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○○だったら……責任とります委員会!  作者: 柿ノ木コジロー
第1章 そのレタス、ショッパかったら!
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1-4 ネゴシエーション開始

 その日の放課後。


「ねえ」

 一番前の席、しかも机に斜めに浅く腰かけたササラの険悪な低音が、グランドピアノに当たって落ちる。

「こんな所に呼び出して、一体何なの?」

 返答次第では極刑もあり得そうな声音だった。

 ハナはその隣で、きちんと椅子に座って、壁にかかった巻き毛のおっさんたちを眺めているフリ。でも耳はちゃんと、こちらを向いているようだ。

 俺は、西棟二階南端の音楽室に彼女たちを呼び出していた。と言うのも……


 給食の騒動がひと段落した間隙をぬって、例のヤツがすぐに近づいてきた。あの、教室出口で俺をおどしたヤツだ。

「スナ~、やったなー」

 慣れ慣れしく肩を叩いてぐいと自分に引き寄せる。

 背丈はスナと比べてもそれほどデカくはないが、耳触りな声はそこそこ大きかった。

「すげーな、オマエ、レタスの責任とってくれんだ? あ?」

 どーするつもりなんだよ、ええ? その声に反応したように、もう1人、ひょろりとしたヤツがすぐ脇に寄った。

 コイツも『トイレ軟禁隊』のひとりだ、顔に記憶が。名札も見えた。「鈴木」だって。

 スズキというより、ウナギだね。

「楽しみにしてたキューショクだぜ、オマエ、どうしてくれんだよぉ」

 あくまでもイジメではない、仲の良いどうしみたいなニコニコ顔。俺をつかんでいるヤツも脇のウナギ野郎も、明らかに周囲を意識した声の張り上げ方だ。

 しかし、目の奥には敵意が見え隠れしていやがる。

「そ、それは」

 クラスの半分くらいが、昼休み開始を中断してこちらをさりげなく注視していた。

 あまりにもインケンな敵意の出し方だ。出すなら出す、ひっこめるならひっこめる、どっちかにしやがれ。目つきにも滲んでいるこの中途半端さが逆にイヤらしい。

 こんな目をチューボーがしているなんて……哀しすぎねえか?


 俺の中で何かが弾けた。


 ケンイチロウのどこか一部分が急に殻を突き破り、ちっこい(からだ)の外に飛び出す。

 俺は、首をひねって肩を掴んでいたヤツの腕をふりほどく。

「明日」声を調整するのに一苦労。「……いや、明後日の給食で、絶対何とかする」

 一瞬、俺の目の中に何か別のものをみたのだろうか、ヤツがはっ、と身をひいた。

 ようやく名札をみた。『宮本正義』か。正義が聞いてあきれらあ。セイギは言った。

「よし、金曜だな、給食楽しみにしてるぜ、スナ」

 ウナギがちっせえ声で節をつけながらつぶやく。

「せきにん、とります、いいんかい~~~だもんね」

 何なんだオマエら、カネザキの声が飛んできたのをきっかけに、ヤツらはさっ、と俺から離れていった。たちまちあたりは、何にも見ても聞いていなかったニュートラルな空気に戻る。

「話がある」

 俺はちょうど脇を通りかかったササラにさりげなく声をかけた。

 今の騒ぎに気づいていなかったらしい、ササラは意外そうにこちらをみる。

「17時50分、音楽室。ハナさん連れて一緒に来て、他の人にはナイショで」

 口早にそう伝えると、何を言っているのだこのチビ偉そうに、と小鼻を膨らませた。

 なので、さらに小声で付け足す。

「メモ帳も返すから」

 とたんに、ササラの顔がかあっと赤くなった。ビンゴ!

 昨夜、ふと思い出してカバンからメモ帳を出して見たんだよね……かなり、いい感じだったアレは。

「頼んだよ」

 ちょっとオネダリ口調になっちまった。この身体が女子にこうして話しかけるのにやや抵抗を示しているせいかな。両手も恥ずかしげにこすり合わせていたんだが、ササラはもう、メモ帳のことで一杯イッパイらしく、そんな事は気になってないみたい。

 酸素不足なのか、口をぱくぱくさせていたササラがようやく答える。

「ハ、ハナにはあのメモ……」

「大丈夫、言わないよ」

 ササラ~、どこかで脳天気に呼ぶ声。

 ササラは更に何かことばを継ごうとしたが、ササラぁ! と重ねて呼ぶ声に後ろ髪ひかれながら俺の前から去っていった。


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