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閑話 1 望月楓 中編2

 私はいつも通り伊織君と一緒に下校した。

 その時に私は伊織君に、私は迷惑? 鬱陶しい? 邪魔? そんな卑怯な言葉で訊ねた。



 伊織君に拒絶されたくなかった。

 だから私は……卑怯な言葉を使ってしまった。



 伊織君は案の定、「楓が教室に来てくれるのは僕の毎日の楽しみなんだよ? 迷惑と思った事なんて一度もないよ?」と、困った顔や苦笑いをせずに一瞬の躊躇いもなく、笑顔で答えてくれた。

 嬉しかった。

 伊織君からこれからも離れなくていいと思うと…




 そんな会話をした一ヶ月後くらいだったか、

 私は放課後の教室に女子数人に呼び出された。

 呼び出した女子達は何故か学年がばらばらだった。

 私と同じ学年もいれば下級生や上級生もいた。



「ねぇ、望月さん。鷺ノ宮君にこれ以上付きまとうのは止めてくれない?」



 私が指定された教室に着くと同時に、私を呼び出した女子達の一人が口を開いた。



「付きまとう? 伊織君は私と一緒にいるのは楽しいと言ってくれた。何も知らない人が出鱈目な事言わないで」



 私は少し苛立ちながらも先程の言葉を否定した。



「……鷺ノ宮君が邪魔とか言うわけないじゃない。じゃあ、あなたは鷺ノ宮君が邪魔や迷惑、鬱陶しいとか言っているのを聞いたことあるの?」



 先程とは違う女子だった。

 その女子の表情は酷く呆れていた。



「……いや、無いけど、それがどうしたっていうの?」



 私は疑問を疑問で返した。



「……なんかすっごい苛々するんだけど、この人……鷺ノ宮君は嫌と思っていても嫌って言わないって事。私達は、鷺ノ宮君が貴女にずっと付きまとわれて可哀想に思ったから今日、こうして言ってるの!!」



 大きな声で先程の女子とも違う人が怒鳴るように言い放った。



「…………」



 付きまとっていない。そう言いたかったが、確かに私は伊織君のいる所いる所にいつも向かっていた。



 確かに付きまとっているとも言うのかも……いや、でも伊織君は私と一緒にいる事が楽しいって言っていた。



 そんな事を考えていたからか、私は言葉を発さずに黙ってただ立ち尽くしていた。



「はぁ、言い返せないから黙る……か……ま、いいや。はっきり言うけれど望月さん、あなたが目障りなの。凄く邪魔なの。さっさと鷺ノ宮君から付きまとうのを止めてくれない?」



 初めに言葉を発した女子が冷酷な目を向けながら、鬱陶しそうに言ってきた。

 そして私に言葉を発した女子は言葉を続ける。



「鷺ノ宮君と仲良くなりたい子って沢山いるのよ? でも、毎度毎度、邪魔をするように貴女がいつも鷺ノ宮君にくっついてる。恋人かと思ってたけど恋人でもない……あ、貴女知ってるの? 自分がなんて呼ばれてるのか。ま、知らないわよね、貴女はクラスでは孤立してるみたいだし……鷺ノ宮君のストーカーって言われてるのよ? ふふふっ、ピッタリよね。私、それを言い出した人を褒めてあげたいくらい」



「……ストーカー?」



「そうよ、ストーカーって言われてるの。やっぱり知らなかったのね。貴女って自分のクラスで孤立してるでしょう? しかも影も薄いし、話しかけられても小さく返事しかしない容姿も平凡な暗い女が、誰にでも分け隔てなく優しくしてくれる格好いい男の子に毎日飽きもせずに自分からくっつきに行っている。ほら、ストーカーって言葉がピッタリじゃない!! あはははは!!」




「い、いや、私は伊織君以外と」




 会話する事が苦手なだけ。そう言い終わる前に声を被せられ、遮られた。




「ま、私達が言いたいのはそういう事。ストーカーさんは早くストーカーを止めてね?」



 そう言うと私を呼び出した女子達は、もう帰りましょ? と言って私から離れていった。









 そして私は少し伊織君と距離をあける事にした。




 だが、そんな日が一週間程続いたある日、伊織君は私に、どうして来てくれなくなったの? 何かあった? 楓が来てくれないと寂しいよ。と言ってきた。




 寂しいと言われて凄く嬉しかった。行かなくなった理由は言うわけにはいかなかったけれど、私は再び伊織君の教室に行ったり、昼食などを一緒にする事にした。





 そして、私が伊織君との距離を戻した次の日から





 ――――――私への陰湿なイジメが始まった








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