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#2 それぞれの『死んじまっただ♪』

<1人目。ヤスカワ・ケンイチロウ>



 俺は死んだ。

 助けようと伸びてきた手には金のブレスレット、鎖が下に揺れ、構内の明かりに反射して俺は一瞬、綺麗だなと思う。伸びた手の上に影になった男の顔、どこか唖然としている?

 俺は届かなくてごめん、とその顔に詫びた。影になった顔はかすかに笑った、いいですよ、仕方ない、といったふうに。

 俺の幻影だったかもしれないな。ほんの一瞬の出来事、そしてそれが、俺が生きている間にまともに見た最後の顔。


 そう、俺は死んだ。

 ホームから落ちて、通過する貨物列車に轢かれて。

 日曜なのにさ。クレーム処理、仕事帰りだ。

 酔っぱらってアパートに帰る途中。呑んでいたのも独り、家に帰っても独り。

 どこかに途中で電話を入れたが、今夜は忙しいから、とすぐ切られた。誰だったっけ、あれは。まあいいや、もう何でもいい。

 だから……落ちた時、冷たいレールに肩が当たった時は

「いてえなあ」

 と確かにつぶやいてはみたけれど、それが体の下で震えて上の連中が何か叫んで手を振っていた時にも、特に何も思いはしなかった。

 あとは……

 この歳になってこっ恥ずかしいな、それでもこんなに注目浴びるのも悪くはねえ、なんて感じたりして。

そう、しみったれた41年の人生、最後の最後にね。

 以前は確かに、こんな風に騒がれたこともあったな、あれは……いつだっけ?



<2人目。シマジリ・スナオ>



 ボクは死んだ。


 だれもいない真夜中の公園、高台になったその縁でひとり、申しわけ程度の柵を乗り越えて切り立ったガケから身をおどらせて。

 下にはコンクリートの遊歩道がぼんやり浮かんでみえる、ゆったりと身をくねらせながら池の方へと続く道が。


 ボクが死んでも、世の中はたぶん何も変わらない。

 クラスのやつらも、その他のやつらも、家の連中も、世間のやつらも今まで通りの生活を送るのだろう……


 チクショー!!

 だったらボクの方から世界を見限ってやる。


 いつもオドオド、話しづらくて何を考えているかわかんない、なんにもシゲキがない「つまんねえやつ」。

 ツマンネエヤツだって、何かひとつくらい、やらかすことがあるんだ。


 落ちる、落ちる、落ちていく。



 ショウゲキ


 しょうげき、って漢字でどう書くんだろう?

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