目クソ鼻クソ(ショートショート35)
目クソ鼻クソを笑う。
そんなことわざがあるのをご存知であろう。
自分の欠点に気づかず他人をあざけることで、あまり良いたとえには使われない。だいたいクソがつく言葉に良い意味のあるものはないとしたものだ。
ところで、あなた。
鼻クソのクソをウンコと思っていないだろうか。
これはとんでもないことで、鼻クソのクソは鼻汁のかたまったもの。ちなみに目クソは目ヤニ。耳クソは耳アカのことである。
さらに口のクソもある。
つい口をついて出る「クソー」である。
これは心の吐息とでもいうべきか、残念に思うときや悔しいときについもれ出てしまう。
まあ、クソの意味にはウンコのほかにもいろいろあるということだ。ただ、クソという言葉は格調低い下品なものとして、世間ではもっぱら低い地位に追いやられている。
だからして。
世の女性、特に若い女性はクソという言葉を使いたがらない。先ほども述べたが、ウンコとまちがわれやすいからであろう。
実際、若い女性がクソと言うのを、まず聞いたことがない。ときにはクソーと連呼したくなるときだってあるだろうに。
そんなとき。
クソーと大声で叫ぶことができたら、多くの人前で連呼できたら、どんなにか気分がすっきりするであろうか。けれど、そんなことをすれば確実に下品なヤツだと思われてしまう。
それでも一人になったとき、クソーを連呼しているかもしれない。
ストレスの発散には、クソーと叫ぶのがもっとも効果があるのだ。なにしろ、クソーは心の叫びなのだから……。
今のあなた。
これを読んでおり、おそらく一人であろう。
だれにも気をつかうことはない。
あなたも心の叫びを、おもいきり声にして連呼しようではありませんか。
クソー、クソー、クソー。
どうです、少しは気分が晴れましたかな。
では、もう一度。
クソー、クソー、クソー。
ずいぶんすっきりされたでしょう。
ところでですな。
こんな下品な話を語る作者はクソ。
でも、なにはともあれここまで読んで、クソーを連呼したあなたもクソ。
目クソ鼻クソといったところですな。
失礼だって?
まあ、よろしいではないですか。気分がすっきりされたのですから。