屍食鬼
タイトルからして嫌な感じを受けた人は読まない方がいいです。色々狂っているホラーが平気な人は良ければ読んでください。
※人肉嗜好ありです
霧に煙る街で俺はこそこそと歩く。街灯のあたらない道を地虫のように這うように、曲がった姿勢で人目を避けて。
夜気に混じるように排水溝から毒気を含んだ風が吹く。鬱屈して空を見上げればきらめくビル群が、天を穿てと立ち並ぶ。口から溢れる唾液が嫌な臭いを放ってボトボトと地面に落ちた。
いい匂いがする。
それはかつて、俺の傍らに居た大事な人の匂い。もうすぐだ、足取りが速まる。
ボロボロと塗料の剥がれ落ちたアパートの壁に体を張り付けて、人気がないか確認する。人の姿は見えず、建物の窓に明かりはない。高いビルの影に建つ安アパートは、見捨てられたようにポツリと街の影に同化している。
都合のいい事だ。曲がった指先の鉤爪で壁を引っ掻く。壁伝いに匂いを辿り、いよいよそれの根元となった場所の前に着く。青いペンキを塗りつけた板切れのようなドアが、ただ一つ俺の行く手を遮っている。
グググっと獣の笑うような声が喉から鳴る。力任せにドアノブを引っ張り、ドアを壊すように開いた。
割と大きな音を立てたが、誰も気にするような者はいないようだ。俺は玄関へ足を踏み出す。爬虫類を思わせる変形した足が床を叩く。
愛しい人がいる部屋を俺は見つけた。狭い四畳半の部屋で彼女は転がっていた。芳しい匂いに誘われるようにして、俺は彼女へ口付ける。
あぁ・・、
思った通り、
彼女は柔らかく、
ほぐれ、
俺の腹を満たした。
某動画サイトの、某クトゥルフTRPG動画に触発されたようです。個人的に屍食鬼の紳士っぷりに衝撃を受けました。
・・・理性ってどこまでが理性なんでしょうかね?