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あの時の
電車に揺られる3分間…
貴重な睡眠時間です。
3分間。
彼女が乗り込んできて、次の駅で降りていく。
たった3分間。
僕の隣でうつらうつら舟をこぐ。
試験疲れだろうか。バイトや部活が忙しいだろうか。本が面白すぎて夜更かししてしまったのだろうか。
時には手に持つ参考書が落ちそうになり、あわてて拾ってあげる。
時にはマフラーがずれて、そっとかけなおす。
肩に乗る甘い吐息に、弾む鼓動で起こさないよう必死に押さえ込んだ。
そんな日が続き、ある日、隣にはサラリーマンが隣に座った。
次の日も、その次の日も。
そっか。彼女はどこかの大学に受かったのか。
一週間ほどして、僕はふっと笑った。
あの駅に着き、あくびを漏らしたとき、一人の大学生が乗ってきた。
「あ、あの! 今までありがとうございました」