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食べず嫌い

作者: 山野雪

近年、歳を重ねる毎に食べられなかった物が食べられるようになってきた。

私の嫌いな味はドリアンだけで、それ以外不味いと感じたことはない。

なんでもかんでも美味しいと感じるのに大人へと育っていく過程で食べられない物が出てきてしまった。


いくら、明太子、鰻、牡蠣、貝類、しらす、レバー、などなど。


『全くもう、食べず嫌いなんだから』などと家族に言われてきたが決して食べず嫌いではない。

食べられるのだ、しかも美味しい。

けれどその物についての詳しすぎる解説や図解などをされ過ぎて、口の中の物体が飲み込めなくなっていった。


例えば鰻。

日常的に食べられる訳もない一般庶民の私が鰻を食べにいった日の事は今でも忘れない。

店の前にそれらしく置かれた桶の中にウネウネとうごめく鰻たち。

それらをさばくところを見せてあげるからおいで、と言われてガラス越しにジッと見つめる私の視線の先には生き物から食べ物に変わっていく長い物体が、、、。

ここがこうで、ああで、と板前さんの説明が稲川淳二さんの声に聞こえてきたものだ。


例えばしらす。

小学校の理科の授業でメダカの事を学んでいた時に、目についてのお話があった。

また稲川淳二さんと化した担任の先生が焼魚の目はこうなりますよ、焼いてないとこうですよ、と予備知識を次々与えてくださった。

それ以来大好きだったしらすが食べられなくなり、驚いた母親に

『三枚におろしてくれたら食べる』と言って呆れられたのを覚えている。


散々肉や魚を食べているくせに何を言っているのか、自分でも嫌になる。

しかし、口の中に入れても噛めないのだ。

噛もうとするとプルプルっとする。

さあ、美味しいぞ〜、と無になろうと自分で自分を騙そうと何度も試みた。

そんな事にも疲れ、もういい、と諦めてきた。


それがどうしたことか。

何かが抜け落ちたかのようにいきなり食べられるようになったではないか。


久しぶりに食べた鰻の味。牡蠣フライ。

ああ、美味である。

私に何が起こったのか、自分では薄々気が付いてはいるものの、周りはびっくりだ。


そう、歳を重ねてあの細かすぎるウンチクを無視できるようになってきたのかも。

つまりは鈍感になってきたというわけ。



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