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第37話 勇者side 6

遠藤君視点続きます。

感想欄で指摘されたのですが、勇者sideや閑話は読まなくても主人公である伊織視点(本編)を読む際に内容が分からなくなる……といった事は起こらないので安心して勇者sideをスルーしちゃってください( `・ω・´)ゞ

 俺はブジュさんに部屋へと案内をしてもらった後、疾風こと森内零也と漆黒を部屋へと招いた。

 案内された部屋は5畳程度の部屋で、クローゼットとベッドのみの殺風景といって差し支えのない部屋だった。



 俺達3人は床の上で胡座をかきながら、今後の事について話し合う事となった。



「まずは……スキルを教えあうべきだろう。仮にも勇者召喚によって召喚されたんだ。3人で行動すれば死ぬ確率はかなり減る筈。3人の中でスキル隠す事は極力避けるべきだろう。俺の予想なんだが、召喚された人達は例外なく全員が鑑定スキルを所持していると思うんだ。ここだけの話、俺は水瀬先生をこっそり鑑定した。水瀬先生のスキルに鑑定があったから俺は全員に鑑定スキルがあるのでは? と予想した。ちなみに水瀬先生には煙魔法ってスキルがあったんだ。なんか強そうじゃないか? もし水瀬先生が敵になった時を考えるとゾクゾクしちゃうな!! あの人独身だし、悪女なんかにすぐ騙されそうだ!!」



 俺が零也と漆黒に向けて今現在の考えを話した。

 話し終わると同時に、漆黒が怖ず怖ずといった様子で口を開いた。

 体調が悪いのか、あまり顔色が良くなかった。



「常闇……その……スキルの事なんだがな。俺には、錬金術や鍛冶のスキルしかなかったんだ。攻撃系のスキルがない俺は後々、足手まといになる。ま、邪魔な存在ってやつだな。だから俺は城でのんびりと1人で過ごそうと思う。常闇と疾風の2人で頑張ってくれや」



 漆黒は寂しそうな表情を浮かばせながら弱々しい口調で言い放ち、部屋を出ていこうと立ち上がり、ドアノブに手を掛けた時だった。



「バカヤローッ!! おい漆黒。てめぇ舐めてんのか? いつか言っていたな、魔法が使いたい、と。今、俺らがいるのは魔法が使えるファンタジーな世界だぞ。それなら、お前は俺らを頼ってでも魔法を使えるように努力をするべきじゃないのか!? それともお前は自分が魔法のスキルを使えないからといって、俺らがお前を邪魔者扱いするとでも思ったのか? お前にとってのオタク3人衆の友情はそんなもんだったのか!? 俺達を頼れよ漆黒ッ!! おい、常闇、お前からもあの馬鹿に何か言ってやれ!!」



 怒声が部屋中に響き渡り、言い終わると同時に零也は俺に目配せをした。



「オタク3人衆の称号も安く見られたものだな。錬金術や鍛冶のスキルがあるのなら武器やアイテムチートで最強になれるかもしれないじゃないか。今の姿に拘らなければ人体改造なんかも手かもしれないぞ。魔法については俺達が手伝ってやっから、2人で頑張れとかそんな寂しい事言うなよ」



 俺は2人で頑張れと言った漆黒に呆れながらも零也とは違い、普段通りの口調で言い放った。




「うおぉぉぉぉぉ!! 俺は良いオタク仲間を持てて幸せ者だぁぁぁぁ!!!」



 漆黒は踵を返し、目を手で擦りながら零也に飛びついた。



「おいっ!! 離れろ漆黒!! 俺にそっち系の趣味は無いぞ!! 男の涙はキモイ上にみっともないから早く泣くのを止めろ!! ……あれ? 漆黒泣いてなくね? もしかして嘘泣き? 嘘泣きだったの?」



 零也は飛びついてきた漆黒を引き剥がそうと、漆黒の顔を自分から遠ざけようとした際に目を覆っていた手が離れ、零也は漆黒が嘘泣きだったという衝撃の事実を知ることとなった。



「ふぅ、漆黒の心配事も解決した事だ。スキルは後で確認するとして、まずは俺のこれからの予定を聞いて欲しい。他言無用だ。絶対漏らすんじゃねぇぞ。……俺は1年後、この城を出ていこうと思ってる。本音を言えば今すぐ出ていきたいんだが、今の俺では外に出た時に魔物に襲われて死ぬかもしれん。だから1年ここで訓練を受ける事にした。まぁ、出ていく理由は知っていると思うが獣耳っ子に会う為だ。だが、城を出ていった際、もしかするとこの国から俺に追っ手が寄越されるかもしれない。人間を裏切った、や、連れ戻す、といった理由でな。で、その追っ手が俺のクラスメイトの可能性もあるわけだ。だから俺は今からクラスメイト達のスキルを確認してこようと思う。スキルを知っていれば対策を立てる事が出来るからな」



 勇者召喚された際、手にスクールバッグを持っていた俺はそれも一緒に異世界に召喚されていた。

 持っていたスクールバッグの中を漁り、ペンとノートを取り出して悪そうな笑みを浮かべながら漆黒と零也に見せつける。




「おお!! そんな先の事まで考えているとはな!! 流石、腐ってもクラス代表!! 頭脳派の常闇はまじでぱねぇな!! そんじゃ、俺は漆黒と適当に駄弁っとくから、いってら~」




 零也は手を振りながら漆黒と一緒に俺を見送っていた。





 部屋から出た俺は、クラスメイト達がいる部屋に向けて鑑定を使った。

 5人目くらいまでは間違えてドアを何度も鑑定してしまったが、次第にコツを掴み、部屋の中にいるクラスメイトを手際良く鑑定してはノートに書き込むといった行為を繰り返していった。




 途中、メイドや執事が通りかかり、俺に声を掛けてきたがのらりくらりと口から出任せを言って迅速に対応した。不審がるメイドもいたが、そこはこちらの世界ではこういった奇行が俺の習慣だ!! などと言ってゴリ押しした。



 そしてスキル鑑定も終わりへと近づき、最後である望月先輩の部屋の前に着いた時だった。



 ドア越しに不気味な声が部屋の中から聞こえていたので、俺はドアに耳を近づけ、聞き耳を立ててしまった。




「……うぅっ、何でイオ君は私を置いていったの? 私と離れたかったのかな? いや、違う……あの邪魔をした王女は誰かを守る為って言っていた……私を守る為に旅に出たのかな? うん、きっとそうだ。昔からイオ君は私を何度も守るって言ってくれていた……私を守る力をつける為に旅に出るから、私にその事を伝えるのは多分、恥ずかくて言えなかったんだ。イオ君って恥ずかしがり屋だしなぁ……そんなところも大好きなんだけど……でも、寂しいよイオ君……イオ君がいないと思うと辛いよぉ……うぅっ、ケータイの中にあるイオ君フォルダの画像とポケットに入っているイオ君と昔、一緒に撮った写真だけで生活だなんて物足りないよ……辛いよ……イオ君に会いたいよ……私の名前を呼んで欲しいよ………。決めた……もう離さない、もう離れない……あの時は躊躇ったけど、もう躊躇わない。私とイオ君が二度と離れないように今度こそ私の手とイオ君の手に手錠をつけよう。なにをするにも一緒………うん、そうと決まれば早く手錠を作らなくちゃ……」



 …………………………………。



「…………………俺は何も聞かなかった。何も聞こえなかった。うん、何も聞いていない、何も聞いていないぞ」



 俺はドアから静かにゆっくりと離れ、逃げるように早足で漆黒と疾風のいる自室へと向かった。




や……やばい、遠藤君視点超楽しい……('ω' )

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