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第16話 なんちゃって清楚系女神

短いデス。

 伊織達がハイゴブリンと戦っていた頃―――



「うわあああああああああああ!! ちょっとビッチ!! ビッチってばぁ!!」



 そう言って慌ただしくしながら、巫女服を着た黒髪美少女ような見た目にイメチェンをしたリフィアが大きな声で叫んでいた。



「うっさいわね、このなんちゃって清楚系女神。私が寝ているのが見て分からないの? 睡眠不足はお肌の大敵なの。と言うわけでお休みなさい」



 体を机に突っ伏して寝ていた金髪のビッチ女神が体を起こして返事をするが、直ぐにまた突っ伏して寝始めた。



「寝ている場合じゃないって!! 伊織君が悠遠大陸に飛ばされたんだよ!? このままじゃ死んじゃうよ……どうしよ……どうしよう……1ヶ月経てば私がここから出られる筈だからそれまで……いやいやいや、1ヶ月経ってしまったら手遅れだから!!うわああ、どーしよう……」



 リフィアが悠遠大陸という言葉を口に出した瞬間、机に突っ伏して寝直していたビッチが急に立ち上がって頭を両手で抱えて「どうしよう……どうしよう……」と呪詛のように繰り返して呟きながら歩き回るリフィアの下へと向かって歩み寄る。




「あちゃあ……悠遠大陸か……よりにもよって悠遠大陸とは、一番最悪な場所に飛ばされたね伊織君は。リフィア、貴女は知らないみたいだから教えてあげる。その足りない頭に私の言葉を刻み付けなさい。私達はね、悠遠大陸に近付く事が出来ないの。あなたの言っている1ヶ月が経ったとしてもね」




 呆れた口調でビッチ女神は言葉を発した。それを聞いたリフィアは勢い良く両手でビッチの両肩を強く掴んでガクガクと揺らしながら口を開いた。



「なんで行けないの!? ねぇビッチ!! なんで!! なんでってば!」



「あー、揺らすな揺らすな。私達は女神を多少なりとも信仰している場所にしか行く事が出来ないの。これは知ってるわよね? そして悠遠大陸には人がいない。はい、これで分かった? まあ伊織君の事は不運だったって事で死んだら潔く諦めなさいな」



 ビッチ女神がそう言うとリフィアは途中で、あっ、と声に出してビッチ女神の肩を揺らしていた手を止めた。そして、敢えて考える事をしなかった最悪の未来を口にしたビッチ女神に対して憎悪のような感情が籠った眼差しを向けながら口を開いた。



「……ビッチは薄情者だ!! 死んだら潔く諦めろ? 酷い!! 見損なったよビッチ!!

 男に対してはあり得ないくらい執着心を燃やしてケツを振りまくるビッチならなんとかしてくれると思っていたのに!! 悠遠大陸ってだけで諦めるなんてどうしちゃったの!! そんな簡単に諦めたりしているからまだ膜張り女なんだよ!! この尻軽処女ビッチ!!」



 リフィアは、諦めろと言ったビッチ女神に向かって、ここぞとばかりに日頃の鬱憤も込めて怒声を上げた。



「……おい、なんちゃって清楚系。言って良い事と悪い事の判断もつかないの? ……体にもう一つ穴空けてやろうか!? あ゛ぁん!?」



 リフィアが、処女、と言った瞬間にビッチの表情が鬼の形相へと変貌し、怒声を上げた。それを聞いたリフィアは、ひぃっと怯えたような声を出して完全に畏縮してしまう。



「まあ、今回は大事な男が死にそうになっていたから頭の中が混乱していたっていう事にしてあげる。次は無いわよ。まあ、私達が直接的に出来る事は無いけれど折角巫女の服を着ている事だし、精々無事を祈っておきなさいな」



 ビッチ女神は鋭い目付きでリフィアを睨みながら、次は無い、と釘を刺した。



「……うん、そうする……それとね? ビッチ。伊織君が悠遠大陸に飛ばされたって言ったけど伊織君を含めて2人飛ばされていたの」



 リフィアは実は……といった感じに、まだ伝えていなかった事を伝えた。



「へぇ……良かったじゃない。生存の可能性が少しだけ高くなったわね」



「でもね、伊織君と一緒に飛ばされたのって…………女なの」



「女」と口にした瞬間、リフィアとビッチの近くの空気が凍った。



 静寂に包まれ、静まり返った何とも言えない空気を破ったのは偽乳女神と厚化粧女神の言葉だった。



「「ご、御愁傷様……」」



 二人の女神の言葉を聞いたリフィアは



「うわああああああん!! もうイヤだぁぁぁぁぁ!」



 泣き出した……


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