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第18話 英霊ダヴィス

「やあ、久しぶりだね依り代君」



 前回同様胡座をかきながら、ニコニコと笑顔を浮かべてダヴィスは俺へと話しかけた。



「ああ、久しぶりだな英雄さん」



 俺は屈託の無い笑顔をしながら、そう言うとダヴィスの目が一瞬だけだったが大きく見開かれた。



「へぇ……英雄って認めてくれたんだ。いやー、僕はとっても嬉しいよ。それにしてもキミは雰囲気がかなり変わった……かな。一年前のキミならさっきみたいに穏やかな挨拶をする前に文句の一つや二つ、言ってたと思うんだけどねぇ……それとも僕に尊敬の念でも抱いちゃった?」



 ダヴィスは無邪気な顔をしながら冗談半分、といった感じにからかってくる。



「俺自身の事だからか、雰囲気が変わったって自覚は無いな……まあ、尊敬というよりも感謝はしているな。英霊憑依がもし無ければ俺やティファは死んでいただろうからな」



 そんな冗談半分を俺は真面目に答えるとダヴィスから人をからかうような笑みが消えた。



「…………本当にどうしちゃったのキミ。性格変わりすぎだよ!? 僕の知ってるキミはもっと、からかいがいのある玩具のような人間だったのに!! 確かにキミを観察している時に、冷静沈着になってきてるなぁって思ってたけどさ。久々に僕に会えたんだよ? もっと僕を楽しませてくれても良いじゃないか!! 例えば『英霊憑依の代償で骨が悲鳴あげてボッキボキに折れたりくっついたりして痛かったんだがどういうことだ!!』とかさ。何か無いのかい?」



 何故か凄く必死に俺へと訴えかけてくる。



 どんだけからかいたかったんだよダヴィス。



「んー……特に無いな。悠遠大陸で過ごしている内に勝手に自己完結させる癖がついてしまってな、初めての代償の時の全身への激痛は今後の英霊憑依に耐えられる肉体にする為の仕方のない事だったんだろうな。って勝手に結論だしてたな」



 俺は上を向きながら出来事を思い出すように何度か、えーっと、などと言いながらダヴィスの疑問に答えた。



「チッ……正解だよ。もしその事で突っ掛かってきたら、『キミの身体が貧弱過ぎたからだよ? 流石ゴブリンにボコボコにされた男。よっ、ザ最弱!! プークスクス』って感じの言葉を返してあげようかと思ってたのに……」



 ダヴィスは斜め下を向いて舌打ちをしたり、口元を手で覆って笑う真似をしたりと凄く楽しそうだった。



「………そ、そうか。言わなくて良かったよ。まあそんなどうでもいい話よりも本題に入らないか? 俺をここに呼んだって事は成仏でもするんだろう?」



 そんなハイテンションの彼を見て、苦笑いをしていた俺は話を進めようと前回ダヴィスと会った際、別れ間際に言っていた言葉をうろ覚えだったが口に出した。



「あ、覚えていたんだ。てっきりキミは忘れていると思っていたよ。キミの言う通り、僕はもう成仏するね。でもね……僕はしんみりしたのが嫌いなんだよ。だからせめてキミをからかいながら逝こうと思ってたんだけど予定が狂ったなぁ……」



 ダヴィスは俯いて悲しげな表情をしながら頭をボリボリと掻く。



「というか依り代君。キミ、何で長髪にしたの? 短髪の方が絶対女の子にちやほやされると思うよ~?」



「髪……か。長い髪が色々あって気に入っているんだ。別に深い理由なんて無いさ。それに、女の子にちやほやされるとティファに殺されるんでな。それを聞いて短髪に出来なくなったよ」



 俺は自身の髪を触り、髪に対しての思いを巡らせながら話す。



「それもそうか……あー、下手に未練がましくだらだらと話すのも面倒臭くなってきたし、そろそろ過去の亡霊である僕は退場することにするよ。ほらっ、餞別だよ。受け取りな」



 そう言ってダヴィスは何処からか取り出した二つの指輪と二本の刀を伊織に向かって投げた。急に投げ渡された物を受け取った俺は困惑の表情を浮かべてダヴィスに問いかける。



「刀に……これは指輪? あ、あのさ、ダヴィス。俺、もう奥さんいるし…そっちの気は無いぞ? だから、この指輪は……な? ……えっと……「違うわッ!!」……えっ? 違うの?」




 俺が指輪を投げ渡された事におどおどしているとダヴィスが怒声をあげて否定した。



 いやー、良かった良かった。もし求婚だったりしていたら俺、二度と他の男性と会話出来なくなるところだったよ!!




「僕がアブノーマルなわけないだろう!!これでもストライクゾーンが10歳~40歳までの女の子だった健全な男だよ!!」



 ……いや、10歳は危ないだろう? ダヴィスさんよ。



「そ、そうか。勝手に勘違いをして悪かったな。じゃあこの指輪は何なんだ?」



「その指輪はアイテムボックスとして使えるんだよ。キミ、奥さんに指輪をあげていなかっただろう? 人生の先輩からのささやかなプレゼントさ。どうせ渡す物なら実用的な物がいいだろう? その指輪で精々嫉妬深い奥さんの機嫌を取るんだね。そして刀は僕の愛刀だった物だよ。昔は僕、二刀流の魔法剣士だったんだ。だから僕の代わりに使ってやってくれ。刀の銘は刀身が銀色な方が血舞い桜、刀身が黒色なのが八咫烏だよ。柄や鞘の色が二本とも黒色だから、後にでも鞘から抜いて確認をしてくれよ」



 ダヴィスから渡された刀は柄や鞘の質や手触り、重さなどから今まで散々使ってきたハイゴブリンの武器とは格が違う事が分かる。



「……そういう事なら有り難く使わせて貰う。それと……お前の事は死ぬまで忘れないよダヴィス。この白髪がタヴィスが存在したなによりの証拠だしな。実は俺、ダヴィスのように強くなりたかった事もあって、長髪にして防具なんかを殆ど黒にしたんだ。見た目を真似てみたってわけよ。笑えるだろう?」



 俺がそう言うとダヴィスは唇の端を吊り上げて大声で笑い始めた。



「……ふふっ、あはは、あははははははは!!長髪にしているのはそんな理由だったのかい? 確かに笑えるね……でも、少し嬉しいよ。例えるなら……そう、弟子が出来たような気分だよ。あははははははは!!」



 そう言って笑うダヴィスは本当に嬉しそうだった。



「おっと……そろそろ消えるみたいだ……ねぇ、もし僕が転生でもしたら僕の友人になってくれないかい?」



 ダヴィスの体は少しずつだが透明になっていく。

 そして、ニヤニヤした顔をしながら俺に聞いてくる。



「友人? 別にそんなものなら頼まれなくてもなるさ。寧ろお願いしたいくらいだぞ」



「……そっか、そっか。それじゃ、もし、次に会う事になったら宜しくね。

異常者の友人は異常者にしか無理だから……ね。それじゃあ、さようなら。伊織君」



 そう言いながらダヴィスは消え、いつの間にか黒一色の部屋から岩穴へと戻っており、俺の周辺には二本の刀と二つの指輪が転がっていた。



 黄昏の薄暗い闇の中、岩穴を照らす魔道具が眩しい。




「伊織? (うな)されていたけど大丈夫? ……って、どうしたの伊織!? 涙出てるわよ!?」



 俺はいつの間にか涙を流していたらしく、ティファールが慌てて心配をする。



「……ん? 涙が出ていたか? 特に問題は無いから、そんなに慌てないでくれ。そんな事よりも渡したい物があるんだが受け取ってくれないか?」



 そう言いながら薄笑いをしていた俺の手には指輪が握られていた――――










ステータス

鷺ノ宮 伊織 18歳

レベル468 種族 人間

hp 128130/128130

mp 135487/135487

筋力 26485

耐性 14952

敏捷 21456

魔力 19456

魔耐 16452

幸運 58


スキル 刀術 英霊憑依(ロスト) 身体強化 錬金術 空間魔法 氷魔法 死中求活 吸血鬼化 料理 全言語理解 鑑定 偽装


称号 異世界に召喚されし者 女神を妻に持つ者 英霊に愛されし者



ステータス

ティファール 27歳

レベル248 種族 吸血鬼

hp 48562/48562

mp 8120/8120

筋力 7215

耐性 8426

敏捷 8742

魔力 2640

魔耐 3210

幸運 73


スキル 斧術 剣術 闇魔法 身体強化 料理 鑑定 偽装


称号 吸血鬼の一族 王城の元メイド

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