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閑話 1 望月楓 伊織side 

これで閑話終了ですっ

本当、駄文でスミマセン……

 僕は今日、初めて知った。




 ―――――楓が僕のせいでイジメられていた事を










 今日は、用事があったので楓に先に帰ると伝える為に楓の教室に寄る事にした。



 そして見てしまった。

 楓の私物や使っていた机に椅子といった物が切り刻まれたり、落書きをされた無惨な状態を。



 何が起こっているのか分からなかった。

 だが、僕が入ってきた事で静寂に包まれた教室で、一番初めに口を開いた女子生徒がいた。



 その女子生徒の言った事を僕は理解すると、無意識でその女子生徒の胸ぐらを掴み、大声で怒声を上げていた。



 問い(ただ)してやろう。

 そう思った時だった。



 教室へ楓が息を切らして入ってきた。



 不味い、そう思った。

 楓が今この光景を見てしまったら悲しんでしまう、泣いてしまう、どうしよう、幾つもの考えが頭の中を巡らせる。




 だが、楓はそんな光景に一切動じず口を開いた。

 平淡な話しぶりで、悲しみや憤りなど一切感じさせなかった。




 何故怒らないのか、僕はそんな態度をしていた楓に訊ねた。




 返ってきたのは、こんな事くらい別にどうってことも無い、僕がいればいい。そんな言葉だった。楓の口振りは、まるでそんな事は今までに何回も経験してきたというように。




 そして最近、何故か楓が持ち歩くようになっていた水では無い液体が入った容器を見て全てに合点がいった。最近の楓の不可解な行動などを全て理解した僕の目からは、いつの間にか涙が溢れ出ていた。



 それと同時に、楓に酷い事をした女子生徒達や、自分に対してへの怒りも止まる事無く溢れ出していた。



 そしてその怒りを近くにあった机にぶつけた。

 僕は机を蹴り飛ばしながら女子生徒達に出ていけと怒鳴る。



 女子生徒達がいなくなった後、楓は慣れた手つきで後始末をしようとしていたので、それを止めさせて僕一人でやろうとしたが楓も一人でやると言って聞かず、水掛け論になっていたが楓が、なら一緒にやろうか、と妥協案を言いその案で落ちついた。



 後始末をしている際、僕は自己嫌悪に陥り涙がいつまで経っても止まる事は無く、涙を流しながら楓に向けてただただ謝罪していた。



 僕は自宅に帰る前に、楓の母親に謝罪をしに行く事にした。

 楓には謝罪をしたいからと言って楓の家に向かわせてもらったが、僕の心の中は違った。楓は僕を全く責めなかった、そのせいで余計に辛くなった。だから




 ――――――誰かに責めてもらいたかった





 楓の家に着くと楓の父親も珍しく在宅していた。

 そして楓は話す事を嫌がっていたが、僕は勿論、楓にも今回の事の顛末を楓の両親に話してもらった。



 話し終わると僕はまず謝罪をした。その謝罪には打算など一切ない。

 だが、その後に少なからず責められると思っていたが、僕の予想とは反して楓の両親僕を責めなかった。責めるどころか、ありがとう、と言ってきた。

 そんな言葉を聞いて、僕はもっと苦しく、辛くなった。



 僕は楓の両親に謝罪した後、自宅へと帰った。

 母親に楓の事を話しても、自分の母親も僕を責めなかった。




 そして僕は自分の部屋に籠り、独りで悩んだ。

 楓は、全て自分(わたし)が悪い、と僕に言っていたがそれは違う。




 何が悪かった?



 何がいけなかった?



 何が楓を傷つけた?



 何がこの状況を作り出した?




 どのくらい悩んだだろうか、もしかしたら一日過ぎていたかもしれない。

 だが、答えは出た。



 悪いのは




 ――――僕と楓に害を与えた、あの女子生徒達だ。




 僕への罰なら何だって出来る、執行するのは僕で対象も僕だから。

 だが、女子生徒達は違う。



 どうしようか、どんな罰を与えようか、優しい楓に害を与えた人だ、温い罰なんてあり得ない……



 あぁ、楓に害を与えた人達を




 ――――殺したいな




 嗚呼、殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい




 それしか思い浮かばなかった。

 だが、本当に殺したら楓が悲しむ、それが僕を思い止まらせた。



 ならどうすればいい? 死以外の罰があるのか? 僕の罰はどうしようか?



 そんな事をひたすら考えていたら、いつの間にか二週間経っていた。

 その日も(・・・・)楓は僕の部屋の前まで来ていた。



 楓と話せば良い案が思いつくかもしれない、そんな事を考えながら(およ)そ二週間ぶりに楓と会って話をした。



 僕は勿論、まず謝罪をした。

 楓を不幸にした原因は間違い無く僕にもあるのだから。

 そして僕は言った。楓には近づかないようにする、と。

 この言葉は次、楓に会う時には必ず言おうと決めていた。

 楓は優しい、優し過ぎるからこそ僕が近づかないと言わなければいけなかった。

 楓は僕をどうあっても突き放す事はしないだろうから。



 だが、楓は悲しげな顔をしながら僕の言葉を全否定した。



 楓は優しい、だから否定したのだろう。だが、それに甘えるべきではない。

 だから僕は自分のせいで、また今回みたいな事が起こると言った。

 その時言った言葉は思いついた事をそのまま次々に言っていたので、何を言ったかなど殆ど記憶に残っていない。




 そんな僕の言葉を聞いた楓は何故か、転校しよう、と言い放った。

 僕はその言葉を聞いて呆気に取られてしまった。

 そして楓は今回の事は全て学校が悪い、と言い出した。




 学校が悪い、そんな考えはした事が無かった。

 学校が悪いのか? いや、悪いのは僕とあの女子生徒達だ。

 でも学校が無ければ……あの学校じゃなかったら……



 そんな自問自答をしていたら、いつの間にか楓は僕の母親と話をしていた事に気がついた。そして楓は話が終わったのか、僕の家から出ていった。




 楓が出ていった後に母親に話があると言われ、母親に楓と一緒に転校を、と勧められた。



 僕は転校を拒絶した。

 楓と一緒では今と何も変わらないと。

 僕が拒絶しても尚、勧めるのを止めない母親はこう言った。



「自分を責め続けるのが悪いとは言わない。だけれど、楓ちゃんが一緒に転校したいと言ったんだ。それなら罪滅ぼしと思って一緒に転校してやれ」



 罪滅ぼしという言葉が何度も僕の頭の中を反響した。

 僕は心の中で自分を責めて欲しいと、いつも思っていた事あってその言葉に酷く癒された。そして僕は転校を決めた。



 その後僕は、自分の部屋で罰について独り考えていた。



 答えは出た。



 女子生徒達はもうどうでも良い。転校するんだ。もう顔を会わせる事は無いんだ。なら僕や楓にとっては死んだも同然。もう一度何かしてきたらその時考えよう。



 後は僕への罰だ。




 僕への罰は―――――――





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 俺と(・・)楓は転校をした。




 俺は転校する前から決めていた。極力、楓と関わる事を控えよう。



 中学生の間は人と関わる事にうんざりしていた事もあり、俺は不登校と言っていいくらいに欠席が多かった。



 勉学は家でしていた事あって、出席率で怒られる事があっても、成績で怒られる事はなかった。



 俺は敢えて楓以外の人と話さず、友達も一切作らずに中学校を卒業した。



 高校生になると退学があるので、俺が欠席をする事は殆ど無くなった。



 高校生になった辺りだろうか、俺は




 ―――――コミュ障になった……




 転校する前……中学一年生の頃までは、かなりフレンドリーだったのだが転校し、あえて転校する前の自分の性格とは正反対を演じている内にその作った性格がいつの間にか本当の性格と入れ替わっていた。



 そして転校する前に、自分の性格と容姿が原因だったと一人で勝手に決めつけていた俺は前髪を伸ばし、顔をあえて隠すようにした。

 前髪を長くした事がネクラ臭をプンプン漂わせたのだろう。

 楓や楓の両親、そして自分の両親以外とマジで話す機会が皆無だった。




 そんなこんなで、高校一年生の頃にはボッチ、コミュ障という二つの属性を手に入れていた。



 そして高校二年生の頃には楓以外の人と関わるのが本当に苦痛になっていた。

 楓だけはいつも話しているので苦にはならなかったが、あの事の原因である俺の事は少なからず嫌っているだろうに、毎日毎日俺の様子を見に来るなんて楓は優しいなぁ、と思いながらいつも楓と他愛の無い話をしていた。




 そして冬休み前最後の学校の日。

 その日も終礼が終わると同時に楓は俺のいる教室へとやって来た。



 毎度のように抱きついてくるが、人から視線向けられるのも今じゃ辛いんだよなぁ……



 そう思いながら俺は楓から遠ざかる。

 そしていつも通り他愛の無い話をしていたら、いつも通り生徒会の連中が楓を迎えにやってきた。



 そして去年同様、面白可笑しくもない俺の冬休みが




 始まる事は無く、俺は謎の光に包まれた。








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