4- 4 ついに心強い支援、でも怖い
「でも、仲、良かったってことは」
むふん、ともっともらしい顔してササラは遠くの墓へ目をやった。だから墓を見るな。
「六月はじめ、ドレッシング係だった頃、ネトゲでセイギらと何かもめたらしいのね、それでスレがメチャクチャ荒らされて」
学校では案外慎重に過ごしていたらしいのだが、トラブルもあってあんなポカをやらかしたらしい。
「レタスの騒ぎの時は誰かさんが急に出て来たんで、とりあえず収まったんだけどさ……荒らしも沈静化したらしいのよ。ところが七月に入ってからまた、スレは大荒れ。で彼女、急にアカ削除して引きこもっちゃったのよ」
「どんなふうに荒れたの、その時は」
「バカ氏ね、裏切り者、うんこたれ、永眠どうぞ」
「ちがうちがうちがう」墓地に安らかに眠る人びとよこの悪態をお許し下さい。
「原因だよ、聞きたいのは。またネトゲの何ちゃらとか?」
「まあね。約束の日時にinしなかったとかどうとか」
「くだらないな」
「まあね、あたしらから見たらくだらないけど、セイギとかあのアオシマとかアホだからもう、のめり込んじゃってるんでしょうね。何だかのチャンス逃した、とか言って、ソルティに突っかかっていったんらしいんだけど、ソルティも『急用だってできるんだよ、この××』なんて書き込まなきゃいいのにさ。便乗するヤツらもいるし、もう大モメよ」
シオリちゃん、赤いべっこう縁の向うのクリクリお目め、あんなにオドオドした感じだったのにそこまで言う?
そりゃ、俺はセイギらに何ら義理も思い入れもねえ、だがやっぱりそりゃマズイっしょ。
「まあさ……アタシよりはハナの方がソルティと少しは仲がいいし、アタシもハナから聞いたんだしね。心配してるみたいだから早く連絡してやって、委員会に」
「わかった……ありがとう。ところでササラはどうして怒ってたの?」
「はい?」ササラは片眉を上げた。「いつ」
「ベスカプコンの時、ファイナルファイヤーの時さ」
「別に」思い出したのか、ちょうど手に持った小枝をばき、とへし折った。
「別に何も怒ってないけど」
そうかな……あの時の情景を俺は何となく思い出す、その前も、その前の前も。
「ならいいけど、まあどうでもいいけどさ」思いついたまま、ふと口にした。
「何だか、気がつくと何かとササラが近くにいるような気がしてさ」
急にササラの顔が茹でたように真っ赤になった。耳まで赤いぞ、なんだどうした?
「なにっ言ってんのよっぶぁかっ!!! なんでアンタの近くにいちいちアタシが……アタシがいなきゃいけないのよっっ!! ちょっっっと、ジ、ジ、ジイシキカジョーじゃないのっ!?」
ニブかった、俺としたことが。
「ご、ごめん、別にそーゆーつもりじゃ」つい、オタオタする。
そうか、ササラはスナのこと……
だからルモイや他の女子が近くにいる時、あんな目をしてたんだ。
俺、何年ニンゲンやってんだーーーーーー! と代表してスナの顔が赤くなる。
「アタシはね、とにかくアンタが信用できないのっ! いつ秘密をばらされるか、みんなに」
「それはしないよ、絶対」赤くなったまま、俺/スナは懸命に答える。
「あんなに助けてもらってたんだし、それに……」
「それに?」やばい、また涙目だ。
「それに、ボクはいいことだと思うよ、そうして趣味に一途になれるってこと」
「だってオカルトで、演歌だよ」
「世の中にはオカルトファンは多いよ、それに今や演歌は海外でも……」
「それがミックスなのよ」
「そんなに悪くないと思う、『あり』だと思うけどな」俺のパーツを首飾りにしなけりゃ、な。
ふう、と少しだけササラが肩の力を抜く。
その機を逃さず、俺は上目に見ながらおずおずと切り出した。
「それよかさ……お願いなんだけど」
「何よ」
「入ってくんないかな、委員会へ」
考えてみたら、俺、コイツに「委員会に入らないの?」と聞いたことはあったが、一度も俺の口から頼んだことはなかった。ハナがよく手を合わせて「お願い~」って言ってたが、それも笑いながらスルーしてたし。
「頼むよ、メンバーに」
読経が止んだ。ようやく、普通の空気が漂う。
「なってもいいよ」
人差指でそっと目の下をぬぐってから、ササラが言った。口調は相変わらずだが、少しだけ、口もとが優しく笑ってた。
「早く、そう言えばよかったのに委員長が」
「……すみません」
俺もふっと肩の力を抜く。何度謝ってんだろ、俺。そこに突如
「喝っっ悪霊退散っっ!!」本堂からけたたましい叫びと共にがぉをををんと鐘がひとつ。
……何の儀式だったんだろう。




