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第25話 冒険者ギルド

 鍛冶屋を出た俺はギルドに向かおうと周囲を見回そうとするが、ギルド、と大きな字で書かれた看板をつけた大きな建物は鍛冶屋のすぐ向かいにあった。



 時間が昼間であった為か、街は数多くの人が行き交いしていた。



 ギルドを見つけた俺はギルドへと歩を進めようとするが急にティファールに腕を引っ張られた為、足を止める事となった。



「ん? どうしたティファ」



 俺は首を傾げながらティファールの方へと振り向いた。



「伊織、ギルドには一人で行ってきて貰えないかしら。私はギルドに登録しないから……いえ、出来ないから……」



 ティファールは苦笑いをさせながら話を続ける。



「ギルドに登録するには自分の血が必要になるの。血が必要な理由は自分以外の人間が自分のギルドカードを使えないようにする為……そしてもう一つ、魔族が登録出来ない様にする為。魔族の血と人間の血は違うから一瞬で魔族と判断できるらしいわ。まあ、それだけなら私が伊織と一緒にギルドに行くのを拒む理由には、ならないんだけれど……ギルドには結構面倒臭い人間がいるのよ……私の偽装を見破れる人間とか……ね……ま、そういうわけで私はさっきの鍛冶屋の近くでうろうろしておくからさっさと行っておい……でっ!!」



 それだけ言うと、ティファールは少し寂しそうな表情を浮かべながらも掴んでいた俺の腕を離して背中をギルドが建っていた方向に向かって勢いよく手で押した。



 そしてティファールは俺に背を向けてギルドとは反対の方向へと歩き出した。



「うおっ!? ……分かった。そういうことならさっさと登録を済ませてくる」



 俺は小さく呟きながらギルドに向かって歩き出した。

 ギルドは鍛冶屋とあまり離れていなかった事あって直ぐにギルドの目の前に着き、そしてそのまま中へと足を踏み入れた。



 外観から大体予想は出来ていたが、ギルドの中はとても広く作られており、二階まであり、多くの冒険者で溢れていた。



 ギルドに入って初めに目に入ったのは巨大な掲示板。

 その掲示板にこれでもか、と思う程貼り付けられた依頼書。



 ああ、これだよこれ……俺はこの光景を見たかったんだよ……



 俺は座って武勇伝等をを語ったりして、がはははは!! がはははは!! と酒を飲んでテンションがハイになっているオッサンやオバ……じゃなかった、お姉さん達を何十人も一瞥しながら受付っぽい場所まで足を運んだ。



 受付っぽい場所には数人が依頼書のような物を持ってたり、小さな濁った石ころっぽい物を持った人などが何人も並んでいたので、その人達の後ろに並んだ。



 数分程すると俺の順番となり、受付をしていた女が声を掛けてきた。



「初めまして。冒険者ギルドへようこそ。受付嬢のリューラです。ご用件は……登録ですか?」



 艶のある茶色のセミロングヘアー。

 スレンダーで、存在感を主張しないちょっと残念な双丘を持ち、ニコニコと営業スマイルをしていた10代後半の受付嬢は、俺が何も持っていない事からギルドに登録をしに来たと判断して訊ねた。



「あ、えーっと……そう、ギルドの登録をお願いしたい」



 俺は頭を掻いて落ち着かせるが、受付嬢の営業スマイルに動揺してしまい少々言葉に詰まってしまったが返答をした。



 ………ダメだ、やっぱコミュ障だ。

 言葉の最初に絶対、あ、えーっと、と言っちまう……リューラさんに絶対キモいとか思われてるよ……



「かしこまりました。では、まずはこの用紙に必要事項を記入して下さい。不備が無ければその後、ギルドカードに血を垂らして登録完了です。初めての登録は無料ですが、その後、紛失したりなどをすると金貨一枚を払う事になるので気をつけて下さいね」



 営業スマイルを一切崩す事は無く、リューラはカウンターの下から紙を取り出し、俺の前に置いた。



 渡された用紙には名前や年齢などといった事を記入するだけだったので、素早く記入して用紙をリューラに渡した。



 リューラは俺から渡された用紙を素早く目を通し、問題無く記入されている事を確認するとその用紙をカウンターの下に仕舞った。



 そしてリューラは俺の目の前にギルドカードと




 ―――――親指くらいの太さのぶっとい針を渡してきた。




(…………え? ……待て待て待て。落ち着け、俺。えーっと、確かギルドカードに血を垂らすんだよな? で、今、俺の前にはぶっとい針とギルドカードが置いてある……あ、やっぱそういう事なの!? ていうかそれ以外有り得ないよね!? おいおいおい、ちょっと待てよ。こんなぶっとい針刺しちゃったら垂らすどころじゃない量の血が出ちゃうよ!? ……これが異世界での普通なのだろうか……うん、普通なのだろう。よし、男、鷺ノ宮伊織。覚悟を決めます……)



 俺は覚悟を決めて針を手に持った瞬間、リューラが慌てて止めに入った。



「ま、待って!! 待ってくださいっ!! 冗談っ!! 冗談ですよ伊織さんっ!!」



 リューラはカウンターを乗り出して慌ててぶっとい針を指に刺そうとした俺の手を持って止めた。



「……ん? ……冗談?」



 覚悟を決めてぶっとい針を刺そうとしていたのに、それを慌てて止めてきたリューラを見て、きょとんとしてしまう。



「す、すみません……伊織さんがあまりにも緊張なさっていたので、こういったふざけた物で少しでも緊張をほぐしてもられたらと思って……本当にすみませんでしたっ!!」



 リューラは俺に向かって物凄い勢いで頭を下げ、謝罪をした。



「……いや、大丈夫だ。ま、よく考えてみればこんなぶっとい針で指を刺すなんてあり得ないな。ま、なんだ、気を使わせて済まなかったな……これでいいか?」



 俺はぶっとい針を見ながら口を開いた。

 喋っている途中で、そういえば、と呟いて腰に下げていた刀で指を薄く切り、血を垂らした。



 ギルドカードに血を垂らすと、ギルドカードは急に一瞬だけ光り、それを確認したリューラは口を開いた。



「あっ、はい! 大丈夫ですっ!! これで登録完了です!!」



 俺はリューラに確認を取ると同時にそのままギルドカードを手に取り、ありがとう、と小さく呟いてからギルド後にした。



 ギルドから出ると俺がギルドから出てきた事にティファールは気がついたのか、走って駆け寄ってくる。



「伊織、遅かったわね」



 ティファールは少し不機嫌そうにしながらも話しかけてきた。



「……変わった受付嬢がいてな」



 俺が遠くを見詰めながらそう口にするとティファールはそれ以上その事は聞こうとしなかった。





「なあ、ティファ。この後はどうするんだ?」



 ティファールがいつも通り自然に腕を組んで歩き出したので俺は彼女と並んで歩きながら行き先を訊ねた。



「ん? 私も登録しに行くに決まってるじゃない」



「ギルドは登録出来ないんじゃなかったのか?」



 俺は言っている意味がよく分からないといった顔をさせながら思わず聞き返した。



「ああ、私が登録するのは冒険者ギルドじゃなくてね




――――――裏ギルドよ」



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