1/1
プロローグ
痛い。苦しい。
土煙が目の前を覆い、唸り声が辺りを揺らす。
「顔をあげて、私を見て。生きたいのなら、私の手を取って。」
信じられないような光景の中で、信じられないような言葉を目の前にいる少女はいとも簡単に言ってみせる。
ゆるいカールのかかった腰まである長い髪は、何故か白く、それが細身で美しい少女の儚さを一層際立たせる。
そんな事を考えている余裕はない。そうだ、覚悟を決めよう。
差し出された細い指を握り、僕は立ち上がる。制服は所々破け、立ち姿は満身創痍と言ってもいいだろう。
だけれど、不思議と彼女の手を握ると心の中に希望が湧いた。彼女とならなんでも出来てしまうような、不思議な、不思議な希望が。
二人で手を握りしめ、口を開き、静かに言葉を紡ぐ。
『契約、完了。』