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第19話 出発

 ダヴィスが消え、英霊憑依というぶっ壊れ性能のスキルを失った後、俺はティファールに指輪を渡して悠遠大陸を出る準備を始めていた。



 まあ、準備といっても一年間の大半を過ごした岩穴に置いてある物をダヴィスに貰った指輪に収納していくだけなんだが。



 この指輪のお蔭で空間魔法を使ったアイテムボックスを使う必要が無くなった。

 あの空間魔法は地味にmpをかなり減らしていたのでダヴィス様様だ。



 ちなみに、ダヴィスから貰った指輪を鑑定してみると[エタニティリング]となっていた。アイテムボックスとして使えると聞いていたが、指輪のアイテム名が結婚用の指輪の名前で、内心「アイテムボックスとして使えないのでは?」と焦ったが問題無く収納出来た。だがやはり、鑑定というスキルは不便極まりない。



 鑑定という大層な名前の癖に物や植物などに対して知る事が出来るのは名前だけなのは酷いと何度も思った。岩穴に置いていた物を収納する際、容量オーバーになるんじゃないかと最後の方は心配で仕方なかったが、一応全て納まった。



 ビクビクしながらも無事収納が終わり、悠遠大陸から出る準備が整ったのだが問題が発生した。




 王国に戻る方角が全く分からない。




 実は、この悠遠大陸は海に囲まれた大陸なのだ。

 ちなみに、悠遠大陸と言われているのは他の大陸や魔界領との距離がはるか遠くにあり、悠遠と言って差し支えない事から悠遠大陸と呼ばれるようになったそうだ。



 なので、大陸の端に行ったとしても見えるのは海と青い空だけだ。そんなわけで俺はどこに向かえばいいのかと頭を悩ませていた。




「どこに向かえばいいのかさっぱり分からん……考えるのが面倒臭くなってきたな。適当だが、こっちの方角にしてみるか。ティファはどう思う?」




 俺は近くに見えている海を指差しながらティファールに訊ねた。



「それで良いんじゃないかしら」



「……だがな、こっちに向かった方が良いような気もするんだよな……ティファはどっちがいい?」



 次に先程とは違う方角を指差した。



「それで良いんじゃないかしら」



「……あ、あの……ティファさん? 何か意見くれませんかねぇ……」



 苦笑いをさせながら視線をティファールに移すが、俺が渡した指輪をはめた右手の薬指をうっとりした表情で眺めながら何処かに意識がトリップしていた。なので返事は「それで良いんじゃないかしら」としか言ってくれなかった。




 実は、指輪を渡した直後からこの状態なのでかれこれ一時間くらい経っているんだが、いっこうに飽きる気配がない。



 そんなティファールを見て俺は……




「………よし、こっちにしようか」




 諦めて勝手に決めていた。




「ま、行くべき方向も決まった事だ。後は召喚獣をさっさと召喚して空の旅でも楽しみましょーかね」



 俺は太股の辺りに着けていたナイフホルダーから刃が20cmくらいの使い込まれたナイフを取り出した。



「んじゃ、さっさと出てきて貰おうか。『我と契約せし召喚獣よ。血の盟約に従い、姿を現せ。名はアスディーグ!!』」



 取り出したナイフを使って手のひらを切った。

 傷口から滲み出てきた血を目の前の何もない空間に向かって投げつけ、召喚術に必要な言葉を一言一言、糸を紡ぐようにゆっくりと発した。



 言い終わった瞬間、血を投げつけた目の前の空間にヒビのような亀裂が入り、そこから全身が白色に染まっていた全長30m程のドラゴンが大声で鳴き声を上げながらゆっくりと亀裂から姿を現した。



 GAAAAAAAAAAAAAAAAA!!




「おーおー、やっぱりちゃんとボコったらアスディーグ君も暴れないんだなぁ……」




 アスディーグは英霊憑依がまだ使用する事が出来た時に召喚獣契約をしたドラゴンで、英霊憑依を使ってmpを湯水のごとく使い、翼を凍らせて空から引きずり下ろしたり、飛んでいる的に数打ちゃ当たる戦法で氷魔法を使用して周囲に甚大な被害を与えたりと、激戦を繰り広げた。空を飛べない俺は、空を飛んで容赦のないブレスを何度も使うドラゴンに対して相性が最悪なのだ。周りへの多少の被害は仕方ないと思って攻撃をしなければ自分が死んでしまう、そのくらい強敵だった。




 一度ボコったので万が一も無いのだが、もしアスディーグが暴走する事があれば一切の迷いなくティファールを抱えて何処かへと逃げよう。と、俺は決めていた。




「おーい、ティファ。指輪を眺めてないでさっさとアスディーグに乗るぞ。アスディーグ、冷たいかもしれんが我慢してくれよ。ま、鱗があるし大丈夫だろ」




 アスディーグの背中へと乗った俺は振り落とされないようにと、アスディーグの背中に氷魔法で小さな屋根のある即席の小屋を作った。



 悠遠大陸にいた一年、氷魔法中心に魔法を使用していたからか窓のような物まで作られており、無駄に小屋のクオリティが高かった。




 指輪を眺めながらもゆっくりと即席の氷で出来た小屋にティファールが入った事を確認すると俺はアスディーグに向かって大声を指示を出した。



「アスディーグ!! いつでも飛んでいいぞ!!」



 口にした瞬間、アスディーグは翼を羽ばたかせてながら何処かへと向かって俺とティファールを乗せながら飛んでいった。



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