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○○だったら……責任とります委員会!  作者: 柿ノ木コジロー
第1章 そのレタス、ショッパかったら!
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1-7 色分けな才能ってばオレ

 とっくに下校時間は過ぎていた。

 俺はこっそりと昇降口に回って靴を穿き替え、外に出る。


 正門を出てすぐ、うすぼんやりとややオレンジがかった黄色い光の帯が俺の足もとから始まっていた。

 よくよく目を凝らすと逆に消えてしまう、少し意識を枠から外し加減にして見るともなしに眺めているとそれは案外ハッキリとした色で、俺の前に道を形作る。

 ちょうど、病院とかにあるだろ? 床に書いてある案内用のラインね、内科は黄色、整形は緑、とかあんなカンジなんだな。


 スナになっちまったっていう日の放課後、とぼしい記憶を頼りにそれでも家まで無事に帰れたのには、実はこの輝けるラインがかなり、助けになったんだ。

 ライン、というか『色分け』に気づいたのは昨日の帰りのことだった。


 どうやって帰ろう、と正門に佇んだ俺の前に、急に足下にさらりと『道がみえた』んだ、まるで長いカーペットが敷かれていったかのように。

 最初は歩道に本当に色がついているんだろう、変わった歩行者専用道路だな、と思っていたのだがふと思い至った。

 これを辿れば、家まで帰れる……シマジリ・スナオの家に。

 それはあたかも、オズの魔法使いでドロシーが辿った黄色いレンガの小道のごとく俺の目の前に続いていた。


 色分けは、道だけじゃなかった。

 帰り路、目に入る人びとの姿にも、かすかに色のオーラがみえる。

 最初はどれもこれも虹色が混じり合ってちかちかと光っている程度だったが……

(俺のこと知ってんのかな、あのおばちゃん)

 道の向う端に、犬を連れて歩いていたおばさんが軽く手をあげて笑いかけてきた。俺はあわてて頭を下げる。すると、おばちゃんと犬はうっすらと淡い水色の光を発した。

 その光が目の中から消えないうちに、ちょうど通りかかった公民館の玄関先に目を移す。

 ポーチを掃いていた若い女の人も、水色に光っている。

 記憶が追いついてきた。そう、よくこの人から公民館図書を借りている。

「本が好きなんだね」といつも優しい。水色のオーラも少し濃いみたいだ。

(あの人、ケッコンしてんのかな)そう思ったとたん、彼女のオーラは黄色に変わった。

 直感で把握。彼女は既婚だ。

 今度は「結婚してるかしてないか」で周りの人びとの色が変わった。淡いのには変わりがないが、俺‐シマジリ・スナオの目には明らかだった。


 すげえ能力じゃん!!


 自分が把握したいものに関して考えるだけで、対象のものや人が自然と色分けされて目に映る。これは、俺がヤツに『生まれ変わった』からできるようになったものなのか、それともヤツに元々備わっていた才能なのか。

 

 実は、今日もそれがおおいに役に立ったんだ。


 給食のあと、セイギたちに絡まれている間、俺は色んな思いを抱えながら漠然とあたりを見回していた。

(レタス、誰かレタスに関係したヤツはいないのかこのクラスに。八百屋とか……)

 その時、ちょうど教室の隅にいた二木という女子が目に飛び込んできたんだ。

 なんと、彼女の全身から淡い黄緑色の光が浮かび上がっているじゃねえの。

 あれ、あれは絶対レタスに関係ある。

 俺の頭の中にフラッシュするイメージ、スナの記憶の断片。

 二木が誰かに言われてる。ねえニッキ、あそこの角の畑、ぜーんぶニッキんちのでしょ? 何作ってんの?

 おもにレタス、それにブロッコリーとか。ニッキはどこかクールな口調でそう答えていた。

(ニッキと比較的仲がいいのは?)

 俺はウナギが寄ってきた時にもまだあたりをさりげなく見回した。今度はニッキとの相関関係が濃淡さまざまなピンク色で浮かび上がる。

 へえ……さすがハナはニッキとも相性がいい、ササラも人の好みが激しそうだが、ラッキーなことにニッキと部活が同じでしかも近所、それなりに仲がいいようだ。


 これらのことが一瞬で『サーチ』できたのが、俺の行動を後押しするきっかけとなった。


 今日も、すでに暗くなったにも関わらず温かな黄色い光の道は俺を静かに家に導いてくれていた。

 ぼんやりとその淡い光を足の下に送っているうちに、ふと、ひとりの女性の姿が頭に浮かんだ。

 暗がりにぼおっと明るい光を背負って。

 髪はゆるくウェーブを描きながら肩に落ちている、いや、ショートカットなのか? 毛先が跳ねてみえた、目を凝らしてみるが光がジャマになってよく判らない。顔立ちは、美しくきりっとひきしまっている。ササラもそれなりにカワイイ顔してるが、そうだな、こちらはもっとオトナの魅力っつうのか。

 でも、浮かべている笑みは暖かい。それが、俺に向けられている……少し見上げるように。

 あれ? どこにいるんだ、この女性(ひと)。俺は思わずあたりを見渡してみた。誰もいない。

 次に目を戻すと、その姿はいつの間にか消えていた。

 はあ、とため息ついて、俺はまた歩き出す。


 ぼんやりしたまま家に着いた。何となく流れで夕飯。

 会話のない夕餉の席、つきっ放しのテレビに気を取られているフリをしながら俺は思う。

 あの女性、誰だったんだろう? 単なる幻影なのか? それに……


 シマジリ・スナオ。

 ほんとうの『オマエ』は今、どこで何をしているんだ?



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