表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
○○だったら……責任とります委員会!  作者: 柿ノ木コジロー
第3章 その男、往生際が悪いから! 
23/66

3-3 嵐の前の密談

 水曜日。ついに翌日はコンテスト、というその日はいつになく学内にうわついた空気が流れていた。

 今日明日は一応通常日課。なのでルモイはすでに全てのカリキュラムを終えて、朝のHR時には既に完成形に限りなく近い姿で、クラスの中ひときわ輝きを放っていた。

 やや痩せたとかいうことより髪型とかより、何と言っても一番大きいのは、どことなく漂うき然としたたたずまい、かな。

 一方、昨日喝を入れてやったカネザキ、どうなっているのかと思って期待しつつ見るに……何だか、昨日より酷くなってねえか?

 教室内だと言うのに目深にベースボールキャップ、そしてでっかいマスク。誰かが

「どっしたんすか、センセー」と脳天気に聞いたところ、

「カゼ、ひいてな」押しつぶしたような声のまま、うつむいて顔さえ上げやしねえ。

 放課後までロクに目も合わせやしねえ。今現在こちらのことはヤツにはどう映っているんだろか? そんな疑問を胸にくすぶらせてた俺だが、帰り際、ルモイの最終準備をハナに任せ、人けが途絶えた頃ようやくササラと少し話そうとしたところに

「おい」

 急に廊下から声をかけられた。

 相変わらず目深にかぶった帽子とマスクの間から、カネザキの切れ長の目がこちらを覗いている。

「なんだオマエ」ようやく気づいたようで、つかつかと寄ってきた。

「いつからいたんだ? 参観か?」

 案の定、まだ俺を見る目がヤスケンモードに入っているらしい。

「ちょ」俺はササラに「ごめん」と断ると急いでカネザキを廊下の隅に引っぱっていった。

「なななんだよヤスケン」

「しっ、でかい声出すな、ワケは明日話す」俺は出来るだけ口を動かさないように囁く。

「それよか、コースケ」

 横目で確認すると、ササラが不審そうにこちらを見ていた。俺は更に声を潜める。

「明日、大丈夫なのかよ」

 カネザキコースケは、無表情な目のままササラの方を振り返り、同じ目のまま俺に目を戻し、黙って親指を立ててみせた。

「出るのか、コンテスト」

「男に二言はない」そんな古臭いこと平気で言えるのがオマエらしいぞ、コースケ。しかたなく、俺もササラに見えない方の親指を立てて、ササラに見えない方の頬でにやり、と笑ってみせた。

 カネザキはまたちらりとササラを見てから、真顔のまま俺に言った。

「けっこう、カワエエだろアイツ? 手ぇ出すなよヤスケン」

「ぶぶぶぶぁぁぁかっっ」俺はつい大声を出した。耳まで熱い。

「誰があんなガキ! もういいから、じゃな明日!」

 廊下に押し出すようにして、ようやくカネザキを追い払う。

 ほっとしたのもつかの間、後ろから地の底から響くような声が

「誰が、ガキですって」

 ひっ。鬼気迫る表情。さすが未来のオカ演シンガー候補。

「それにいつの間にカネザキと仲よくなったの……」

「あ、あああそれはよくわかんない」とにかく明日の準備だけどササラあのさ、言葉を足そうとした途端、ぐさりと釘を刺されてしまった。

「委員長。アタシ、委員じゃないんですからこれ以上こき使わないで下さい。ハナさんに言いつけて下さい。ハナさんガキじゃありませんし」

 じゃ、と冷たい口調のまま、釘留めされた俺を一人残し、スタスタとその場から去っていった。

 もう秘密を暴露されてもいいのだろうか? 開き直りか? それにしても

「……コワい……」

 とにかく、明日は明日の風が吹く。F5レベルでないことを祈るのみだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ