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○○だったら……責任とります委員会!  作者: 柿ノ木コジロー
第5章 坊ちゃん、突然戻ったら! 
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5‐ 6 ある意味初めての出あい

 ササハラさんとハナノキさん、それにタカヤマさんが顔を見合わせた。

「だったら」

 ハナノキさんが代表して答えた。

「委員長の権限でお願いして、スナ君」

「何でしょう」

「ソルティも委員会に入ってほしい、って」

「ええっっ」

 セリザワさんだけでない、ボクものけぞった。

「そんなにカンタンに人を増やして、いいのかな……」

 しかしセリザワさんは案外あっさりと「いいよ」って答えたんだ。


 だから結局委員会メンバーは全部で五名。

 ハナノキさん、タカヤマさん、ササハラさん、そしてセリザワさん……委員長はボク、ということで。

 ぱっと見、すごく豪華でキラキラと明るい雰囲気。

 実際にこの人たちが集まっているのをみると、何だか虹みたいな光がぼんやりとみんなを取り囲んでいるように感じる。

 まあ、昔から目が悪いのかちょっと光がちらつくことがあったので、あんまりジャマな感じではないんだけど、それでも何となく居心地は悪かった。

 ボク自身が全然ぱっとしない分、なんだかな……

 そんなボクの心を知ってか知らずか

「よかったじゃん、とりあえず仲間が増えて」

 タカヤマさんがほっとしたように言う、それをセリザワさんがちょっと尖った目でちらっとボクをみてから

「ナカマ、って言えるのかどーか」

 口をあまり開けないでそう言った。

「まあまあ」ハナノキさんが明るく割って入る。

「まあ、あとは委員長が何とか引っぱってくれれば」

 ボクの中のモヤモヤはどんどんと膨れ上がる。

「待ってよ」

 大きな声ではなかったけど、急に、しんとなった。

「やっぱりダメだ、できないよそんなの」

「え? そんなのって」

 ササハラさんの声が低くなる。

「委員長、大丈夫だよちゃんとやってたじゃん」

 一方、ハナノキさんは優しく励ますようにそう言った。でも目は必死。

「レタスの時だって、ベスカプコンだって」

「だって、それはボクじゃなかったんだし」

 期待が怖い。できもしないことを期待されている、本当に自分は全然カンケーないんだから。口に出すとますます、その思いは強くなった。ボクはつい、声を荒くする。

「何、みんなして勝手に盛り上がってんだよ、ボクは何にも知らないよ! 責任なんてとれるワケないじゃんか! 

 後はみなさんでテキトーにやってくれよ……ボクは降りる!」


 決定的なチンモクの数秒後、ササハラさんがさめた目でつぶやいた。

「委員長がいなかったら、解散ね」

 どこかほっとしたような言い方、それがまた心に刺さった。


 皆の視線が痛い。ボクは、リヨさんに短くお礼だけ言うと、誰とももう目を合わせないように、まだ雨の残る表にとぼとぼと出て行った。



 これからどうしたらいいんだ? 本当に分からない。

 次にすべきは

「シオリさんに運動会に参加してもらい、スナとセイギたちとのいざこざを解決する」

 ってことだったらしいけど。


「できっこないよ」

 ボクは足下にひろがる景色に向かってそう吐き捨てた。そこに

『誰が決めたんだよ』

 低い声がそうたずねた。

「そりゃ、自分が」

 そう答えてから身を起こす。今、リアル会話? 

「誰?」

 声に出してみると、打てば響くような答え。

『俺だよ俺』

 オレオレサギじゃあるまいし……とおそるおそるふり返ってみる。

「オレ、って誰?」

 犬だった。

 いや、オオカミかも。とにかくデカい。チンザましましている。

「ひ」ボクは完全に固まった。

 犬は苦手だ、しかもこんなデカいヤツ。でも……何かおかしい。

 コーチョクしたまま、目だけを必死にさまよわせて見る。

 野良犬だろうか? 

 首輪はついているものの、どことなくばっちい。っていうか、よく見るとばっちいのエリアをわずかにはみ出している。赤くなった片眼は半分飛び出し気味、口から流れて黒く固まっているのは……血? 灰色がかった毛並はヨレヨレでもつれたようにかたまり合った所もあるし、その毛に隠れて最初は分からなかったが、脇腹には大きな穴が開いている。

 何といっても「ぼくらはみんな生きている感」がビミョウに薄いんだって、このワンコ。

「お、おすわり」

 意味もなくそう言ってしまう。すると低い声がまた頭の中に響いた。

『つうかさ』どうも目の前のこの物体から、聞こえてくる。

『既にもう、座ってる、って言わねえか普通コレ』

「は、はあ」

『ようやく、会えたな小僧』

 リビングデッドなワンコはそう言って、にっと笑うように口の端をあげた。

 ずらりと乳白色の牙が並んでいた。

「あ、会えた? あの、ボク、犬にシンセキいましたっけ?」

 どっかのコマーシャルじゃないんだし。

『シンセキ? もっとディーーープなおつき合いだぜ俺ら』

 犬は偉そうに後ろ脚であごを掻いた。飛び出しかかった目がぷるるとゆれた。

 そして改めて、ボクに向き直る。

『俺の名は、ヤスカワ』

 聞いたことある。

『ヤスカワ・ケンイチロウだ』

 聞きたくなかった。


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