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○○だったら……責任とります委員会!  作者: 柿ノ木コジロー
第4章 夏休み、特別警戒警報だったら!
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4‐ 5 メガネっ娘を掴まえろ!

 ハナに聞いたら、ハナはあっさりと認めた。うん、ハゲザキ(お前まで言うか!)の自宅つきとめたの、ソルティだよ。たいがい、聞けば何でも情報教えてくれる。だってアタシじゃあ、調べ方とか分かんないもん。

 ソルティに会えるのかって? うーん。

 急にハナが渋い顔になる。

「アタシだって直接じゃなくてさ……ラインとかメール。今は一個しか使えてないけど、あの子のメアド」

「わかった」

「でも……アタシから聞いたって言わないで。チョー個人的なアドレスだから」

「ありがとう」

「返信が来るかは分かんないけど。あとね」ハナは言いにくそうに続ける。

「万が一連絡とれたとしても、必ず、何か見返りは必要だからね、情報のお礼」

「え? 例えば」

「……あっちが指定してくると思う、ちゃんとブツブツ交換だって書かなきゃだめだよ」

 シビアだな。俺は腕組みしてしばらく考えた。

「とりあえず委員会活動、いつやるの?」

 ハナがそう聞いてきた。

 ササラが正式にメンバーに入りしたと聞いた時、飛び上がって喜んだハナ。やる気マンマンだねえ。

「うちに連絡くれれば、すぐササラとルモイに聞いて日程調整するけど」

 あ、でも二、三日はまずいな、補習引っかかっちゃったし、台風も来るかもってよ。でもさ週末だったら……ハナはブツブツ続けている。

「ちょっと待ってくれよ」

 俺の言い方に、ふと何か感じたのかハナはいつになく不思議そうな表情で顔を上げた。

「ごめん」また謝る俺。「先にセリザワさんに連絡とってみてから、また決めたい」

 じゃあ、早めに連絡ちょーだい、気を取り直したようにハナは明るく笑って、手を振って去っていった。

 残された俺は、ひと呼吸おいてからシオリのメルアドに向けてメッセージを入れ始めた。


 すんなり連絡? 取れるわけねえ。

 俺の最初のメッセージは以下の通り。

「嶋尻直です。話したいことがあるので至急連絡下さい」

 なんだって? そのまんまやねえか、ワレ?

 そうだよそのまんま、悪いか何か。オトナじゃねえんだから(一度言ってみたかった)、それにナマエ、みてみろよスナオだよスナオ。真直ぐストレートにぶつかってって何か問題あるんかい?

 特に問題はなかった。返事がないこと以外。


 俺は小さな神社のL字に曲がった塀の影に潜んだまま、通り向かいにある芹沢電器店の方を見守っていた目線を少し外し、天を仰ぐ。

 少し空模様が心配だ。

 チャリは神社裏の倉庫脇隙間にさし込むように停めてきたので、多分吹き飛ばされることはないだろう、だが、帰りは雨になるかも。

 俺はまた店の方をみる。

 特に繁盛しているわけでもなさそうな、ごくごく普通の『街のでんきやさん』。

 古びたサッシ戸の向うに段ボール箱や納品間近な電化製品が所狭しと並んでおり、入口にはメーカーのノボリが数本。

 迫りくる台風のせいか、空には濃い灰色の雲が次々と吹き流され、少し生温かい風が急にごおっと押し寄せる。

 ノボリはそのたびにあちこちに身をよじって長い棒ごと台座から飛び立とうとしている。


 スナってば、電話でもメールでもお返事がもらえないキュートな女子の家の前で、何と、張り込みを開始したというわけ。

 真昼だというのに、怪しさ限りなし。通報されませんように。

 失うものは特にねえからな、俺の方はさ。

 あーあ、スナよ、早く出て来ねえと俺、もっとヤリタイホーダイしちゃうぜ。例えばあの子とこんなやら、こっちとあんなやら……


 心拍が一つ跳ぶ。店先から、彼女が出て来た。


 白いタンクトップ、黒いハーフパンツ、素足にスニーカー、カーキのバッグを袈裟掛けに背負い、赤いキャップを目深にかぶり、ふり向きながら言葉を投げつけている。

「夕方には帰るから! 図書館!」

 更に何か言われたようだが

「傘なんていらない! だいじょうぶだって!」

 透き通る高い声だが完全そうキョヒったまま、だっと表に飛び出していった。

 手をグーにして、肘を横に張って駆けていく姿はまるで少年(しかも小学生)。

 おいおい、図書館、確か逆じゃね? 

 俺も慌てて追いかけて走る。

 隠してあったチャリを取りに戻るヒマはねえ。とにかく、シオリの後をばれねえように尾行(つけ)ていった。

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