はコイツらと馴れ合うつもりはないが…力になってやる」

 

ラットもなんだかんだ言っても俺達の事を考えてくれているようだ。何とも心強い。

三つのブラッズが集まった連合に敵などいない。

俺はそう思った。

 

「行くぜ!」

 

俺の号令でみんなが雄叫びを上げる。

鉄の扉をこじあけて、中へと全員が突っ込んだ。

 

「おらぁ!くたばれ、クリップス!」

 

マークが先陣をきって走り込んだ。

 

「ん…?サム…こりゃあ一体…」

 

様子がおかしい。みんな静まり返った。

 

アジトは…もぬけの殻だったのだ。


俺達がだだっ広いアジトの中で立ち往生していると、外が騒がしくなった。

 

しまった…ハメられた…

 

つまり、さっきアジトの場所を吐かせたクリップスのメンバーはオトリ。

俺達にアジトの場所をわざと教えて、中に入ったところを叩く。といった事か。

ギャングスタクリップ…ここまで用意周到だとは。

 

「まずいぞ!奴等が突っ込んでくる!他に出口は無いか!?」

 

まだ奴等はこの工場から少し距離があるようだ。

俺がホーミー達に呼び掛けた。誰かが叫ぶ。

 

「B!裏口がある!」

 

「よし!みんなそっちから逃げるぞ!」

 

俺は再び指示をだした。

近くにいたレイクが銃を構えて叫ぶ。

 

「サム!表の入口は俺達コンプトンブラッズが抑える!奴等を通しはしない!」

 

「バカ!全員で逃げるんだよ!」

 

「イイから行け!」

 

彼等は工場内にあった機械や机でバリケードを作っている。

 

「クソっ!」

 

俺は裏口へと走った。この工場はどうやら出入り口がこの二か所しか無いようだ。

 

ついに奴等がやってきた。

 

「おい!やべぇぞ!」

 

二か所の出入り口、両方から。

逃げられない。

全包囲されていたのだった。


奴等は俺達の連合を凌ぐほどの構成員数を誇る。

奇襲以外ではこちらに勝目は薄い。もし勝てるとしてもこちらの被害者数は計り知れない。

 

パアン!パアン!

 

ついに、圧倒的に不利な状況のまま俺達は奴等と衝突した。

脱出できないので仕方なく建物の中に戻り、近くにある机などに身を隠して応戦する。

 

「クソ!逃げられねぇ!」

 

ジャックが叫びながら撃ち返している。

表の入口からはまだ奴等は入ってきていないので、裏口から来る敵に応戦する。

 

「おい、サム。まずいな」

 

ラットが言った。クレンショウブラッドのウォーリアー達も必死に戦ってくれている。

 

「あぁ、ヤバイ。絶体絶命とはこの事だな…」

 

俺の額から冷や汗が流れ落ちる。

ついに表の入口のバリケードが壊されて、奴等に挟まれる形になった。

 

パパパパパン!

 

コンプトンブラッズのOG達は今回、サブマシンガンを使用している。

独特な軽い連射音が工場に響いた。

 

さすがに戦い慣れしている。クリップスはなかなか建物に入れずにいた。


しばらくの間、外からの攻撃が続いた。

奴等は一歩も中に入らない。

一気に二か所から突っ込めば俺達を仕留められるはずなのだが。仲間への被害を恐れているのだろうか…

そういえば工場には窓ガラスが多数ある。

だが奴等はそこを破って進入する事さえしない。

何かおかしい。

そう思った瞬間だった。

 

パリン!パリン!

 

一斉に工場内のガラスが割れた。

ホーミー達が驚いて騒ぎ始める。

 

ボウッ…!

 

工場内の温度が上がる。

クリップスの奴等が一斉に窓から投げ込んだのは…

 

大量の火炎瓶。

 

「うわ!マジでやべぇ!サム!みんな焼け死ぬぞ!」

 

ライダーが遠くで叫んでいる。

 

「サム!どうするんだ!」

 

マークが火を消そうと必死に地面を踏んでいる。だが炎は勢いを増すばかり。

 

バリケードとして使っていた机に引火した。なんて事だ。これさえも奴等の計算のウチだった。

確かに俺達の盾となるような物をわざわざアジトに残しておくはずが無かった。

 

「ギャングスタクリップめぇぇぇ!!!」

 

炎の中、俺の雄叫びが響いた。


「クソ!アジトが空っぽだと異変に気付いた時、すぐに車に戻って逃げてれば…」

 

シャドウが言った。

だが、奴の言う通りにしていたとしても、すでに包囲されていたとしたら車ごとハチの巣になり、吹っ飛ばされていたに違いない。

 

ゴホゴホと、ホーミー達が煙にまかれて咳こみ始めた。

目が痛くなり、徐々に皮膚が熱く、呼吸が苦しくなる。

 

何人かは服に引火したようで、慌てて脱ぎ捨てている。

 

ついにたまらず数人のホーミー達が入口へと走り出す。

 

「待て!お前達、行くな!」

 

パアン!パアン!

 

どさり。

 

外に出た瞬間、ホーミー達はクリップスの奴等に狙い撃ちされてしまった。

 

 

しばらくするとみんなは炎に押されて徐々に徐々に小さく固まった。だが、百人近い数だ。

そんなに狭まれない。 

 

「仕方ない!イチかバチか表から…車を停めた方から出るぞ!全員続け!」

 

ゴオゴオと音を立てる炎の中、俺は叫んだ。

そのまま先頭を走る。みんなついて来てくれていた。

 

「あち…っ!クソぉ!!」

 

もはや炎で前も見えづらい。俺はヤケクソで工場からの脱出に成功した。

すぐに敵からの攻撃を恐れて横へと転がった。


次々にホーミー達が中から出てくる。

 

動けない奴は仲間が担いで出てきた。みんな火傷を負ってはいるが焼け死んだ奴はいないようだ。

どうやら間に合わずに裏口や窓から脱出した奴もいるらしかった。

 

すぐにソイツらも表に周ってくる。

そして、俺達は呆然と立ち尽くした。

 

なんと、クリップスはすでに一人もいなかったのだ。

俺達の乗ってきた車で逃げ去ったらしい。

 

代わりに近付いてくるいくつもの回転灯。消防車とパトカーだった。

 

二重の作戦。

俺達が焼け死ねばそれでよし。

 

ある程度工場が燃えたところで奴等は撤退し通報。

通報していないにしても、こんな大きな建物だ。すぐに警察は気付く。

いくら俺達が燃やしていなくとも、警察は俺達ギャングを捕まえる。車を失った俺達全員が、こんな大人数で逃げるのは不可能だ。

必ず大多数が犠牲になる。

 

「走って逃げるしか、ないよな…?」

 

ジミーが俺に言った。

 

警察が到着し、銃を構えて俺達に拡声器で叫ぶ。消防は少し離れた所から放水を始めた。

 

「みんな!逃げろ!少し遠いがクレンショウで落ち合おう!イイな!?ラット!」

 

「おう!クレンショウまで行けば仲間の援護がある!」

 

バラバラにみんなは駆け出した。


逃げ始めた俺達に向けて、容赦なく警察は発砲してくる。

何人かのホーミー達が倒れ込むのが見えた。

 

「サム!こっちだ!」

 

俺の近くにはシャドウとスノウマン、それに二人のホーミーがいた。

叫んでいるのはシャドウだ。

 

「クソ!こんなはずじゃ…!みんな、上手く逃げてくれ…」

 

俺達はシャドウを先頭に林へと入った。

 

どこかでサブマシンガンの音が聞こえる。

コンプトンブラッズが警察相手に発砲しているようだ。

 

だが警察の数も多く、かなり苦戦するに違いない。頼むから早く逃げて欲しかった。

 

「いたぞ!」

 

数人の警官が俺達を追って来る。

舌打ちをしてスノウマンが奴等に拳銃を撃った。

 

すかさず警官も撃ち返してくる。

 

「スノウマン!攻撃はよせ!早く走るんだ!」

 

俺が後ろを振り向いて叫んだ。

奴は少しずつだが遅れ始めている。

 

「ぐっ…!」

 

スノウマンが倒れた。足に食らったらしい。

 

「ショーティ!」

 

シャドウが叫ぶ。

 

「クソ…いてぇ…!」

 

スノウマンは立ち上がって警官の方を向いた。


「行け!」

 

俺達に背を向けてスノウマンが叫ぶ。

俺は耳を疑った。

 

「何言ってるんだ!ショーティ!早く来い!」

 

「サム…!足をやられた…!俺がいても逃げ切れない!早く行け!」

 

スノウマンはマガジンを交換し、再び警官に発砲。奴等を牽制している。

 

反撃してきた警官の弾が、今度は奴の腕を貫いた。

それでも片手で銃を乱射している。

 

「行けぇ!!」

 

スノウマンが怒号を上げた。俺の意に反してシャドウとホーミー二人が無理矢理俺を引っ張る。

 

パアン!パアン!

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………

 

 

「よう、サム。俺はいつだってB.K.Bの為に体張る覚悟だぜ」

 

「嬉しいな。これほど頼もしい言葉はないぜ!」

 

 

…………………

 

 

「俺はスノウマン(雪男)だぜ!銃弾じゃ死なない!」

 

「またそれかよショーティ!俺だって負けないぜ!な、サム?」

 

「さあなあ?お前達みたいなデカイ二人がやり合ったら地球が壊れちまうぜ」

 

「ガハハ!違いねぇ」

 

 

…………………



「頼む!可愛い弟をギャングになんかしたくねぇんだ!」

 

「マーカス、お前どうしてB.K.Bに入りたいんだ…」

 

 

…………………

 

 

「季節外れのサンタクロースだ。プレゼントを受けとりな」

 

パアン!

 

「ショーティ…」

 

「…」

 

 

…………………

 

 

「季節外れのサンタクロースだ。さあ、みんな。食ってくれ!」

 

「お、スノウマン。メシか?」

 

「あぁ。いつまでもウジウジしてらんねぇだろ?これで元気をつけて、さっさとギャングスタクリップを皆殺しだぜ!」

 

 

…………………

 

 

パアン!パアン!

 

何発もの銃弾を受けてスノウマンはゆっくりと仰向けに倒れていく…

 

「サム…逃げ…ろ…」

 

最後に小さくそう聞こえた。

 

「B!お前はリーダーだ!逃げ切らないとダメだ!」

 

シャドウの言葉で俺はハッとなった。

スノウマンから目を放し、全力で駆け出す。

 

「ショーティ…!クソ…!クソぉぉ…」

 

俺の口からは嗚咽のような声しか出なかった。


 

「これだけか…?」

 

一時間ほどかけて、クレンショウへと辿り着いた時、周りにいるホーミー達の数を見て俺は愕然とした。

 

B.K.Bは二十人近くしかいない。

E.T.はスノウマン以外全員そろっているようだ。

 

「まったく…冗談じゃないぜ」

 

ラットが近くにあったドラム缶を蹴飛ばした。

四十人ほどいたクレンショウブラッドも半数以下になっているようだ。

コンプトンブラッズは…一人もいなかった。

 

「ショーティはどうした?」

 

マークが言った。

俺とブライズはうつむいた。

 

「ショーティはどうした?」

 

マークが再び言った。

どうやらうつむいたのを見逃さなかったらしく、俺とシャドウにきいている。

 

「死んだ…」

 

シャドウが答えた。

みんなから嘘だろ、という声が聞こえる。

 

「俺達を逃がす為に…」

 

俺が言った。みんなはその場で黙り込んでしまった。

 

「さて…もうコリゴリだぜ」

 

ラットが手を振り、クレンショウブラッドを引き連れて歩き始めた。

振り返って言い放つ。

 

「サム。お前らとはもう、つるめねぇ」


「なんだって?」

 

俺は唖然とした。

ラットはイラついたように返す。

 

「俺はbj達を助けてくれた礼に、こうやって加勢したんだぜ?

こんなに仲間を殺されちゃぁ、釣り合わない。だからこれでおしまいだ。じゃあな、B.K.B」

 

そう言うとすぐにラットは去って行く。

俺達は返す言葉も見つからず、黙って見送るしかなかった。

ジミーが口を開く。

 

「とりあえず地元にもどろうぜ」

 

みんなの返事は聞こえないほどに小さかった。

 

 

 

 

俺達はアシもないので仕方なく、まだ運行していた電車に乗り込み、サウスセントラルを後にする。

 

 

地元の駅に到着してもその足取りは重く、駅からアジトまで歩くのに一時間以上かかった。

アジトでは待機していた数人のホーミー達が出迎えてくれたが、俺達の人数、ボロボロに燃えた服を見るなり、すぐに『失敗』したという事に気付いた様子だった。

 

「…ダメだったんだな」

 

「あぁ。みんなの手当てを頼む…」

 

その晩は、それ以上誰も口を開かなかった。


B.K.Bは、ムショにいる仲間も合わせて三十数人になってしまった。

あの時、捕まってしまった仲間はほとんどおらず、大半は殺されてしまったのだ。

 

俺達は逝った仲間達の為に祈った。

 

本当に何の恨みがあっての事か、ギャングスタクリップに目をつけられてからこれまで、地獄のようだった。

だが、この厳しい現実もギャングとして生きる俺達には仕方ない事だと割り切るしかない。

 

仲間が死んだ。たくさんの仲間が。

幼い頃からの仲間だったスノウマンも逝った。

クレンショウブラッドにも縁を切られた。

 

 

そしてこの時、コンプトンブラッズのファンキーがB.K.Bのアジトにやってきていた。

 

「レイク達は天国でも元気にやってるだろうか…なぁサム…」

 

ファンキーは泣いていた。

あの日、コンプトンブラッズの誇り高きOG達は最後まで戦い、壮絶な死に様を遂げたのだそうだ。彼等は誰一人逃げなかった。

 

「あぁ…俺は…コンプトンブラッズのブラザー達を誇りに思うよ…」

 

俺も涙が止まらなかった。


ファンキーは泣きながらも、「いつでも力になる」と言ってくれた。

俺は涙で彼を見送る。

 

レイク…ウィザードのイトコ…最高な男だった。

ファンキーがレイクの死を惜しむのも当然だ。

 

「B…俺達はどうなっちまうんだ」

 

近付いてきたライダーが不安そうに言った。

 

「わからない…だがまだ俺達は生きている。そうだろう?」

 

「あぁ…それで?」

 

「何も変わらないぜ。俺達は地元を守り続ける。まだ、奴等との決着はついていない」

 

俺は立ち上がった。

周りにはすっかり少なくなったホーミー達。

 

E.T.を見る。マーク…ジャック…ライダー…シャドウ…ジミー…

俺をいれても、たったの六人。

 

クリックは、じきに数人のホーミー達とムショから出てくる。

コリーはまだあと数年。

ガイは旅立ち、ウィザードとスノウマンは逝った…

 

「E.T.だって、生きてる奴の方が多いんだぜ。まだやれるさ」

 

俺は自分に言い聞かせるかのように言った。

みんな静かに頷く。

 

「サム」

 

急にマークが口を開いた。

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