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第10話 転移先で

 光に包まれ、強制的に転移をさせられた俺が気がつくとそこは深い森だった――――




 辺りに広がる光景は、変な方向に生えた樹木や大きすぎる岩、抉れた地面。

空を仰げば飛び回るドラゴンが何体も視界に入り、魔物の鳴き声や地響きなどが絶える事なく聞こえる………そんな森だった。



 そして時刻は黄昏時だったのか、茜色が辺りを包み込んでいた。



 先程まで光り輝く鎖によって体の自由を失っていたティファールは転移されたことでディジェアの魔法が消え、体の自由を取り戻していた。俺のすぐ近くの場所に転移された事が不幸中の幸いだろう。が、彼女はその事に喜ぶ事はなく、険しい表情をしながら下唇を噛み、自分達を囲んでいる緑色の魔物を睨み付けている。



 安堵や休む暇などは一切無く、俺とティファールは転移直後早々に複数の魔物に囲まれていた。




「ギギィ」



「ギィギィ」



 囲んでいた魔物はゴブリンだった。

 が、俺達を囲んでいたゴブリン達はゴブリンであって、ゴブリンではなかった。



 普通、ゴブリンと言われれば1mくらいの小鬼。や、雑魚キャラ、お金にならない魔物、棍棒で叩く事しか出来ないカス。



 などと思い浮かべるだろうが、俺達を囲んでいたゴブリンは2m程の巨体だった。

 そして、鍛えあげられ引き締まった筋肉を持った体には歴戦の猛者と思わせる程の雰囲気と無数の切り傷など、といった数多(あまた)の戦闘の痕跡が体の至る場所に存在していた。



 ゴブリン達は刃渡りが2mくらいの大剣や鋭く尖った槍などを手にし、隙など一切無く構えており、俺達は戦慄せざるを得なかった。



 だが、そんな屈強なゴブリン達は人間を見たことが無かったのか、俺達を舐めるように下から上へと視線を移しながら、様子を窺っていた。



 今はまだ、ゴブリン達が襲ってくる気配が無いと感じ取った俺は大剣を持ったゴブリンに向けて鑑定を使用する。



「《鑑定》!!」



ステータス

ハイゴブリン

レベル137 種族ゴブリン

hp 12056/12056

mp 0/0

筋力 4780

耐性 3200

敏捷 1032

魔力 0

魔耐 603

幸運 47


スキル 剣術 体術 全異常状態耐性 


称号 ゴブリン上位種



「……て、ティファ。この世界のゴブリンはこんなにも強いのか?1mくらいの雑魚じゃないの……?」



 ゴブリンのステータスを確認した後、俺はゴクリと唾を飲み込みティファールに質問をするが彼女の口から発せられたのは質問の返答では無く、悲鳴のような怒声だった。



「さっさとスキルを使いなさい伊織!! ここは一秒でも油断したら死ぬ魔窟よ!! 伊織は死にたいの!?」



 ティファールは額から汗を垂らしながら、苦虫を噛み潰したような顔をして怒鳴る。



 自分よりも格上の魔物に囲まれているこの絶体絶命とも思える状況で、ティファールには余裕などは一切なく、城にいた時の温厚そうな雰囲気は跡形もなく消えており、別人のようだった。



「し、《身体強化》!! 《吸血鬼化》!! 『氷悉く、我が刃となれ!《氷刀 零華》!!』『氷悉く、我が盾となれ!! 《氷装 氷鎧》!!』」




 俺がスキルを使った直後、彼を警戒する必要は無しと判断したのか、二本の剣を手に持った一体のハイゴブリンが警戒をするべき獲物から殺すべき獲物へと変わった俺を標的として定め、素早く行動する。




 ハイゴブリンは地面を蹴り、俺の下へと駆け出す。

 ハイゴブリンはスキルの《縮地》を使い、俺との間合いを一瞬で詰めると同時に右手に持っていた剣を振り上げる。




「は!? 嘘だろ!? おい!!」




 身体強化をしていたお陰か、俺は辛うじてハイゴブリンの動きが見えており、初撃を紙一重で体を僅かに右に咄嗟に移動した事で回避する事に成功する。



 だが、攻撃は一撃で終わる筈が無く、ハイゴブリンは即座に振り上げた剣をそのまま俺の頭に狙いを定めて振り下ろす。



 回避は無理だと判断した俺は、咄嗟に左手で持っていた氷刀を移動させ、そして刃を外向きに、右手で切先近くの峰を支え、刀身で攻撃を受け止めるかのような構えを取った。




 だが、ステータスに差が大きすぎるせいか氷刀はハイゴブリンの剣を受けた瞬間に、受けた部分が木の枝のようにポキリと折れる。



 だが運が良い事に、咄嗟の行動でハイゴブリンの剣の軌道が逸れ、首が落ちることは無かった。

 が、左肩の付け根から先が体を守る鎧として作っておいた氷鎧ごと斬り落とされた。




「ぐあぁぁああああぁぁぁぁああああああああ――――ッ!!」




 左肩から先が斬り落とされた俺はその痛み故か、膝を地面につけてしまう。

 膝をついてもハイゴブリンが攻撃を止める筈が無く、ハイゴブリンは膝をつき、隙の出来た俺の胸の辺りを左足で思い切り蹴りあげる。




 ハイゴブリンの蹴りの威力が高かったのか、もしくは俺が軽すぎたのか、蹴りあげられた後、20m程後方にある大きな木にぶつかるまで蹴り飛ばされる。



 ぶつかった瞬間、大きな地響きのような轟音を辺りに響かせながら、俺の意識は闇の中へと薄れて消えた。




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