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ある寄せ集めの話  作者: 二十日子
ヨセアツメ
8/10

影追い

巡る巡る 闇が巡る 影が揺らめき 闇が呼吸する


闇と混じる 影が踊る 漆黒の中に艶めく黒髪が騒ぐ


影に手を伸ばせば 星のない夜空

月が隠れて 黒に塗られた景色が迫る


闇の迷い子よ こっちへおいで


安寧がここにある 平安がここにある


息の詰まる切り取られた影は ここにはない


その手に抱える闇の破片が あなた自身を象る


目を閉じて 目を開ければ


変わらぬ闇があなたを見つめる


黒に染めた手を取ろう 暗黒が安息を齎し


影に潜む漆黒があなたと踊る




とある呪い師の呪歌

天から星が消え、月のない夜に歌われた。

この歌を聞いた者は、闇の中を得体のしれない影が動きまわっていたと証言する。視覚の効かない中、影を捉えることは不可能に近く精神に作用する言霊が込められている事が考えられる。




黒髪の呪い師が闇の中で踊っていた。呪い師はかなりの実力者であったが、その闇に属する力ゆえに人々から遠ざけられ普段は窮屈な生活を強いられていた。


しかし、今宵は別だ。星が輝きを無くし月が姿を隠す晩、呪い師はあらゆるしがらみから解き放たれる。


闇に染まった手を伸ばす。


凝固した闇に溶け込む影がそれを掴んだ。


影が嘲るように歌い出す。女とも男ともつかない異形の者の美しい声。


呪い師は決して口を開かない。つられて歌えば二度と此方側には帰ってこれないからだ。


しばしの自由を闇の中で得て、呪い師は音も無く笑う。今だけは何処へ行くのも自由。何を考えるのも自由。笑い声を上げないように注意して、影や闇と踊る。漆黒の夜に高らかな呪歌が響く。

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