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○○だったら……責任とります委員会!  作者: 柿ノ木コジロー
第6章 霊園で肝試しねって言われたら!
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6‐ 1 トラップ始動!

 初めてだ、セイギから電話。内容は思った通り。

「次の『練習日』が決まった」

 つい受話器を持つ手が震える。「は、はい」

「……今度はジャマが入らねえようにしろよ」リヨさんの事を言っているんだろう。

「あんなよ……」聞いてみたい気もあるらしい、でもそこまで踏み込まないうちに

「あの」キセンをセイしてボクは声を出す。「あのねセイギくん」

「オメエに呼ばれたかねえ、ちゃんとミヤモトと呼べ」

「ごめんミヤモトくん、あの時間と場所だけど、どうしても夜遅くじゃないと出ていけなくて」

「はぁ?」意外な言葉だったらしい。

「今度の金曜日の夜十時過ぎなら塾遅くなったって言い訳できるし……でも怖い場所はあの……絶対ムリっていうか」しゃべっていて本気もあるのか、涙目になってくる。がんばれスナオ。


 実はソルティから既に情報をもらっていた。


「ヤツらね、使う場所がだいたい決まってる。一人をいたぶるのに使うのは、街なかのスーパーバンバンの跡地か、少し離れてこないだの土手にある工場跡。死角になるからね、でも絶対他から覗かれない、車も通らないってなると、キツツキ公園の山側か……霊園」


 ボクはヒクツな演技(半分以上本気)に更に力を入れる。

「だからどっか明るい場所でさ、頼むからさ、あのさ、あの」

「よしセイリョウ霊園の観音堂だな、丘の頂上の広場」

「えええっ!?」驚いたのは、あまりにも読み通りだったってこと。

「あのさ、お、お願いだよあそこはちょっと……それに単なる練習だろ? なんで霊園って」

「オメエ、その口調キモ。何ですぐあのね、とかあのさ、になるんだよ。見てるだけでイラつくしよ。それをつき合ってやるってんだから感謝しろ。絶対来いよ。16日金曜夜10時、一秒でも遅刻すんな、コロスゾ」


 電話を切ってから、ほおおお、とため息を吐く。

 やっぱり怖い。多分、何度生まれ変わっても怖いのは変わらないだろう。

 手の震えをもう片方の手で押さえて、ぐっ、と力を込める。


 今度はでも、一人きりじゃないんだからな。




 夜の霊園。虫の声が響き渡る。灯りは所どころそれなりにあるものの、だからと言って陽気な感じは全くない。

 大きなお寺が経営しているこのセイリョウ霊園はこのあたりでもかなり規模が大きく、地域や宗教にもこだわりがないので沢山のお客(?)がいる。墓地も次々と作られ、三方を囲んでいる山は少しずつ削られて、新しい墓地に生まれ変わりつつあった。

 その中でもシンボル的な大観音像が、丘の少し高くなった所にそびえ立っていて、その足もとにはモダンな観音堂があり、駐車場も含めてちょっとした広場を作っている。

 そこが、セイギたちの真夜中のオアソビ場所の一つらしい。


 ボクは、いや、ボクらはすでにセイギたちの到着をスタンバって待ち構えていた。

 ボクとルモイ、記録係のソルティが広場入口付近の藪の中。

 ハナとササラ、そしてヤス犬が広場奥の建物の影。

 ハナはかなりブルってた。ササラが「ヤス犬もついてるし、心強いよ」そう言うと「だから」ちらっとヤス犬の崩れつつある相貌(かお)をみて「余計心配なカンジ」とだけ応え、それでもあとは文句もなくじっと息をひそめていた。

 ルモイは「委員長、アイツらにヨロシクね~」復讐劇の始まるのを今や遅しと待ち構えている。ヤス犬が言ってた、「あの白鳥は肉食だ」って意味が何となくわかった。

 ソルティは淡々と暗がりで試し撮りをして何やら細かい調整をしていた。


「ホントに、来るのかなあ」

 ボクが小声でつぶやいたのも、あちらのヤス犬には聴こえるらしい。すぐに返事がきた。

『大丈夫、ヤツらはここで捕まえる。必ず来る』

「自信たっぷりだなあ」

『野生のカンさ』

 なんつうて、と笑ってから『ラブがさ、そう教えてくれたんだ』

「えっ」

 元々の狼犬肉体オーナーのラブさん、まだヤス犬の近くにいるのか。

『ああ、ちょいとひとっ走り見に行ってくれたんだよ、アイツら五人こっちに向かってるって』

「五人も?」

 どうも、セイギ、ウナギ、ジョーきどりチンタオの他にあと二人。金曜日のこの時間を指定したのはセイギとその連れが水金と同じ塾に通っているという情報に基づいていたんだけど、その塾仲間二人を助っ人に頼んだらしい。

「でもよ、ソイツらはあんまり乗り気じゃねえ。匂いがビビってるらしいぜ……上がってくる」


 ジャラ、と自転車のチェーンが闇に鳴り響き、数人の話し声が耳に届いた。


「……ってばさ、まるっきり……」

「コーラ……らんね……」

「来るかな、スナ」急にハッキリと声が聴こえた。ウナギだ。

「来なかったら、どーなるか分かってんだろーに」セイギのせせら笑う声。

「こないだのネーチャンにも、かなりこっぴどくやられたんだろうな」

 げへへ、とチンタオも笑っている。

「いいか、今日はとにかくハズイ目かかすからな」

 ひゃひゃ、と後ろの二人も笑った、だがやっぱり、ヤス犬言う通りどことなくビビってるっぽい。

 飛び降りたチャリを乱雑に停めて、広場のまん中にヤツらが立った。

 ちょうど灯りが届いている中に勢ぞろい。と、チンタオが急に「ごめんションベン」少し輪から離れて片隅、山を切り崩して途中になった藪近くまで下がろうとしていた。


『スナ、よく見てみろ、今ションベン行ったヤツはとりあえず無視していいから』

 ヤス犬が静かに告げた。

『オマエはでかい声を出さなくていい、ササヤキくらいの小声でいいからよく見て答えろよ。

 オマエ、光が見えるはずだ』


 緊張が恐怖に勝る。ボクはごくりとつばを飲んだ。


『頭の中で強く思うんだ、<誰がビビってるんだ?>って、そして光をよく見ろ』

  ビビってるのはボクです、そう答えたかったが言われた通り、ボクはじっとヤツらを見つめた。


(ビビってる? 誰が、誰がどんだけビビってるんだ?)


 驚いた。

 ぼおっと、青白い燐光がヤツらの上に立ち始めた。

 うっすらとほとんど気づかない程度のセイギ、少しだけ濃い光のウナギ、そして、その後ろ、態度を見ても分かる。別のクラスのキミノとヤナギダというヤツ、あたりをさりげなくキョロキョロしているコイツらからは、燃えてんのか? と思うくらい濃いオーラが立ち上っている。

「ヤス犬……聞こえる? セイギは薄い、ウナギは少し濃い、あと二人はビビりまくり」

『よーし』ヤス犬がまた、ラブと相談しているようだった。

『決めた、だいたい段取り通り行くぞ』

「えっ!?」


『GOだ!』


 その声に押されて、ボクはいかにも坂を上ってきたように彼らの前に飛び出した。

 助っ人の二人がひゃあ、と息を吸った。

「お、おまたせ」ようやく声が出る。「あの、あのね」

「スナよぉ」セイギが恐ろしい笑顔で一歩前に出た。その時ボクはキューを出す。

「何あれ!!?」そしてヤツらの背後をびしっと指さした。

 そのとたん!

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