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第5話 異世界来て数時間で嫁が出来ました♪

 客間から立ち去って数分程、俺達は部屋を出て直ぐ姿を現した異様に長い廊下をひたすら無言で歩き続けた。

 


 小さな……とはいっても先程の客間と比べると、はるかに広い物置部屋のような場所に何故か案内され、今は扉の前に立ち尽くしている。


 

 案内してもらっている最中、俺はいつ話し掛けられるかビクビクしていた。女性からの世間話は美容院に昔行って以来、トラウマとなっているのだ。



 その為、無言だった事は超ありがたかった。コミュ障ってのは無言が大好きなんだ。そしてボッチも兼ね揃えた俺にとっては、無言程ありがたいものはない。



「あのー………ティファールさん? ここどう見ても場所間違ってますヨネ? なんでこんな空き部屋に?」



 俺は怪訝そうに眉をひそめながら訊ねた。

 にべもなく受け答えするのも気が引けたので、俺なりに頑張って営業スマイルっぽい笑顔をしてみた。

 たぶん、今の俺は相当不細工な顔になっているだろう。



「いえ、大丈夫ですよ? この部屋でちゃんと合ってます。ささ、鷺ノ宮さんも一緒に入りましょう!!」



 ティファールは満面の笑みを浮かべながら、やや強引に愁いに表情を曇らせていた俺の右手を取って空き部屋へと手を引いて中へと誘導する。そして俺が入り終えた瞬間に



 ガチャリガシャンガシャガシャガシャガシャン



 ティファールはドアの鍵を閉め、どこからか取り出した鉄製のチェーンのようなものでドアを、ちょっとやそっとじゃ開かないようにと巻きつけた。

 その手際の良さに俺は、呆気にとられた。まさに職人技。匠もびっくりだよ。



 そして先程の行為がまるで無かったかのように素知らぬ顔をさせながらも絶対に逃げられないようにする為か、部屋の奥へと俺の手を強引に掴み、誘導してくれた。いや、連行されたといった方がいいかもしれない。手を掴まれていた俺は混乱しながらも様々な考えを巡らせていた。



 ていうかティファールさん、手が超痛いよ。握力まじぱねぇよ。何キロだよ。



「ふぅ、ここまでくれば大丈夫…ですかね。鷺ノ宮さん、一応お訊ねしますが……嘘か本当か、はすぐに分かるので出来れば嘘はつかないでくださいね? ふふふっ、鷺ノ宮さんって部屋を出る少し前に鑑定…使いましたよね? 私のステータスどうなってましたか? 特に種族とか。種族とか、種族とか」



 ティファールは笑いながら詰め寄ってきた。そこには可憐な微笑が花咲いていた。

 だが、目は据わっており、俺は戦慄を覚えた。そして傍目から見ても俺の表情は青ざめていた。まさしく蛇に睨まれた蛙のようだった。



 そして俺は思う。



 ………………あ……今日って俺の命日?



 焦燥に身を焦がしながらも脂汗を垂らしながら打開策を考える。



 ちっくしょぉぉぉ!! 鑑定なんてするんじゃなかった!! 好奇心猫をも殺すとか誰かが言っていたが、マジだった。先人達の言葉は大切だったわ。



 まずは冷静になれ、俺。なによりも大事なのは状況把握だ。人間なんだ、不可能なんてないはず!! 人間の可能性は無限大って誰かも言ってた!! ……気がする



 薄暗い特に家具などもない殺風景な部屋 殺気超出しているティファールさん 鍵が閉まったチェーンぐるぐる巻きのドア 部屋の奥に追い詰められちゃった俺



 ………あ、詰んでね? これ。



 どうしよう、どうしよう。ここは日本人の8割の社畜が出来るらしいジャンピング土下座で誠意をみせるか!? (ソースはサラリーマンの親父)いや、それは悪手だろう。恐らく首くらいザックリされちゃうと思う。いい案が思いつかねぇ……



「鷺ノ宮さん? さっさと返事してくれませんか? 答える気が無いのならその首……飛ばしますよ? ふふふっ」



 あかん。ティファールさんの目はマジだ。マジで首飛んじゃう。それになにが「ふふふっ」だよ。こっちは冷や汗だっらだら流して頭をフル回転させてこの状況を打開する策を考えてんだぞゴラァ。まあいいや、どうにでもなれっ!!



「ああ、そうだよ!! あんたに鑑定使ってあんたの種族が吸血鬼って知ってるよ!! それがどうしたよ? 知られてしまったから怖いってか!? お? お?」



 ……しくじったわ。つい挑発染みた返答しちゃったよ。

 だが、俺は都合の悪い過去は振り返らない主義なんだ。さぁ、前向きにガンガンいっちゃうぜぇ!! さてティファールさん、どう返す!?



「ふふふっ、自分の今の状況が分かってるの? 力もまともに使えない貧弱勇者が粋がるとは愚かな事この上ないわね。お望み通りぶち殺してあ げ る。ふふふっ」



 ニヒルな笑みを浮かべながらティファールはメイド服から刃が1メートル程の斧を取り出した。それを見た俺は焦燥に駆られ、打開策を考えながらも辺りに使える物はないかと再度見回した。



 そして空気に緊張が走る。



 ……え!? その斧、メイド服に絶対納まらないよね?

 てかティファールさんキャラ崩壊してるよ? やばいやばい。だが!! 俺も黙って死ぬほどお人好しではない。



 せめて小さくも大きくもない夢が詰まった双丘でも揉んで……じゃなかった。危ない、危ない煩悩こぇぇ。



「ま、待て、話せば分かる……じゃなかったぁ!! そっちがその気ならやってやらぁ!! 《身体強化》!! あと初めてなんだが……なんとかなるだろ。うん。《吸血鬼化》!!」



 俺は慌てて言葉を撤回すると共に口早に詠唱を始めた。



 あ、あぶねぇ、話せば分かる、って有名な殺されるセリフじゃねーか!! 訂正したからセーフだ、セーフ。

 


 俺が叫んだ瞬間、身体強化により体は透明の何かに包まれる。そして吸血鬼化によって犬歯が少し伸び、黒色から赤色へと双眸が変色した。その目は鮮血をも想起させる。



(吸血鬼化と身体強化でmp200消費か。mp消費については後々確認する必要があるなぁ)



 スキルを無事、使用する事が出来たからか、焦りや緊張といったものが薄れた俺はティファールの様子を窺おうとしたが、殺気を放っていた筈の彼女は驚愕の表情を浮かべながらパニックに陥っていた。



「えっ? えっ? えええ!? 吸血鬼なの!? 勇者のくせに!? それに普通にスキル使えちゃうの!? 召喚されたばかりだよね貴方!? えええ!? どうしよう。どうしよう……」



 吸血鬼化と身体強化のスキルを使用した事により、ティファールは酷く狼狽していた。目も盛大に泳いでおり、これが演技だったのならばもうそれは一流女優のそれだ。



「ふむ、油断を誘う作戦かもしれないからな。念には念をということでmpは全て使おう。『氷悉く、我が刃となれ!! 《氷刀 零華》!!』」



(ほほう、頭の中に氷魔法なら氷魔法のスキルの詠唱が何故か浮かんでくるってのは有り難いな。だがこの氷刀、大層な名前ついてる癖に一定時間経つと消えるのか。ま、そんな事まで知る事が出来るとはスキルって便利だなぁ。まあ残せてしまったら鍛冶屋の利用価値ないもんな……まぁいいや、相手が悪かったなぁ!! ティファールぅ!! 覚悟ぉぉ…お…おお??)



 俺は魔法で作った氷刀を両手で持って構え、先程まで居丈高としていたティファールを斬ろうと右足を一歩踏み込んだのだが、肝心の俺を殺そうとしていた張本人は土下座をして「すみません、すみません」と呪詛のように繰り返し呟いていた。



「……………ふぇぇぇぇ!?」



 目の前の光景に頭が追いついていないのか、俺は珍しく素っ頓狂な声を上げて馬鹿面を晒す事となった。



 あ、この世界にも土下座の文化あったんですね。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「あの……鷺ノ宮様本当にすみませんでしたっ!! 処罰は何でも受けるので何なりとお申し付け下さいっ!!」



 ティファールは俺の親父も、おぉ、と感嘆を上げてしまうくらいの綺麗な土下座をしていた。この土下座は俺みたいな素人目にも分かる……土下座のベテランとみた。



「あ、わ、分かったから顔を上げてくれ……な?」



 急に大人しくなったティファールによると吸血鬼の同族殺しは禁忌とされる事なんだとか。そして王国が近々勇者召喚をすると噂になっていたので吸血鬼の一族の中で一番若いティファールがスパイ役に選ばれメイドをしていたが、俺に自分が吸血鬼だとバレたと思い始末しようとしたが、俺は吸血鬼だったので土下座して謝罪を。っていうのが吸血鬼の里から出てからの今までの動きならしい。



 ティファールの斧は土下座をする少し前にメイド服へスルリと納められていた。

 多分これ、異世界七不思議じゃないだろうか。



「……ティファールさんって俺を殺そうとした時の口調が普段の喋り方だよね? 罰は……そうだな、さっきみたいな普段通りの口調で俺と接してくれ……って事でどうだろうか? 砕けきった口調の後に丁寧な、ですますで話されたらむず痒いったらありゃしないよ?」



 そう言いながら俺は魔法で作った氷刀を手離した。

 瞬間、氷刀は粉々に跡形もなく砕け散った。



「……ですが私達は下僕と主人の関係。そのような恐れ多いことは……いや、あれをすれば…」



 ティファールの発言を即座に拾った俺は理解すると同時に目を瞬かせた。



 ……は? 下僕と主人!? メイドと客人じゃねーの!? ……多分気にしても仕方ないわ、これ。そしてあれって何よあれって。



 ティファールは右手を顎にあてながら何かを悩んでいた。

 そして少し時間が経つと憑き物がとれたかのような屈託の無い笑みを浮かべてゆったりとした足取りで俺の下へと歩み寄ってくる。



「少し失礼しますね?」



 ティファールは右手をメイド服のポケットに突っ込んでハサミを取り出し、左手で優しく俺の目が完全に隠れる程に伸ばした前髪を掴んで「前髪切りますね~」と言いながら、ジョッキジョッキ切っていった。



 そのメイド服はハサミまで出てくるのか。随分と万能なんだな。



 そして俺、切っていいって許可してないんだけど!! 俺の意思は無視!? 無視なの!?




 口には決して出さず、心の中でも愚痴っていたらいつの間にか眉毛辺りまで前髪を切られていた。ぱっつんとかになったら文句ブーブー言ってやろうと思っていたが意外と上手かった。



 ティファールは美容師になれるんじゃないだろうか。

 切った髪は何故かティファールが大事そうにコッソリとメイド服に入れていた。

 


 おい、ティファールさん。その髪どうするんだよ。コッソリと入れてるけど気づいてるからね!? 藁人形とかに使わないでよ!? 絶対だよ? 絶対だからね?



「ふふふっ。これでちゃんと目が見えますね。綺麗な赤目………紛れもなく吸血鬼の目ですね。疑いようがありません。これでまずは終了っと」



 ティファールは顔を覗き込むような態勢で俺の目を確認した直後、頬を紅潮させ、恍惚といった表情を浮かべていた。俺の目はそんなに良いものなのだろうか? と思いながら首を少々傾けていると最後の仕上げ。といった雰囲気で俺の愛用の地味な伊達眼鏡をひょいっと奪い去り



 バキバキグシャバキバキ



 右手で握り潰していた。それはもう原型が分からないくらいに。

 そしてポイっと後ろに投げ捨てていた。



「………ふぇぇぇぇ!? ちょ、それ俺の大事な大事な地味ファッショングッズなんだけど!! ちょ、原型分からないくらいに握り潰しちゃってるし!!」



 ぼけーっとしてしまっていた俺は慌てて原型が分からなくなった眼鏡だったであろう物体を拾うと同時に少しだけだが虚ろな表情に変わる。



「ふふふっ。鷺ノ宮様、落ち着いてください。これは言うなれば儀式のまだ準備段階。まだ始まってもいないのですよ?」



「いや、笑い事じゃないからね!? そして儀式!? なにがしたいのか俺にはさっぱり分からないよ!!」



 すっかり俺はツッコミキャラへとクラスチェンジしていた。そして俺は普通に会話をする事が出来ている今の状況に疑問を抱いた。



 あれ? 俺のコミュ障発動してなくね!? もしかしてコミュ障卒業しちゃった感じ!?



「それはそうと鷺ノ宮様、吸血鬼同士も血を吸える事をご存じですか? 男は女の血、女は男の血しか飲めないというのは当たり前ですが」



「それはそうとって……もういいや………ん? それが出来るなら吸血鬼って吸血鬼同士の血を飲めばいいわけだからわざわざ人間の血を吸う必要は無いんじゃ…」



 俺はティファールが奇妙な事を口走ったので、怪訝そうに眉をひそめた。



「ああ、説明不足でしたね。言うなれば吸血鬼の血の吸血はおやつ。人間の血はメインディッシュや魔力回復ポーションといったところでしょうか。それに吸血鬼にとって血は魔力と言って差し支えのない物。同族だからといってそう何度も吸わせて良い物じゃ無いんですよ」



「あー、成る程成る程。分かった分かった。で、どうして俺にそんな話を?」



「え……えっと……その……私の血……飲んでみたくありませんか? 一度吸われる体験もしたいな~。なんて私も思ってましたし!」



 何故かティファールが顔を真っ赤にしてモジモジしながら言い放つ。

 何が恥ずかしいのだろうか。話を聞く限り恥ずかしがる要素は見つからないのだが。等と俺は全く理解出来ずにいた。



「ちなみに吸血鬼の血って旨いのか? 吸血鬼が吸血鬼の血を吸うって考えた事もなかったんだが」



「それは勿論、美味しい…………らしいですよ? ささっ、早くお召し上がり下さい! さあ! さあ!」



 息を荒くしながらティファールさんは俺の顔に自分の白く綺麗なうなじを近づけて来る。仄かに漂う妖しい色香が理性という壁を根本から瓦解させる。



 女性特有の良い香りがぁ……ティファールさん色気あるなぁ、頭クラクラッきちゃうよ。



「……ん、分かった。旨いのなら吸ってみたいし……んじゃぁ、俺がティファールさんの血を吸うからティファールさんはその間俺の血を吸っていてくれよ。吸った分は返すって事で。これで魔力の問題は無いだろ?」



 そう言うとティファールは倒れるんじゃないか? と思うくらい顔が真っ赤になりながらも「わ……分かりました!!」と返事していた。そしてお互いお互いのうなじに顔を埋めて牙を突き立てた。


 


 二人以外誰も居ない部屋だったこともあり、二人が喋らなくなった事で血を吸う音と、妙に艶かしいティファールの声が響く。紙切れ同然の理性との戦いは苛烈さを増していく。



 ていうかティファールさんってわざと声出してね!? ていうか流れでなんとなく血を吸ったり吸われたりしているが俺って今あの可愛い金髪碧眼の……いや吸う前に目は赤色に変わってたな。俺は今、可愛い女の子の首に顔を埋めてる状態………あ、意識したらなんかドキドキして……斧持ってるティファールさん思い出したら急に覚めてきたや。それよりも意外と美味しい血を吸おーっと。




 数分後



「……ふふふっ。これで下僕と主人の関係じゃなくなったから普段通りの口調で話せるわね。あなたの下僕も悪くなかったんだけどね、やっぱり今なった関係の方が……」



 ティファールは吸血行為の後だったからか、顔が真っ赤になっており、すんごい色っぽかった。歳上って本当に怖い。俺みたいなチェリーボーイならイチコロだよ。



「ん? やっと砕けた口調になったのはいいんだけどさぁ。なんで照れてるの?吸血に何か変な意味でもあったの!? ちょ、ちゃんとこっち見てよ! なにあからさまに顔逸らしてるの!? ねぇ!」



 ティファールは俺が目を合わせようとしたら、直ぐに目を逸らした。そして照れ隠しのつもりなのか、何度か咳払いをしていた。



「……え? 吸血鬼の男女の血の吸い合いっていったら結婚の儀式、もしくは夫婦の愛情表示じゃない」



 ティファールは当然だろう、言いたげな目つきで俺の質問に何を当たり前の事を、といった感じで答えた。そして俺の額に冷や汗が垂れる。



 え? 嘘だよね!? なんか異世界飛ばされてから異性と、どんどん関係持ってしまってるけど俺大丈夫? 昼ドラ展開で刺されるんじゃないの?



「おいおいおい、結婚て………吸血鬼同士の吸血する事=結婚なら事前に教えておこうよ……それになんで俺と結婚を?」



 俺は、溜め息混じりに口を開いた。



「ふふふっ、私は貴方の容姿、性格、そしてその綺麗な目に惚れたの。吸血鬼の結婚する理由なんて誰もがそんな感じよ? 後、伊織って呼んで良いかしら? 夫婦になった事だし、名前が他人行儀だと嫌なの。あ、私のことはティファでお願いね♪」



 ティファールは一方的に坦々と話を進めていたが、一点だけ突っ掛かりたい部分があった。



 俺の容姿に惚れたぁ? ティファールさんは相当な変わり者のようだな。



「…あ、ああ。なんか気が回らなくてすまないな……」



 何か自分に非があったような気がしたら直ぐ様苦笑いを浮かべて謝罪。といったボッチになってから癖付いた行為を発揮する。



 や……やべぇ、これがコミュ障か。言葉が殆ど浮かばねぇ……おい、誰かそれは童貞だからだよ? とか言ったか? 煩いな!!



 ……あれ?なんで俺は謝ってるんだ? ただの被害者だったよね? 俺。



「ありがと伊織♪ ……あー、このツインテール鬱陶しいし髪を下ろそうかしら。人間はこの鬱陶しい髪型が好きだって聞いていたから嫌々してたの。いいわよね?」



 ティファールは俺にそう訪ねながら髪を下ろしていた。超人見知りの俺はもう何度目か分からないツッコミを心の中でした。



 おい、聞く意味あったのか? 聞く前から下ろしてんじゃん。



「……別に髪型なんて長いならなんでもいいし、それに、て、ティファならどんな髪型でも可愛いだろうさ」



 多少、言葉に詰まりながらも言い切る事に成功した。



 コミュ障に愛称で呼べとか難易度たけぇな。

 あ、コミュ障治ってなかったや。



「あ、ありがとう……あ、あー!! そろそろ本当に勇者の所に行きましょ? 今度こそ、ちゃんと案内するから……ね?」



 然り気無く褒められた事で赤面させたティファールは、ふいと顔を背けて照れ隠しをしているのか「さ、さー! いくよー!」と口早に呟きながら俺の手を取って勇者達の所へ向かおうとする。



 目を逸らしながら手を取るとは器用だなぁ



 異世界に来るまでは異性と全く接点無く、こんな体験が出来なかった分、こんな日も良いなと思うのは童貞だからだろうか? 否。こういう気持ちは普通だ、普通なんだよ。等と自分に言い聞かせるように呟く男が一人いた。



 そしてふと思った。



 ……あれ? 俺ってまた、言葉の選択肢ミスった気がする……現実にリセットボタンありませんかね?


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