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○○だったら……責任とります委員会!  作者: 柿ノ木コジロー
第7章 片付け仕事が残ったから!
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7‐ 4 それぞれの残暑

 心配しながら待っていた女子たちには、

「レイラの方はケッチャクついた」とだけ報告いれた。


 そして数日後、ボクはようやく、リヨさんのところに服を返しに行けた。

 母さんに見つからないようにわざわざコインランドリーに持っていった。白いTシャツと黒いジャージがぐるぐるとランドリーの中で回るのを眺めるともなく眺めて、やっぱり彼には一言かけたほうがいいかな、と考える。そして、行く前に墓地に寄ってヤス犬に

「会いたい?」

 って聞いたけど、何も答えないので結局置いていった。

 だから、リヨさんにも、ケンさんが犬になったことは言い出せず終いだった。


 リヨさんちから帰りがけに、ボクは「あれ」玄関先で小さな紙を拾い上げた。

「棄てちまおうと思って」

 リンさんはそっぽを向いたまま言う。ぼくはそれを見ながら

「もらってもいいですか?」

 と聞いた、彼女は「いいけど」とだけ答えてあいさつもせずにドアを閉めた。


 拾ってきたものをヤス犬のところに持って行こうかまた少し迷った。

 でも、止めた。

 レストランの件からこっち、更にヤス犬はHPを減らしたようだった。

 あれからあまりボクとも話をしたくないらしいし、黙りこくって伸ばした前脚とマッサージ器との間にあごをおとしているだけの事が多くなった。

 リベンジを果たした時には笑ってはいたけど、やっぱりかなりのショックだったんだろうな。

 どうして奴らにそれ以上の復讐をしてやらないのか、何度もボクは聞いてみた。

 最初は面倒くさそうに聞いているだけだったのだが、しまいに『がうっ』と噛みつこうとした。

『るっせーな放っとけ、オレが良いっつったら、イイんだよ』

 その後は墓地裏でじっとしていることが多い。どうなぐさめていいのかわかんないし、ボクもあまり、覗きに行かなくなった。


 ササラは話題を振ってみたら、案外あっさりとオカルト演歌への傾倒ぶりを語ってくれた。

 単に誰かに聞いてほしかったというのもあったんだろうな、とうとうとレクチャーしてくれた。

「いつか、デビューできるといいね」

 とってつけたようにならないよう、それでも心をこめてそう言ったつもりが意外にも「それがね」ササラが丸い目をして迫ってきた。

「リンコーチ(ササラもそう呼んでる)のお店のお客さんでね、偶然動画サイトやってる人がいて、オカ演専門の」

 リヨさんからの紹介で、今度プロモ動画を送ることになったんだって。

「今、その曲の作り込みと練習に燃えてるの」

「何てタイトルなの」

「『心に五寸釘』よ」まあ、見てなさい、すぐにヒット曲になるから、ササラは妙な自信に満ちている。

 よかったね、ボクは精一杯愛想笑いをしながら、彼女の元を去った、でもあの花の香りはちゃんと肺いっぱいに吸い込んだりして。

「甘いなぁ……やっぱり」


 ソルティは地道にオタク道を極めている、と思う。

 『委員会活動』はあの霊園事件後も二、三回あったのだが、そこにも姿をみせなかったし。それでも、あのレストラン情報もすぐくれたし、ハナが他にも何か調べ物を頼んだりすると、それはすぐさま処理してくれるらしい。

 相変わらず報酬を要求するのは変わらないらしいけど。ハナが一回、困ったように

「ねえ活動費はどっからでるの?」

 と聞いて、大量のレシートを束ねてボクのところに持ってきた。

 ハナは仕方ないので、今は自分の小遣いからソルティが好みそうなコンビニ新商品を漁っては渡しているらしいが、出費もバカにならないとのこと。

 チロルきなこもち、とかチョコスパークリング(チョコ味のサイダーらしい)、うなぎかば焼き味のオーザックとか、ボクが一回も口にしたことがないようなフシギ食物たちが計3026円……泣く泣く、なけなしの小遣いからハナに支払った。


 こんな時こそ、ケンさんを頼りたい……でもさすがにボロ犬から小金をまき上げるのはしのびない。

 それでなくとも、あのしょげようだからね。


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