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第62話 勇者side 13

「……へぇ……俺の居場所を突き止めるとはね……なかなかやるじゃん」




 抑揚のある口調にて目の前にいる黒ローブの男を褒め称える。




 だが、そう言い放ったギルバートの口元は嬉しいのか、少々吊り上がっており、平凡な容姿をした顔には笑みが花咲いていた。




 それもそのはず、ギルバートはとある日を境に冒険者ギルドにて登録をし、偶々発見した自身の力を使って半年程魔物を狩り続けてAランクにまで上り詰めていたのだ。




 しかし、ギルバートはかれこれ5年程抱えている厨二魂が無意識の内に発動してしまったが為に、冒険者ギルドで活動する際は必ず、黒い眼帯に赤いローブを羽織っていた。




 その為、今更もてはやされたいからといって素顔を冒険者ギルドにて晒すのも躊躇われていた。

 


 時々、人通りの多い場所で厨二フル装備をした状態にて自分が鍛冶屋で働いている、と匂わせる発言を今まで散々していたのだが悉く空振っていたので、見事自分の正体を突き止めた黒いローブを羽織った男達は自分に何を頼むのだろう!? と期待の眼差しを向けていた。




「俺達もこの情報を手に入れるのには時間が掛かったんだ……まさか、鍛冶屋で働いているとはな……本当にびっくりしたよ……ギル・ドラグニルさんよ」



「止めろ止めろ、この状態でその名前を出すな…………超恥ずかしいだろうが」 




 ギル・ドラグニル。

 それはギルバートの冒険者ギルドでの名前だ。




 登録してから1週間くらいまでは格好いい名前だ、と思っていたのだが最近はダサくね? と感じ始め、改名しようかと日々悩んでいる。




「こちらの配慮が足りなかったな、すまない。でだ、本題に入ろうか。この腐ったエーデル王国の現国王を大衆の前で斬首し、新たな国王を擁立させる事が俺達の役目だ。……引き受けてくれるか?」



「おいおい、黒ローブさんよ。そんな事よりももっと大事な話があるだろ? アレはどーなってるよ? アレは」




 淡々と業務口調にて話を進めていく黒ローブの男を前に、ギルバートは返答せずに親指と人差し指で小さく丸を作り、報酬はどうなっているのか? とゼスチャーで尋ねていた。




 守銭奴ここに極まれり! である。




「流石、2つ名持ち。“貪欲”のギル・ドラグニルだな。ああ、そうとも。今回のような作戦で協力してくれる者とは良いギブアンドテイクの関係を築くべきだからな。勿論、用意してるさ。勘違いするな? 後々、ちゃんと伝えようと思っていたからな? ……報酬は金貨30枚、プラス出来高だ」



「……金貨30枚ね……まぁ、悪くない。出来高ってのが微妙だが、了解だ。その提案に乗ってやるよ。俺も前々から今の国王の徴税の多さには、ほとほと困ってたんだ」



「……ふふっ、そうか。まぁ、宜しく頼む。集合場所は……裏ギルドなんだが場所は分かるか?」



 ギルバートの言葉を聞き取り、満足気な抑揚のついた声で言葉を発した。

 



 裏ギルド。

 犯罪歴がある人物なら殆どの者が訪れた事がある場所だが、黒ローブの男はギルバートに犯罪歴は恐らく無いだろうと感じ取り、場所の確認を取るが対してギルバートは眉根を寄せて複雑な表情へと変えていた。



「やはり、分からないか。……明日の午後の鐘が鳴る時間にもう一度、この鍛冶屋に寄る。その時に案内しよう」



「……悪いな。……あ、それとその黒ローブメチャクチャ格好いいな!! どこで売ってたんだ? なぁ? なぁ?」



「……お、お前はこのローブの良さが分かるのか!?」



 吐き捨てるように言い放ち、踵を返して鍛冶屋を去ろうとする黒ローブ3人組だったが、ギルバートの緊張感の無い問いによって足を止める事となる。



 そしてその後、リーダーらしき男もギルバート程とはいかないが、不屈の厨二魂をメラメラと燃やしていたらしく、小一時間ほどローブの話をする事となっていた。


  

次回から本編に戻ります( `・ω・´)

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