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ある寄せ集めの話  作者: 二十日子
ヨセアツメ
2/10

呼び声【青に沈む大海の王】後編

先見が部屋から連れ出された直後、激しい鐘の音が街中に響いた。


「何が起きた!」部屋に飛び込んできた巡回兵に、ゴーラが怒鳴るようにして言った。


「青い、青い物が街中に。」カタカタ震えて明瞭な答えが返って来ない。


「青い?それは何だ!何が起きている。」泡を吹きかねない様子でゴーラはまくし立てる。


「落ちつかんか、ゴーラ。」低く、威圧感のある声がそれを諌めた。


ゴーラと兵士がビタリと口を閉ざし、髭の男に向いて直立不動になる。


「青い物とは何だ。」髭の男が聞き直す。


「それは、海の方からやって来たヘドロのようなものです。」震えを抑えて兵士が喋り始めた。


「矢を射っても、切りつけても効果はなく一緒にいた仲間はソレに体を溶かされて死にました。次から次へと海から上がってくるのです。もう街にも・・」恐怖に耐え切れなくなったのか、兵士が両手で顔を覆った。



「第四剣隊は民を避難させろ。第一剣隊は敵の様子を探れ。それ以外は目下待機しろ。戦闘はなるべく避け、打開策が見つかるまでは手を出すな。」命令した髭の男は苦い顔をする。警戒する間もなく襲撃は始まった。兵士の様子を見るに街は混乱しているのだろう。鐘の音が神経を荒立てる。髭の男は傍目には落ち着いて見えた。しかし、それとは裏腹に焦燥感が男を支配していた。


「ぎゃっ」閉められた扉の向こうで悲鳴が聞こえた。髭の男が顔を引き攣らせる。


青い物が扉の下から染み出していた。


「ギャーッ、ギャーッ。」耳障りな声を立てて、報告に来た兵士が扉から遠ざかる。この兵士を青い物は執念深く追って来ていた。


びちゃり。青い物が部屋の床を浸す。戦く男達、灼熱感が足裏を覆う。男達は足を溶かされ床に身を投げ出した。それを青いのは待ち受けていた。じゅくじゅくと音を立てて、青いのはそれらを溶かした。



拘束された男は、いまは自由になっていた。なぜかというと彼を捕えていた兵士が青い物に溶かされたからだ。


街中を浸す青い物質。不思議な事に先見は青い物に溶かされなかった。


あんなにうるさかった悲鳴や鐘の音が止んでいる。


フラフラと先見が歩きだす。海の女が捕えられた領主の館の方へ足が自然に向いた。


青い物の中をびちゃびちゃと音を立てて進む。


やがて、大きな屋敷の前に着く。彼を見咎める者はなかった。男がびちゃびちゃと立てる足元の音以外、一切が静かだった。


ギィと扉を開ける。以外な事に目の前の広いエントランスにその女はいた。


青い者は女の周りでうねっている。


『帰る。早く。手伝って。』女が先見へ手を差し伸ばす。


『助けは必要ない、アナタ言った。』先見が人外の言葉で応える。


『貴方気に入った。連れてく。』女が笑う。ゾロリと生える鋭い牙が見えた。


『私行けない。海合わない。死ぬ。』先見は断る。女がキョトンとした顔になった。説明が更に必要だと感じて男が続ける。


『海息できない。アナタワタシ違う。』


『息できない。』


『ソウ。風、空気必要。』正確に伝わったかは分からないが、無理だということは女に伝わったようだった。


『別れ悲しい。送って。』手は伸ばされたままだ。先見はその手を取る。


青い物が力強くうねって女を移動させる。男は手を取ったままその動きに合わせて歩く。


街中を満たす青い物が、彼女に合わせ潮を引くように海の方へ戻るのを足の感触で先見は感じた。


港へ近付いていた。強烈な生臭ささと共に、大きな青い塊が前方に見える。



『アーアー、王。迎え、ワタシ嬉しい。』バタバタと女が尾鰭を振る。



やがて青い巨大な塊の全容が見えた。百の目のようなものを持つ、いうなればマッコウクジラに似た形のものが青い物に満たされた船着き場に身を浮かべていた。あまりの大きさに先見がのけ反る。


『王。』女が言うと返事を返すようにソレがボォーーと音を立てた。


それからたちまちその身を沈め始める。青い物が渦を巻いて従う。女も先見の手を離して渦の流れに乗り、王の傍にいくとその胸鰭にしがみついた。


先見は足元を擦り抜けていく青い物を気にせずその光景に魅入る。


ボォーー


その音を最後に巨大な王がその体を海に沈めた。


一時間にも満たないできごとだった。


一人を残し、無人になった街に鳥の声が響く。



先見は立ち尽くし、海を見続けた。


それからは後、そこは呪われた街として近付く者はいなかった。ただ迷い込んだ船が時々訪れる事があって、それが伝えるには男が一人岸辺に立っていつも海を見つめているそうだ。


何時か誰が聞いたかは知らない。迷い込んだ船乗りの一人が、物好きにその男に尋ねて、何しているかと聞いたそうだ。


すると男は声が聞こえると応えた。船乗りには当然何の音も聞こえなかった。気味が悪くなってそれ以降話し掛けるものはいなくなったそうだ。



ある港街の怪より

設定一部

青い物は貝の中身みたいな生き物です。今回は王の命令で形を崩す魔法を使い、スライムみたいになっていました。火が有効ですが、こう多いと抵抗虚しいですね。ちなみに食べれます。味は貝・・。

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