言葉が足りない・・・。
アイトは、リンヤに彼女が出来たということを受け止めることができずリンヤの彼女【シオリ】に簡単に挨拶しただけで部屋にこもっていた。
そして部屋にこもり勉強してるふりをしてなんとかやり過ごしていたアイトの部屋の前にシオリがやってきた。
「シオリです。もう帰ります今日はアイト君のお顔だけ見れてよかったです。」
と言って帰ってしまった。
アイトは彼女さんには悪い事をしたけれどもと思い考えながら複雑な思いを込めた涙で勉強机を濡らした。
「くそっ・・・・・・」
一方リンヤは、そんなアイトの気持ちを何十も何十も理解していた。
そして、なおかつアイトが自分の事を好きなのも気づいていた。
けれど、アイトにどうしても気持ちを伝えることができないのは、例え血が繋がっていなくてもアイトとリンヤはあの日からたった2人の『兄弟』なのには変わりないだから……。
そう、またリンヤもアイトと同じ気持ちで『弟』の事が好きなのだ……。
リンヤが、アイトに恋愛感情を持ったのは出会った時からだった。
アイトを兄弟と見つつ恋愛対象として見ている犯罪的な自分が心の片隅にいた。
「俺は何やってんだろ‥……。」
とリンヤは彼女を帰らせた後自分の部屋で呟いていた。
リンヤが彼女を作った理由はもちろんアイトを忘れるためとアイトを遠ざけるためだけであったがリンヤは彼女を作って逆効果なことに気付いた。
「アイトに触れたくて……触れられない自分が憎しい。」
一緒の家に住んでいる以上アイトから離れることはできない。
「はぁ‥……」
とため息をつきながらとりあえずアイトの部屋に行くと少し扉が開いていた。
「アイト?」
アイトの返事がないのでひっそりとアイトの部屋に入ると、リンヤはアイトが勉強机に伏せて寝ているのが見えた。
その姿を見てアイトのベットから毛布を取りアイトにかけるとアイトの顔にリンヤの指が当たると少し濡れていた。
「アイト………もしかして……・泣いていたのか?」
リンヤが寝ているアイトの顔をおもむろに覗き込み聞くとアイトが、
「ん~………リン……っヤ………」
そうアイトは寝言でつぶやいた。
「はっ……俺は……ホント馬鹿だな……弟を泣かせるなんて‥……でも……わかってくれアイト……。」
と毛布を掛けてアイトの耳元でリンヤが小さな声でつぶやいた。
「でも……好きだよ‥……。」
と囁きリンヤは自分の部屋に帰っていった。
リンヤは自分の贖罪を重く感じていた‥…。
(ガチャ・・・・・)
アイトの部屋の扉が閉まるとアイトが机に伏せながら目を開けた。
アイトはリンヤの足音で既に起きて今まで寝たふりをしていた。
そして、寝たふりをしていて初めてリンヤが自分の事を『好き』と気づいた……。
でも、アイトはリンヤの自分に気持ちに気づくのが遅かったとと思ってい自分を責めた。
「リンヤも‥……僕の事……『好き』だったんだ………」
そして、アイトはリンヤにかけてもらった毛布を握りしめ悔しくてまた泣いてしまった。