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プロローグ

処女作です(´・ω・`) 


「怠いなぁ……」



 夕暮れ時の教室。

 まだ終礼の最中だったが、部屋の隅に位置していた窓際の座席に座って机にぐったりと突っ伏しながら俺――鷺ノ宮伊織(さぎのみやいおり)は気怠げな表情を浮かべて呟いた。



 クラスメイトの面々は何やら楽しそうに盛り上がっている。

 そりゃそうだ、明日からは冬休みなのだから。高校3年生じゃなければ長期の休日を前にヒャッホイとなるのが普通だ。まぁ、俺は別に冬休みも学校も変わらずつまらないのだが。



 俺の通っている高校は中高一貫だ。要するに6年間一緒な人達が多く仲良しこよしって訳だ。俺は昔、とある理由で中学時代の半分以上を登校しておらず、世間で言われる不登校ってやつだった。その上、俺は中学の途中で転校してここに入学している。俺から見ても傍から見ても孤立する要素てんこ盛りだ。


 


 両親は、俺が家に引きこもっていた中学時代、「学校に行け!」や、「休み過ぎると退学になるぞ!」と何度も怒鳴りつけてきたが、その時の俺は中学生。義務教育という最強の鉄壁が存在していた為、その言葉は耳に届く事はなく、結局三者面談に数十回程呼び出されただけで退学をする事はなかった。



 中高一貫みたいなお勉強学校はテストの点さえとっとけば万事おっけーだ。というのが俺の持論だ。



 こうしてテストの点数だけは無駄に良かった不登校君は問題無く中学校を卒業した後、無事高校デビューを果たしていた。



『エスカレーター式マジ偉大』俺が入学式を終えた直後に言い放った言葉だ。高校2年生になった今でもあの言葉は名言だったと思っている。



 高校生になってから俺は中学生の時とは打って変わって真面目に登校していた。両親は俺のその行動に対して感嘆の声を投げ掛けながらも疑問に思っていたようだったので「高校には退学が存在するからね」と教えた次の日から、高校生になってから食卓に何故かよく並ぶようになっていた好物の出現する頻度が日に日に減っていった。



 あの回答の何処が間違っていたのか未だに謎だ。




 色々な事情が重なった結果、中学時代の大半が不登校となっていたのだが、そのせいでか同級生のお友達が一人も出来なかった。多分、俺の醸し出す雰囲気が悪かったのだ思う。ま、一番の理由は人と拘わる事に多少忌避感を抱いていたからだろうが。



 関わっても関わらなくても良さそうな空気みたいな脱不登校野郎で、ネクラっぽいという最悪のタッグを備えた俺こと鷺ノ宮伊織。勿論そんなやつに声をかける物好きなんて居なかった。



 昔、自分を自分で慰める際に言った言葉である「ネクラ、そしてコミュ障という2つの属性を兼ね揃えた超ハイブリットな存在ッ!! つまり、あいつらは俺の神々しさに怯んで声を掛けられないでいるだけだ。時期を待てよ俺!!」と自室で一人叫んだあの日からかれこれ2年経つがボッチここに極まれりといった現状だ。



 恐らく、整った容姿に爽やかな雰囲気。そして歯が、キランッ、って感じに光っていたら良かったんだろうな。



 長年の不登校生活もあって俺はボッチな男子高校生というお目出度く無い称号を手に入れていた。かれこれ2年目に突入する年季物だ。 



 基本的に本を読む事……と言った一人で出来ることが好きだった事あって教室で一人でポツンという今の状況に不満など全くなかった。一人だと他人は勿論、自分も傷つかないからな。見る角度を変えれば良いこともあるよって事だ。



 だが、体育の時間においてボッチはかなりのバッドステータスだった事を高校生活にて思い知る事となった。



 理由は簡単、「準備体操するから2人1組でペア作ってストレッチしろー!!」という最悪のお言葉を体育教師が毎時間叫ぶからだ。中学生の時はペアストレッチなど存在しなかった筈なのに、高校にあがった時から何故か始まった。最近は夢にまでこの声が出てきたりする。本気で体育の時間に耳栓しようかと悩んでいる。



 何で高校ではペアストレッチをするんだ? ボッチに喧嘩売ってるのか? といった普通の人なら思う筈のない疑問を抱いた俺は、人に言えないようなあんな事やこんな事を実行に移した事により、理由を無事知ることが出来た。ボッチだった俺の影の薄さも活躍した。流石ボッチ!!



 理由は今の俺のクラスの体育を担当していた教師がペアストレッチを、と進言したからだそうだ。その日以降、俺は一ヶ月に一度くらいの頻度で怒りを込めて藁人形の腹の部分に向かって五寸釘を打ちこんだりしている。



 たまに、体育の先生が腹痛で休んだりしていると聞いたことがあるのだが、腸が弱いのだろう、お気の毒に。



 別にどこかの漫画やラノベのようなイジメなどは無かったが、俺は青春を謳歌しているとは言い難い学校生活を送っていた。



 ……ハッキリ言うと明日にでも卒業証書ほしいっす……体育やだ……



 ギィィィン、ゴォォォン、ガァァァン、ゴォォォン



 ほんの少しだけ変わったチャイムの音が学校中に鳴り響いた。

 最近、俺の通う学校のチャイムの調子が少しおかしい。一ヶ月程前に学校のお偉いさんが直すとか何とかって書いたプリントが配られた筈だったんだが、まだ直っていない。



 修理代ケチってないでさっさと直してくれ……



「おい!! お前らぁ!! 冬休みに入るからってあんまり羽目を外すんじゃねーぞ!! あと課題の提出が期限を遅れるような舐めた奴がもし居たら……三者面談してやる。…よし、特にこれといった連絡事項も他に無いから、帰って良いぞー!!」



 砕けた口調で終礼を終わらせているのが俺の担任である水瀬正義(みなせせいぎ)だ。生徒からは砕けた口調やフレンドリーな事あってか「ジャスティス~!!」という恥ずかしいあだ名で呼ばれている。


 

 最初は「恥ずかしいから止めろ!! 先生と呼べ!! 先生と!!」なんてやり取りを何度も耳にしていたが面倒臭くなったのか、最近は諦めて「ジャスティス」と呼ばれる事を許容していた。



 水瀬先生が三者面談と言うとクラスの殆どが、嫌だー!! や、嘘だろ……、といった言葉を言い放っていた。だが、そんな言葉を鼻で笑う男が1人いた―――俺だ。



 三者面談? おいおい、俺は三者面談のベテランだぞ? そんな言葉、全く怖くないな。三者面談ってのはな、目を伏せて反省してます感を漂わせておけばいいんだ。ベテランの言葉だぞ? 一切の間違いは無い……筈……




 そんなくだらない事を考えながらも冬休み前最後の終礼だった事あって何となくだったが聞いていた俺は家へと帰宅をする準備を既に済ましており、椅子から立ち上がろうとした瞬間、急に教室の入り口の扉が勢いよく開かれ、視線が扉に集まる。



 ガララララッ!!



「イオくーーーーん!!」



 叫びながら俺に向かって走ってきた変わり者が1人。俺の下へと一直線に走ってきた人物はこの高校で唯一俺がまともにコミュニケーションが取ることが出来る望月楓(もちづきかえで)だ。



 本当に勢いがヤバかった。例えるなら俺が赤マントで楓は闘牛だ。そのくらい凄い勢いだった。ちゃんと構えておかないと何が起こるか分かったものじゃない。突撃してくる楓の頭が俺の鳩尾に絶妙な具合で入って呼吸困難になったのはごく最近の出来事だ。



 黒い髪を腰辺りまで伸ばしており、容姿端麗とはこの人の為にある言葉。と思わせるほどの美貌に、すらっとした肢体の持ち主。しかも生徒会書記をやっており、この学校ではかなりの人気者だ。俺がボッチなのが心配なのか、よく俺に会いに来る一つ年上の幼馴染みでもある。



 こう言っちゃ悪いが、楓のその行為が俺がボッチになる事に拍車を掛けた。



「楓……無理して俺に会いに来なくても良いって言っただろ……俺はそこら辺にいる有象無象のボッチとは格が違うスーパーボッチ……あ、ちょっと待って、言葉ミスった………ッッ!? ちょま!! 抱きつかないで!! ここ教室! 教室だから! てか痛いから止めて! 主に視線が!!」



 もうクラスの全員にとって見慣れた光景となりつつ有るのが怖いのだが、俺は脂汗を垂らしながらも慌てて楓を離れさせようと行動する。



「ええ~………別にいいじゃーん。昔なんて『楓お姉ちゃん!! 楓お姉ちゃん!!』って言って自分から抱きついたりもしてくれたのに……お姉ちゃん悲しい!! はぁ……時間って残酷だよね……」



 そう言いながら唇を尖らせた後、楓は「よよよ……」と泣き崩れる真似をしていた。よく見ると右手に目薬を持っており、本当に泣いているかのように見えた。ん? なんで目薬なんて持ってんだ? そう思っているといつの間にか楓の目から涙のようなものが流れていた。



 泣き崩れる真似をしていた楓を見て、はぁ、と溜め息を吐きながらも、手を無理やり掴んで起き上がらせる。その行動が着火材となったのか、クラスの中で怒りのような、殺気のようなものが渦巻き始める。



 刺々しい視線をしたクラスメイト達は次々と俺を射貫く。

 そんな光景にうんざりしながら頭を押さえるが、元凶である楓は回りの視線に気がついていないのか。悪びれる気配など微塵もない。



 楓は俺をボッチにする為に俺の下へ来ているのだろうか?



 ちなみにボッチの俺とかなり親しそうに話している楓は、不登校の子にも優しい聖女なんて呼ばれたりしてる。



 生徒や教師の楓への評価高すぎんだろ……



「あー、そうそう、イオくんさ、毎度の事ながら言うけどその眼鏡似合って無さすぎだよ? ていうか眼鏡とマスクで顔隠すな!! 格好いいのに勿体ないなぁ……」



 楓は急に俺がつけていたマスクと眼鏡を外そうと唇を尖らせ、眉根を寄せながら手を伸ばしてきた。



「……別にいいだろ。眼鏡やマスクを取ったりつけたりするのは自由なんだし」



 俺はそう言いながら右手を使って俺の顔に向かって伸びてきた楓の手を慣れた手つきで払いのけた。



 かれこれこんなやり取りが始まって1年以上経つ。

 流石に慣れるってもんだ。



 楓の言う通り俺はだっさい眼鏡にマスクを毎日つけていた。別に目が悪い訳じゃないが昔、地味なファッショングッズ、という一見需要0とも思われる物を地味にひっそりと生きようと誓った高校入学式の帰り道でたまたま見つけて以来つけている。最近じゃつけてないと違和感が出る程に気に入っていた。



 なんで誓ったか? ふっ、決まってるじゃないか。不登校だった男子が地味じゃなかったら……「うわっ! 中学の時不登校だった鷺ノ宮がイメチェンしてる!! きっもーい、マジうけるんですけどー!!」とか言われそうじゃん? ひっそりと以外に選択肢は無いんだよ。



 ん? ビビりだと? ビビりで何が悪い。



 昔は「格好いい!」や「イケメン!」なんてよく言われていた気もしなくも無いが、多分記憶違いだろう、人間誰でも過去の記憶は都合良く改変されるもんだからな。ていうか、何で俺は不登校になったんだっけな………ま、どうでもいいか。



 俺の高校生活での必須アイテムである地味眼鏡やマスクを何故か、楓は無理やり外そうと度々俺の顔に手を伸ばしてくる。外すそうとしているだけならまだいいんだが、楓は「そんなものぶっ壊してやる!!」と言いながら手を伸ばしてくるのでたちが悪い。まあ、毎回守りきるんだが。



「まあいっか……でも、私が卒業するまでには眼鏡とかを少なくても1度は取って一緒に登校してね? あ、腕組むのは忘れちゃだめだよ!! 約束だから! 約束したからね!」



 楓は、ビシッ、っという効果音が聞こえるんじゃないか? と思えるくらいに勢い良く指差してきた。楓のまくし立てに、気圧された俺は肯定の返事をつい返してしまいそうになるが、スルーの態勢に入る事で下手に肯定したり墓穴を掘ってしまう事を回避した。



「………おい、無言は肯定とみなすとか言われちゃ堪ったもんじゃないから一応言っておくが、俺は一度たりとも首を縦に振ったり、うんって返事してないからな? 理不尽過ぎんだろ……ん? 楓、生徒会のお仲間さんが来たぞ」



 ドアの方を見ると、生徒会のワッペンをつけた男2人と女2人が立っていた。

 女の人達は楓が俺の教室に来ている事にいつもと同様、呆れていた。少し前、女の人達が迎えに来なかった時があったのだが、楓は迎えが来ない事を良いことに生徒会に行かないのか? と優しく教えていた俺を引っ張ってそのまま下校した。それ以降、楓にはいつも迎えが来ている。



 女の人達は「鷺ノ宮君の邪魔になるだろうしさっさと生徒会に戻るよ!! 仕事をしろぉ!!」等とよく口にしている。たまに俺に話しかけてりしてくれる優しい人なんだが、俺は基本楓以外には「ええ」「はい」「違います」「すみません」といった言葉しか返さない……じゃなかった、返せない。何しろコミュ障なもんで。ボッチに世間話はハードル高けぇよ。



 まぁ、女の人達はいい人なんだが、とある男の人にはかなり嫌われている。



 余談なのだが、ここの学校の生徒会の役員は生徒の投票で決まっている。その際に、今の生徒会の男どもはイケメンフェイスだったらしく、女からの支持が高かったらしい。



 あぁ、あの時はマジで五月蝿かったな、あの黄色い声。



 そしてそんな事があったからか、自分の容姿に結構な自信がついたらしく、「望月さんがなんでこんなネクラと……僕といるべきだろう…」なんて言葉をよく吐いていた。



 これだからイケメンは……




 そんな自分の容姿に自信たっぷりな、ドアの近くにいるとある男は舌打ちしたり睨んだりとかなりイライラしている。



 あの男、塩分足りてねぇんじゃねぇの? 今度、あの男が生徒会室でコーヒーを飲もうとしてたら、然り気無くコーヒーに入れる砂糖を塩に変えておいてやろう。俺って優しいなぁ…




 ドアの近くにいた生徒会に所属している女子が、楓に向かって声をかけようと教室に一歩踏み出そうとした瞬間、俺のクラスの教室にいた人達が一人の例外無く謎の光に包まれた。




「……あ゛!?」




 俺は急の出来事に理解をする事が出来ず、素っ頓狂な声を出してしまった。俺の声が聞こえなくなると同時に、俺達の居た教室に先生や生徒の姿は一人残らず姿を消した――



駄文ですが、皆様に読んでいただける様に頑張っていきますのでよろしくお願いしますm(__)m

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