表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/72

第4話 テンプレイベント…終わってました!

遅くなってスミマセン。最低毎週1度は更新します。

「知らない天井だ……」



 半ば放心したような表情を浮かべながら人知れず呟くが、慌てて正気に返って現在の状況などといった事に関しての考えを頭の中で巡らせる。




……………………




 いや、待て待て待て。

 確かポンコツ女神……じゃなかった、リフィアに会った後、俺含むクラスメイト+αが大広間に全員銀髪の綺麗な女神様に召喚された感じになってたよね?



 ……まさか、俺がリフィアの写真で鼻血垂らして気を失っていたから病室に運ばれてしまった……?



 勇者召喚といったら飛ばされた誰かが「ふざけるなよ!」だったり「家に帰らせろ!」といったお決まりのセリフをまず叫び、その後、勇者の素質がありそうな自称イケメン君が皆をまとめ、召喚した国の美女であろう王女様が「勇者様方、この国を魔王から救ってください。お願いします!! (嘘泣き)」という感じの言葉を発した後、二つ返事で引き受けちゃう。みたいなお決まりイベントが必ずあるはず……



 俺はそんな貴重なイベントを鼻血程度で逃した……の……か!?

 いや待て、まだ可能性は捨てるべきではない。大広間の端辺りにベッドが1つちょこんとあった。うん、これだ。ほんの少しだけ無理がある気もしなくもないがこの可能性があるはずだ。



 一縷の期待を胸に、ベッドに寝かされていた体を起こして辺りをきょろきょろと右左に頭を動かして見回してみたが、視界に映ったのは5畳程のベッドとクローゼット以外何もない殺風景といって差し支えのない個室だった。



 不幸中の幸いは眼鏡をかけていたということだろうか。気絶したときに取れてなくて良かったと心の中で安堵しながら胸を撫で下ろす。かれこれ使い始めて2年目に突入したこの眼鏡。かけてないと落ち着かなくなる程に欠かせない存在となりつつあった。



 ………………………



「嘘だろぉぉぉぉぉぉ!?」




 頭では理解をしていたが感情は追い付いていなかったのか、俺は悲痛な面持ちをさせながら嘆いた。叫んだ事で少し気分が晴れたのか、徐々に落ち着きを取り戻す。



 ……あ、いや……分かってたよ? 俺がテンプレイベントを鼻血で倒れて気絶していたせいで逃してしまった事くらい。



 あ、いや、別にどうしてもってわけじゃなかったし!! ラノベで疑似体験してたし!! ……ぐすっ…




 大声を上げた直後、扉の近くで待機していたのか凄い勢いで部屋のドアが開かれ、メイドと思しき女性が入ってきた。



「どうされましたかっ!!」



 純金を溶かし、流したような金髪のツインテールに、海もを想起させる碧い瞳。年の頃30には満ていないと思うが、それでいて大人の女性独特の色香が仄かに漂ってくる。


 

 ハッキリ言ってメイドさんは超美人だった。



「………あ、だ、大丈夫。ちょっと混乱してしまって……あは、あはは……」



 美人なメイドを見た事で無意識にガッツポーズを作っていたが、手の動きとは裏腹に口はとても情けなかった。



 ……いやん。まさかのここで長年のボッチ生活によって発症したコミュ障が足引っ張ってんの。絶対間が持たないよ? これ。



「そ、そうでしたか。私は鷺ノ宮伊織様のお世話をさせて頂くことになりました、ティファールと申します。鷺ノ宮様はお休みになられていらっしゃったのでお名前は失礼ながら他の勇者様方に拝聞させて頂きました」



 丁寧な口調に洗練されている一つ一つの動作。そして滅茶苦茶綺麗なお辞儀にメイド服。これが本当のメイドってやつか。二次元では何度か画面越しに対面していたが、三次元で見る事はこれが初めてだな。



「………その鷺ノ宮様って言うのは止めて貰えないか? 出来れば呼び捨てがいいんだけど無理ならせめて さん くらいには変えて欲しい。なんか、ちょっと……気持ちが悪い……」



 俺が苦笑いをしながら頭をフル回転させて考えた言葉を口に出すが、セリフを考えた割には少々ぎこちない口調だった。

 これがコミュ障の限界っす……



「………では、鷺ノ宮さん。と呼ばせて頂きます」



 メイドさんは超物分かりが良かった。



「………凄く助かる。それと勇者様方って言っていたが、今現在の状況を出来るだけ教えて欲しい。今後の俺の活動内容に関わってきそうだから」



 俺は可愛いメイドさんに好印象を与えてみようと、表情を引き締めてから右手の中指でかけていた眼鏡をクイックイッとやりながら話してみた。



「そうですね。簡潔に言いますと召喚された方々は勇者としてこの城……とは言っても鷺ノ宮さんは目を覚ます前に、この部屋に運ばれたのでご存知ないかもしれませんが今、貴方の居るこの部屋はラギシス王国王城の数ある客間の中の一室です。召喚された方々はこの部屋ような客間の一室を1人1部屋、そして、メイドや執事を1人につき1名を世話役として与えられる事になり、訓練によって戦闘経験を積み、能力を向上させた後、魔族及び魔王を滅ぼす……という予定だった筈です」



 淡々とした口調で説明をしていく。俺の行動は見向きもされなかった。



「う、うーん、大体ラノベ通り……じゃなかった、予想通りって感じかなぁ。どうせ、魔王を滅ぼす。とか言っちゃった頭がくるくるぱーな俺達のリーダー的存在がいるんでしょ? そんなアホな発言をした人の名前って分かる?」




「くるくるぱー……ゴホンッ、鷺ノ宮さんがこの部屋に運ばれた時にはまだ、そのような話を王女様はされていませんでしたので分かりませんが、リーダー的存在なら恐らく御堂光樹様かと。称号に勇者と書いていたのもあの方だけだったので」




 ティファールは一瞬、悩むような素振りを見せた後、淡淡と答える。が、悩んでいたのはメイドだけでは無かったようで、もう一人頭を悩ませていた人がいた――俺だ。難しい顔をさせながら目の瞬く回数が明らかに普段よりも多い……というか多すぎる。



 ………………御堂 光樹って誰よ。

 しまったぁぁぁ。俺ってまともに名前知ってる人って楓しかいないじゃん。名前聞いたところで俺が知ってる筈がなかったよ!! ……まあ、こればっかりは仕方ないな。どうせ、ちやほやされているだろうし後で勇者殿の面を拝みにいきますかぁ。



 まあいいや。それよりもメイドさんってのは強いのかねぇ? たまに戦闘メイドとか聞くし!! ……いや、聞かなかったかも……ま、いいや、せっかくだし鑑定を使ってみるのも一興だと思うんだ。ということで………鑑定っ!!



ステータス

ティファール 26歳

レベル34 種族 人間(偽装中) [吸血鬼]

hp 1200/1200

mp 400/400

筋力 750 

耐性 1000

敏捷 1200

魔力 420

魔耐 560

幸運 73


スキル 斧術 闇魔法 身体強化 料理 鑑定 偽装


称号 吸血鬼の一族 王城のメイド



 気分転換にとした行為が更なる重荷となって俺にのしかかる。額には気持ち悪い汗が垂れる。



 このメイドさん、偽装してるよ。偽装。

 これ、ちょっと……いや、すんごい危なくない? 主に俺が。

 一応質問しとくか。安全な可能性も……



「ティファール、さん。この国……というか人間の敵ってどんな種族、がいるですか?」



 怖ず怖ずといった表情を浮かべながら、ティファールに訊ねた。



「説明不足でしたね。人間の敵は魔族……主に鬼族や夢魔、吸血鬼などいろいろな種族が敵となってますね」



 駄目で元々、といった気持ちで訊ねたのであまり心にダメージはこなかったが、俺は元気を少し無くして沈みこんだ。



 吸血鬼ってダメだめですよね。ティファールさんや俺の吸血鬼化ってスキルなんかはもろアウトじゃん!! ……いつか逃げるか、この城から。



 はぁ……俺の足りない頭で色々考えても時間の無駄だな。

 ティファールさんが言っていた……あー、誰だっけ。み…みど…そう!! 御堂光樹だよ。名前を覚えいる内にそいつの顔を確認してから現実逃避だな。



 体調が悪いとかいって何日かベッドに籠ろう。そして俺はティファールさんを鑑定しなかった。うん、そうだ。それで万事解決だ。何か言われてもショーコがないからな、ショーコが。バレなきゃ何やってもいいんだよ。



 今後の予定を逸速く決めた俺は早速行動に移そうと今、出来そうな事を選んで尋ねる。



「ティファールさん、え、えーっと、勇者達が何処にいるか……とか、ご存知ですか? ご存知でしたら案内をして貰いたいのですが……」



 うぉぉぉぉ、言葉詰まるぅぅ。もし俺が、イケメン君ならメイドさんをコロって落とせるんだろうな……世の中不公平だよ……はぁ……



「恐らく召喚に使われた部屋だと思います。ここからそう遠くありませんし、案内致しますよ」



 ティファールは営業スマイルのような笑顔を見せながら快諾した。



 俺は勇者達のいる召喚に使われた場所とやらにまで案内をして貰う事になったので、ベッドからゆっくりと立ち上がり、5畳程の客間を後にした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ